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映画『グランツーリスモ』 [IMAX] @T・ジョイ PRINCE 品川

初代からプレイし続けてきたレースゲームが映画になったということで、観に行ってきました。

グランツーリスモ

GRAN TURISMO

PlayStation プラットフォームでリリースされ続けている『グランツーリスモ』の映画化です。とはいっても先日のスーパーマリオのようなゲーム内容に基づいた映画化ではなく、ゲーマーから現実のレーシングドライバーになったプレーヤーのサクセスストーリー。かつて本当にゲーム内の企画を通じてデビューした実在のドライバー、ヤン・マーデンボローの実話に基づいた物語です。
私はゲーム内企画から本当にレーサーになったドライバーがいたところまでは知っていたのですが、その後どうなったのかまでは追っていませんでした。デビュー後は F3/GP3 や WEC、ル・マンなどに参戦した後に日本に来て 2020 年までスーパー GT やスーパーフォーミュラで走っていたんですね。

作中での(ゲームとしての)グランツーリスモはレースゲームではなくリアルドライビングシミュレーターと表現されています。初代 PlayStation の頃からずっとそれを標榜していて、それまではリッジレーサーのようなゲーム性の高いレースゲームが主流だった中でリアリティーを追求した作りは革新的だったことを覚えています。現在ではよりリアル志向のドライビングシミュレーターとして Assetto Corsa、iRacing、rFactor などのタイトルが台頭してきており(これらはプロのレーシングドライバーもトレーニングに使っている)、それらに比べて GT はシミュレーターとしては見劣りすると言われています。でもライトゲーマー的にはゲームパッドでもそこそこ走れる GT の遊びやすさは気に入っています。あくまでレースゲーとしてですけどね。

プロサッカー選手を父に持ち、弟もサッカーに熱中する陽キャなのとは対照的にヤン・マーデンボローは部屋に引き籠もってレースゲームに没入する日々。ゲームばかりやっている息子への家族からの当たりは強く、ゲーム仲間以外からはあまり理解されない…という典型的なオタクとして登場します。しかしグランツーリスモのゲーム内企画に応募してトップタイムを記録したヤンは、日産が主宰するゲーマーからレーサーへの育成プロジェクト「GT アカデミー」に参加。かつてはル・マンにも出走したことのある元レーサーでトレーナーのジャック・ソルターとともにプロのレーシングドライバーを目指す…という話。最初はトレーナーとも理解し合えなかったのがトレーニングを通じて仲間ができ、レースにデビューし、その中で挫折を味わいなんやかんやあって成功を手にする、というスポーツものとしてはありきたりなストーリーではありますが、ゲーマーからレーサーという骨組みが普通じゃないんだから構成は解りやすい方が良い。
GT アカデミーを率いる日産のマーケティング責任者を演じるのはオーランド・ブルーム。私がスクリーンで彼を最後に見たのは九年前の『ホビット』三部作で、当時とはあまりにも雰囲気が違いすぎるからメインキャラの一人なのに途中までオーランド・ブルームであることに気づきませんでした。

ゲーマーがレーサーになる話だからアカデミーの選抜からレースデビューするまでを尺の半分くらいを使って丁寧に描いています。でもそれはトレーナーやアカデミーの仲間との信頼関係構築が中心で、レーサーに必要なフィジカルやメンタルをどう鍛えたかみたいな話が軽かったのが惜しい。自分でレースゲームをプレイしつつレース観戦もする身としてはそのギャップをどう埋めたのかに興味があるわけです。まあ映像的には地味なので映画としてはクローズアップしにくかったところだと思いますが。

