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泣きたい私は猫をかぶる [Netflix]

ペンギン・ハイウェイ』のスタジオコロリドの最新作が先週より Netflix 限定配信が始まりました。私も早速視聴しました。

泣きたい私は猫をかぶる

泣きたい私は猫をかぶる

本来は劇場版アニメとして制作されていた本作。COVID-19 の影響により映画館での上映が不透明になった段階でいち早く Netflix への配信に舵を切っていました。現在は映画館も営業を再開していますが客足が戻ったとは言いがたく、現時点ではこの判断は適切だったと言えそうです。こういうことをきっかけに新作映画のファーストウィンドウが映画館ではなくネット配信になったり、劇場公開と配信が同時解禁になったりする例が今後増えてくるのではないでしょうか。このあたりの経緯は東洋経済のインタビューで語られています。

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『ペンギン・ハイウェイ』が一昨年の夏映画の中では個人的ベストと言えるくらい気に入っていたので、本作も公開を楽しみにしていました。前作は男子小学生が主人公で、どこからともなく出現した大量のペンギンの謎を追うサイエンス・ファンタジーだったのに対して、本作は女子中学生を主人公とし、彼女自身が猫になってしまう純粋なファンタジー。本作とは全く別のお話ですが、スタジオジブリの『耳をすませば』やそのスピンオフである『猫の恩返し』にどことなく似た手触りを感じます。

主人公である美代(あだ名は「ムゲ」)は夏祭りの夜に謎のお面屋から受け取ったお面の力で、猫に変身できるようになります。彼女が猫になったのは、想い人であるクラスメイトの日之出の近くで過ごすため。角川つばさ文庫でノベライズ化されているとおり、女子小中学生に向けたラブストーリーが話の軸ではあります。

個人的にはムゲの言動があまりにエキセントリックすぎて、始まってしばらくはこの子にはちょっと共感できないな…という違和感を持ちながら観ていたのですが、20 分を過ぎたあたりから彼女の生い立ちや悩みについて描かれ始め、気が付いたときには彼女の気持ちが「わかる」ようになっていました。
複雑な家庭環境(といっても、現代ではそれは決して珍しいものではないのかも)に育ち、かつ思春期という繊細な年ごろの女の子を描くのは、ともすると理解不能になりがち。また近年はストーリーの都合で登場人物の気持ちや行動を舞台装置化して、視聴者としては「どうしてそうなった」と言いたくなる展開の作品も少なくないように思います。その点、本作におけるムゲの描写は一つ一つを紐解くように丁寧で、この難しいキャラクターに共感していく段取りがうまく仕込まれています。男としては日之出がムゲの気持ちや悩みに少しずつ気づき、惹かれていく過程と自分の視点とがリンクしていく感覚がありました。その点において、普通の子が普通に恋をするだけの話だったとしたら、ここまで共感できなかったに違いありません。

クライマックスでは活劇っぽい展開がある割にアクションが子供だましで物足りない印象はあったものの、作品のテーマはそこではありませんからね。思春期特有の、自分や異性、家族、友人の見え方がそれまでとは変わっていく感じや、誰かをいとおしいと思う感覚を知る感じが丁寧に描かれていて、私もちょっと甘酸っぱい気持ちになりました。

派手さはないけれど、良い映画だと思います。

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