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42 ~世界を変えた男~ @イオンシネマ板橋

42 ~世界を変えた男~

プロモーションにお金かかってる映画が多い今季においては比較的地味な作品ですが、ちょっと気になっていたので観に行ってきました。「メジャーリーグ初の黒人選手」としてチームのみならず米野球界に貢献し、殿堂入りを果たしたドジャースのジャッキー・ロビンソンの実話に基づいた映画です。
タイトルになっている「42」は、ジャッキー・ロビンソンの背番号。メジャーリーグに詳しくないので今回初めて知ったのですが、現在はメジャーリーグ全球団の永久欠番に指定されていて、デビュー日にあたる毎年 4 月 15 日にはメジャーの全選手が背番号 42 をつけてプレーするんだとか。こういうの、アメリカらしいロマンがあって、いいですね。

以前も書きましたが、『マネーボール』といい『人生の特等席』といい、メジャーリーグを題材とした名作映画が定期的に撮られ、こうして日本にまで流通してくるというのが、アメリカと日本での野球文化の違いなのだろうなと思います。

舞台は第二次世界大戦後のアメリカ。戦争終結によって当面の外敵がなくなったアメリカ…という時代背景もあるのでしょうが、まだまだ黒人差別が激しく、メジャーリーグも白人だけのものでした。そこに、当時としては革新的な考えを持つブルックリン・ドジャースの GM、ブランチ・リッキーが黒人選手を起用することを考え、ジャッキー・ロビンソンを見出して…というお話。
なぜリッキーが黒人起用に積極的だったかというのは、Wikipedia に記載があります。

リッキーが黒人選手を受け入れることに積極的であった理由としては、ブルックリンにおける黒人の人口の多さや将来的な黒人家庭の中産化を見越した上でのマーケティング戦略と、より効率的な選手の供給源の開拓のためであった。

まあ、今という時代から見るとその考えは真っ当だと思えますが、劇中にも人種差別、思想信条、既得権などさまざまな理由から黒人選手の台頭を忌避するような言動を多くの登場人物が行っていて、「そういう世の中」だったんだなあ、ということが私のような実感のない国民/世代からしても感じ取れます。
とはいえ、個人的な思い入れがあったにせよ(むしろあったからこそ)、その先の時代での白人以外の人種の台頭を感じ取り、新しい市場を開拓しようとしたリッキーの行動には強く共感するところがあります。結局、成熟した市場を存続させるには「変わること」しかなく、慣習や固定概念を守ることよりも「金が回ること」が市場の成長と、それに関わる人の生活(そして、金を求めて優秀な人材がそこに集まってくること)には重要なんですよね。


そんなわけで、私はついついマーケッターの視点で、主役であるジャッキー・ロビンソンよりもむしろブランチ・リッキーに注目してしまいましたが(笑)、ブランチ・リッキーの芝居がまたいい。だってブランチ・リッキー役、ハリソン・フォードですよ?つい 5 年前にはまだまだインディ・ジョーンズ役でやれるところを(ちょっと苦しいけど)見せていたハリソンが、不敵でドライなビジネスマン、だけど本心には誰よりも野球を愛する心を持ち、そのためにジャッキー・ロビンソンを導いていく、という重厚な演技を見せてくれるとは。この演技がこの映画での最大の見どころだった、と言って良いかもしれません。

主役の話に戻すと、ジャッキー・ロビンソンがあらゆる差別に堪え、チームの内外に少しずつ味方を増やしていくプロセスにはジーンと感動するものがあります。が、脚本上は差別や迫害を受けるシーンの直後に必ず誰かが励ましたり助けたりしてくれるシーンがあるので、事前に思っていたほど辛そうに見えない。実際のジャッキー・ロビンソンはこの映画の比ではないほどに苦しんだのでしょうが、映画的には思ったよりあっさり乗り越えられてしまったように見えたのが、物足りないと言えば物足りないでしょうか。

とはいえ、全体を通してみれば、長いけど「観て良かった」と思える、いい映画でした。やっぱり私は、お金だけかかってどかーん、ばかーんとやる映画よりも、こういう映画の方が好きなのだと思います。

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