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月に繭 地には果実

MG を作りながら読んでいた小説を読み終えました。

福井 晴敏 / 月に繭 地には果実 (上)
福井 晴敏 / 月に繭 地には果実 (中)
福井 晴敏 / 月に繭 地には果実 (下)

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序盤はテレビ版に忠実に展開しますが、中巻以降は全くと言って良いほど違う作品になっていました。テレビ版の初期プロットをベースに書かれた小説なので、ストーリー展開に従ってテレビ版から逸れていったんですかね。テレビ版で登場した主要キャラの何人もが登場しませんでしたが、テレビ版はやや中だるみを感じる部分もあったのに対して、福井版は明確な主題に沿って最後までストーリーが進む感じで、こちらのほうが「ターンエーガンダム」という作品が描きたかったことをストレートに表現している気がします。


主役級キャラがあまりわがままを言わなかったテレビ版に対して、この福井版は人の理念とエゴの表裏一体、そして誰の心にも巣食う魔物について真正面から向き合った作品だと思います。最もギャップが大きかったのはキエル・ハイムじゃないでしょうか?テレビ版ではディアナ・ソレルと共感、共鳴するさまばかりが描かれていましたが、この作品ではむしろ同じ顔を持つキエルとディアナの違いの部分がクローズアップされていたように思います。終盤のキエルはむしろ軽くカテジナさん入ってるんじゃないかと思ったほど(ぉ。でも、テレビ版ではいろいろ曖昧だったそれぞれのキャラ(特に月側の人々)の行動の動機とか、謎の多かった MS やマウンテンサイクルの背景とか、ちゃんと描かれていてやっと消化できた感じ。
それにしても下巻の文章表現は強烈で、読んでいてちょっと辛かったです。たくさんの人が死ぬけど全体的には「優しい」と表現できるテレビ版と違い、命が失われるときの表現は遠慮なく残酷で、オブラートに包んだり変に美化したりすることがないのが「福井節」というんですかね。小説を読んで緊張したのは(緊張の種類が違いますが)鈴木光司の『リング』以来かもしれません。

オリジナルとは全く違うラストにちょっと愕然としましたが、これはこれで良い結末だったような。テレビ版で報われなかった想いが福井版で報われ、福井版で遂げられなかった想いがテレビ版で遂げられているという、互いが互いの救いになっている作品だと思いました。

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