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『喜劇』にみる星野源のソウル・ミュージック

今期のアニメ『SPY×FAMILY』、面白いですよね。私は完全にハマってしまって毎週家族で観ています。

作品の内容もさることながら、OP と ED がどちらも素晴らしい。OP『ミックスナッツ』は作中に登場するピーナッツというキーワードからよくもあそこまで作品の内容とリンクする詩を掘り下げたと思うし、ED『喜劇』は本編終了後に「生まれ落ちた日から よそ者」「私の居場所は作るものだった」「あの日交わした血に勝るもの」という詩がグサグサ刺さる。最近『シン・ウルトラマン』に対する米津玄師の主題歌の解像度の高さが話題なのと負けず劣らず、『SPY×FAMILY』のこの二曲も作品そのものを「わかって」いると感じます。

ところでその『喜劇』。詩の良さもさることながら、私はそのサウンドに完全にやられてしまいました。だってこの曲、1990 年代のネオ・ソウルそのものじゃないですか。ミディアムなテンポ感、インスト使い、ベースライン、B メロ(あの日交わした~)に入る直前の溜め、サビのコーラスの厚み、ブリッジ(仕事明けに~の部分)でのファルセットの使いっぷり、全体的に抑揚が大きいわけでもないのに妙に溢れるグルーヴ感…完璧なまでにネオ・ソウル。Angie Stone とか Eric Benét とか、その時代のネオ・ソウルと並べても遜色ない良さがある。

私は星野源の代表的な楽曲は聴いたことがあって、’70 年代のソウルやダンスミュージックのテイストを感じるとは思っていたし、ソウルに限らずかなりの音楽オタクであることは知っていたのですが、ここまでガチでソウル/R&B に造詣が深い人だったとは知りませんでした。そう思って調べてみたところこんな記事を発見。

【第27回】――ディアンジェロ - TOWER RECORDS ONLINE
【第27回】――ディアンジェロ - タワーレコード

マジか!星野源、D’Angelo 聴いてたのか。しかも「こんな感じにしたい」というサンプルが “Voodoo” とは…D’Angelo、ネオ・ソウルの伝説的アーティストという位置づけになっていますが、ジャケットデザインを見れば分かるとおりディープでマニアックだから万人に勧められるわけでもないんですよね。それがとっつきやすさの化身みたいな星野源とはすぐには結びつきませんでした。

今まで星野源は声の軽さとアップテンポ気味の曲が多かったことであまりそっち系に深い印象がなかったのですが、そういう前提知識を持って聴いてみると星野源の他の楽曲もちょっと違って聞こえてきます。というわけで改めて Spotify で片っ端から聴き漁ってみました。

代表曲のひとつである『SUN』は分かりやすく Jackson 5 風味。現代でも Jackson 5 や Earth, Wind & Fire あたりを意識したアーティストや楽曲は多いからそれほど違和感はなかったけど、サビ後にコーラスでシンコペ気味に「Ah Ah…」とやるのは雰囲気だけソウルに寄せた程度では出てこない構成。

これはイントロから ’70 年代のフィリー・ソウル、The O’Jays とか The Stylistics の流れを感じます。ちょっともっさりしたリズム感とかストリングスの使い方、ソフトかつスムーズに入ってくるコーラスなんてまさにそうですよね。全然ソウルっぽくない星野源の歌声やふざけた MV に目眩ましされてたけど、これは『SUN』以上にソウルに深く触れてないと作れないアレンジだと思います。

これなんて Stevie Wonder 系ですよね。サビの感じなんてめっちゃ Stevie Wonder。私は同様に Stevie Wonder の影響を受けた久保田利伸の 1990 年代のこういう構成の楽曲をずっと聴いて育ったから、この曲はど真ん中ストライク(笑。

打って変わってヒップホップ系な『POP VIRUS』。こういう音が分厚くてグルーヴのある感じはチキチキズンズンな今のヒップホップじゃなくてもっと R&B との境界線が曖昧だった ’80~’90 年代のそれ。バックでかかってるシンセの音(上の『不思議』にもあったけど)なんて私の大好物です。

喜劇

星野源は以前ティム・クックとの居酒屋での再現写真を撮ってから一方的に親近感を持っていたのですが(笑)、さらに好きになりました。それにしても私と歳もあまり変わらなくて同じ音楽を聴いていて私も一時期音楽やってたのにあちらは新垣結衣と結婚…どこで差がついたのか(ぉ

とはいえ初期のアルバムはそれほどソウル色は強くなくて、明確に方向性が出てくるのは 2015 年の『YELLOW DANCER』以降なんですね。このタイミングで何があったのかと思ったら、並行して活動していたバンド「SAKEROCK」が解散した年。これが何かの契機になったのかもしれません。直近の『YELLOW DANCER』と『POP VIRUS』は全般的に私の好みの音。この二枚のアルバムは買う価値ありますね…。その上で『喜劇』はゴリゴリのネオ・ソウル。もし今後このアプローチをさらに強めていくのであれば、個人的には期待しかありません。とりあえず、この二枚のアルバムと『喜劇』はプレイリスト化してヘビロテ決定だな。

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