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Still Life Imaging スタジオ撮影の極意

遅ればせながら購入しました。

南雲暁彦 / Still Life Imaging スタジオ撮影の極意

Still Life Imaging

玄光社の直販ストアの期間限定 50% OFF セールにて購入。

本書は凸版印刷チーフフォトグラファー 兼 長岡造形大学非常勤講師である南雲暁彦氏のブツ撮りテクニック集です。玄光社コマーシャル・フォト誌の連載「Still Life Imaging -素晴らしき物撮影の世界-」を書籍化したもので、内容自体は同社の Web 媒体「Shuffle」でも読むことができます。

Still Life Imaging -素晴らしき物撮影の世界- | Shuffle by COMMERCIAL PHOTO

南雲さんといえばキヤノン EOS や EF/RF レンズのローンチ時のオフィシャルフォトを 15 年以上にわたって担当されており、海外(それも一般人が足を踏み入れることが難しい極地を含む)の風景写真の印象が強かったのですが、本書はそれとは対極にあると言えるスタジオでのブツ撮りが主題。昨年の表参道 La CHIARA で開催された写真展はこの月刊連載時における副産物を展示したものでした。

Still Life Imaging

いきなりズシンと響いてくるプロローグ。商業フォトグラファーとして写真を撮るときの被写体との向き合い方について。
南雲さんは自身のことを「世界一普通の人間」と評していますが(←このエントリーすごくて、「プロとしての仕事との向き合い方」の真理が書かれているから一読の価値あり)、私から見れば砂漠から北極圏まで海外を飛び回って商業写真を撮り続けるという、世界一普通じゃないことをやり続けているフォトグラファーの一人です。

私はアマチュアですが、写真って「何かの光景を見て心動かされたときに、その瞬間や被写体の魅力をありのままに/感じたままに静止画として表現したい」という衝動でシャッターを切るものだと思っています。その点で、被写体の魅力を最大限に引き出すために持てる技術を惜しみなく投入するコマーシャルフォトはある意味最も写真らしい仕事である、とも思うのです。そこに投影するのが自己なのかクライアントの意向なのかエンドユーザーが見たいものなのか、はアプローチの違いに過ぎず、優劣をつけるものではないはず。

Still Life Imaging

本書で紹介されている撮影テクニックはコマーシャル・フォト誌だけあってメーカーの広告写真を想定したものになっています。スタジオでシチュエーションや光源を周到にセットアップして撮る、非常に時間と手間のかかるもの。私もこういうスタジオ撮影には何度かクライアントとして立ち会ったことがありますが、ちょっとした違いにもこだわり微調整と撮影を繰り返すプロの仕事には感嘆するばかりです。

Still Life Imaging

例として掲載されている(しかも 1 商品につき複数パターンの例が提示される)写真がどのような手順とセットアップで撮影されたかが事細かに解説されています。プロとして手の内をここまで明かしていいものなの?と心配になるレベルですが、つまるところ方法論は真似できても重要なのは微調整のテクニックと何よりも「どう撮れば被写体の魅力を引き出せるのか」。これを発想するセンスや引き出しの多さは一朝一夕に真似できるものではないからこのくらい教えても惜しくはない、ということなのでしょう。

Still Life Imaging

これを読めば「CG だと思っていたあの広告が本当は実写で、どう撮られていたか」が想像できるようになります。また、数多くの機材(大半はライティング)が必要になるため自宅での再現は難しいにしても、自分のブツ撮りのレベルをどうやったら上げられるかのヒントには確実になると言えます。
私はこういう blog をやっているのでブツ撮りは被写体の格好良さよりもモノの形や色などを正確に(説明的に)表現する撮り方になりがちですが、もっとライティングに凝って格好良く撮るアプローチをしてみたい…と思うようになりました。

Still Life Imaging

でもとにかく、一つ一つの写真に『スゴ味』があり、ページをめくるたびにその強さに打ちひしがれる一冊です。印刷物で見るのは、Web で見るのとはまた違ったパワーが感じられる。

ブツ撮りというその気になれば自分でも同じことができるテーマだからこそ、プロの仕事の凄さが分かる。私は今まで南雲さんの写真は、写真を撮るためだけに世界中に出かけるわけにはいかない自分とは違う世界の出来事だとどこか思っていました。が、ブツ撮りという自分の日常と地続きなテーマでリンクしたことで、自分も一歩でもそこに近づいてみたいと思わせてくれる力がありました。
もし今後私の写真に対するアプローチが少し変わったとしたら、それは本書の影響に違いありません。

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