第 16 戦(イモラがキャンセルされたので実質 15 レース目)にして今シーズン初めてレッドブルに黒星がつきました。勝ったのはハミルトンでもルクレールでもアロンソでもなく、伏兵(?)のサインツ。レッドブルが先頭を走っていないとここまで接近戦になるのかという展開で、トップ争いに関しては今季最も見応えがあったのではないでしょうか。
■フェラーリ
レッドブル「不在」のレースを制したのはサインツでした。予選を僅差で PP 獲得し、その時点で(あるいは決勝スタート後のターン 1 で先行した時点で)このレースのチーム内優先権はサインツにあったのでしょう。決勝ではルクレールがサインツの壁に徹し、サインツを勝たせるための作戦を遂行しました。フェラーリにしては珍しくチームのミスらしいミスもなく。ただ最終盤のメルセデスの猛攻を抑えるためにあえて 2 位のノリスに DRS を与える作戦はチームではなくサインツの発案だったようですね。恣意的にペースダウンさせたトップ争いは F1 の優勝争いとしてはどうなのと少し思いましたが、サインツが勝つにはそれしかなかったのと、終盤のノリスはタイヤが終わっていてサインツに仕掛けられるほどの速さがなかったのもこの作戦に賭けた一因かと思います。ファイナルラップでラッセル(メルセデス)のミスを誘発したことも含め狙い通り。レース運びで勝ったという意味では昨年のシルバーストンを超えるサインツのベストレースではないでしょうか。
個人的には、ダメなチームをコントロールして戦えるという点でルクレールよりもサインツのほうがフェラーリとの相性は良いんだろうなと思っています。逆にルクレールがチャンピオンになるにはレッドブルやメルセデスのような緻密なチームが必要。
■メルセデス
マシン性能的には十分勝てる可能性のあるレースでした。終盤にリスクをとってタイヤ交換したところまでは良かったですが、ラッセルはウィリアムズ時代から大事なところで攻めすぎて自滅することが多い印象。
ラッセルのミスによってハミルトンが 3 位表彰台を得る格好になりましたが、終盤のタイヤ交換はダブルストップにせず二台の戦略を分けた方が勝てる可能性が高かったのではないでしょうか。今季のメルセデスは以前ほど戦略のキレが良くないように見えるのが心配です。
■レッドブル
フリー走行からずっとセットアップに苦しみ、予選は二台揃ってまさかの Q2 敗退。決勝でも全くいいところがなく、5-8 位入賞がやっとでした。今回から導入されたフレキシブルウイング規制の影響かと思ったら、実際はコースに合わせて車高を上げたことでダウンフォースレベルが極端に下がったのが原因なようですね。
しかし結果以上に内容が酷かった。フェルスタッペンは予選で角田とサージェントのアタックを妨害し、さらにはピットロード出口で必要以上に滞留して他車の邪魔をしたことで戒告。そういえば去年のシンガポールでも彼はとっちらかっていましたが、これほどの絶対王者になっても状況が悪くなると無茶をしたり傍若無人な振る舞いをしたり、かつての悪童ぶりが戻ってきてしまいますね。
そしてペレス。決勝ではオープニングラップで角田を撃墜、終盤にはアルボンを撃墜。いずれもコーナーの優先権がないところで無理に突っ込んでの接触で、擁護のしようがありません。
今回の不調が車高の問題ということであればあくまでシンガポール限りのもので、車高が元に戻る鈴鹿では以前の速さが戻ってくるはずですが…どうでしょうね。
■アルファタウリ
まずはローソン、急遽の F1 参戦から 3 レース目での初入賞おめでとう!
予選で Q3 に進出できたことがこの結果に繋がったと思います。決勝ではレースペースが良くなく、オランダやイタリアに比べると光るものはありませんでしたが「何事もなく走りきったこと」が引き寄せた入賞でした。次は SF で走行経験のある鈴鹿、アップデートしたマシンの性能を引き出してどこまでやれるか見物です。
そして角田。予選 Q1 が赤旗終了だったとはいえトップタイムを記録して終えられたのが素晴らしい。
しかし Q2 では最初のアタックをフェルスタッペンに邪魔され、その後車検に呼ばれたことでタイミングを失い、最後のタイムアタックでミスを犯しコースアウト。Q1 トップタイムから一転 Q2 はノータイムのまま敗退となりました。そして決勝ではペレスに激突されて 1 周もできないままリタイヤ…あまりに不憫すぎます。角田自身も Q2 の唯一のアタックチャンスに(マックスの件や車検の件に惑わされずに)ミスをしない冷静さは必要だったと思いますが、予選・決勝ともにレッドブルに潰されたような週末でした。これらのインシデントでマックスにもペレスにもペナルティは出ていないし、それに対してアルファタウリも抗議することもなく、半ば黙殺されているような状況。こんなことはあまり言いたくないですが、角田は本気でレッドブル圏を離れることを考えた方が良いのではないかと。あまりにもチーム/グループからのサポートが得られなさすぎ。ウィリアムズあたりでアルボンと走った方が幸せなのでは…とさえ思います。
とはいえ今回大規模アップデートが投入された AT04 の速さは確認できたレースだったと思うので、鈴鹿に向けて期待が高まります。ただ、ペレスに壊された新型サイドポッドの予備があるかどうか?それだけが心配です。
そして日本グランプリはもう今週末ですよ。チームやドライバーは今日から日本入りしているようで、いよいよグランプリウィークがやって来ました。私は今年も現地観戦、レッドブルやアルファタウリへの複雑な思いはありますが、とにかく楽しんでこようと思います。
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