先月末、漫画家の土山しげる先生が逝去されました。
土山しげるが68歳で死去「喰いしん坊!」「極道めし」などで活躍 – コミックナタリー
68 歳とのことで、まだお若いのにと思うと言葉も出ません。昨年亡くなった谷口ジロー先生といい、続きますね…。
土山先生といえば『荒野のグルメ』『野武士のグルメ』で久住昌之先生原作の漫画化を担当された方でもありますが、それ以前よりグルメマンガの大家として有名でした。私は三年前の久住先生のトーク&サイン会でご本人のお話を伺ったことがありますが、料理を緻密に描く谷口先生とは違い、土山先生は「食べるときの表情」でおいしさを表現していると仰っていました。
本当に直近まで現役で描き続けていたようで、どれが遺作なのかはちょっと判りませんが、『野武士のグルメ』の 3 巻が最近出ていたことに気がついたので追悼の意を込めて買ってきました。
主人公・香住武。久住先生の風貌を意識したと思われるドラマ版の竹中直人も面白かったけど、やっぱり漫画版のこの野暮ったいおじさんが心の中に「野武士」を住まわせているという設定がいいんだよなあ。
質のいいうなぎに割り箸を立てたときの擬音に「サフ」!このセンスですよ。
土山先生自身は「表情で表現」と言っていたけど、この鰻や米の質感もなかなか、谷口ジロー先生にひけを取っていない。うなぎ食べたくなってきた(´ρ`)。
そしてこの表情。おなじ「おいしい」の表現でも、喜んでいるとき、興奮しているとき、しみじみ味わっているとき、懐かしさを感じているとき…など少しずつ、ちゃんと違うのがいい。
あと『孤独のグルメ』と違って飲酒シーンがあるのも、飲んべえとしてはグッときてしまいます。
ちなみにエピソードの半分くらいは場違いな店を選んでしまったとか、店の雰囲気に飲まれてしまったとか、失敗寄りのエピソードだったりします。実在する店舗へのロケを伴うドラマだとそういう話は扱いづらいですからね(ドラマ版『野武士のグルメ』では失敗エピソードにも果敢にチャレンジしてましたが)。
単行本の最後のコマがこれですよ。満面の笑みで「さ、こちとら酔う前に切り上げよう」。まさに野武士らしい潔さであると同時に、土山先生の遺作(の一つ)の最終コマとして見ると、なんだか意味深に思えてきます。
ご冥福をお祈りいたします。
こりゃあ、他の代表作も読んでみないといけないかなあ。
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