レースシーンはちゃんと実写。シルバーストン(イギリス)、レッドブルリンク(オーストリア)、モンツァ(イタリア)、ホッケンハイム(ドイツ)など F1 でも馴染みのあるサーキットが多数登場するしル・マンのサルトサーキットやニュルブルクリンクのノルトシュライフェももちろん出てくる。いずれも私自身が GT シリーズや他のレースゲームで散々走り込んだトラックだから思い入れがあります。一部、シルバーストンといいながら実際のロケはハンガロリンクだったりするところもありますが、まあ普通は気にならないかな(笑
本物のレーシングカーを撮っている(しかもカースタントはヤン・マーデンボロー本人が担当している!)から走行シーンは迫力があってめちゃくちゃ格好いい。ゲーム内の SE や映像演出をレース映像に重ねてくるあたりも GT らしくてすごく良い。のですが、個人的にはカット割りが細かすぎて鬱陶しかったです。そこは本当のレース中継みたいなカメラワークで走りをじっくり見せてほしかった。あと、ライバルチームが悪質な幅寄せや接触を仕掛けてくる場面以外はあまり駆け引きもなくゲーム的なオーバーテイクシーンばかりだったのも少し冷めてしまいました。リアルレースなんだからもっとドライバー同士の駆け引きを感じさせてほしかったなあ。
ちなみにダーティな走りに定評がある金持ちライバルチーム(金ピカのランボルギーニ)のドライバーがあまりにもニキータ・マゼピンで笑ってしまいました(笑

そういえば、本作のトレーラーにも使われている「このサーキットはゲームで何千周も走り込んでいるからよく解っている」という台詞があるのですが、今週開催された F1 シンガポール GP のサーキットを初めて走るリアム・ローソンが全く同じことを言っていてこれは映画のプロモーションなのか、と思いました(笑)。実際に現代の F1 ドライバーはトレーニングだけでなく個人的にもレースシムで走ることを趣味にしていることが多いようですね。そういう意味では「GT アカデミー」でゲームからプロドライバーが生まれたこと自体がニュースになったのはもう昔の話で、今はゲームがレーシングドライバーの入口であったりプロドライバーでもレースシムを遊ぶのが普通な時代になったと言えます。そういう時代の礎になったのが紛れもなく『グランツーリスモ』だったのだと思います。

私は PS5 をまだ買っていないので GT は 6 で止まっているのですが、映画を観て久しぶりに GT で走りたくなりました。今まで何度も考えては思いとどまっているハンコンの導入も改めて考えたくなってきちゃったなあ…。

コメント

  1. なお2号 より:

    まだみてませんが,最後に幅寄せや接触ですか。マックイーンの栄光のルマンは
    マックイーンがこだわって大金を投じた映画なのに,最後は幅寄せや接触なん
    ですよね。なんでいつもそうなるんですかね。レースを知らない人にも盛り上がり
    ポイントを見せようとしてるんでしょうが,そんなシーンは不要だと思います。

    • B より:

      あ、幅寄せや接触はクライマックスではなくてデビュー直後くらいに「リアルレースの洗礼」的な使われ方をする程度です。
      ただし盛り上がりポイントを分かりやすく見せようという演出はけっこう露骨で、ゴールシーンは毎回サイドバイサイド…みたいなのはちょっと興醒めではありました。
      全体としては普段からレースを見てる人よりもライト層を意識して作ったのかなという印象を受けましたね。

      私は楽しめましたが、純粋にレース映画としてなら『ラッシュ』や『フォード vs フェラーリ』のほうがよくできてたかな。

      • なお2号 より:

        ありがとうございます。よくわかりました。たぶんごらんになっていると思いますが
        もしも栄光のルマンを見られてなかったらぜひ見ることをお薦めします。50年ぐらい前に
        封切りされた映画ですが,今見ても見ごたえあります。実は私は小学生の時に,レース好きの
        兄の希望で家族みんなで映画館に見にいきました。いまだにそのときのことを覚えています。

        • B より:

          ありがとうございます。実は栄光のル・マン観てないんですよね…。
          VOD での配信もやってないようなのですが、セル BD が安いようなので買ってしまっても良いかも。一度観てみようと思います。

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