西田宗千佳さんの新著を読了しました。
スマホはどこへ向かうのか? 41 の視点で読み解くスマホの現在と未来
タイトルは『スマホはどこへ向かうのか?』。スマホの普及期が一段落した頃に比べると「ポストスマホ」みたいなことは言われなくなってきましたが、それでもスマホの次のイノベーションがいつ、どのような形で訪れるかは気になるところ。スマホが多くの産業に破壊的イノベーションを起こしたことは事実で、その普及がピークを過ぎた今こそ次に備える必要があります。極端な話ではなく、その動向次第で我々はより豊かな生活を送れるかもしれないし、逆に職を失う可能性だってある。まあ日本にいる限りは利益を吸われる側に回るリスクの方が高いこともまた事実ではあります。
本書はそんなスマホを取り巻く状況について「そもそもの基本的な『なぜ』『なに』」、「スマホはどのように作られ、どのような形で生活や経済に影響を与えているのか」、「今、およびこれからのスマホに起きている変化とは何か」という三つの切り口で、細かく分けると 41 の視点から解説したものです。比較的敷居は低く、業界に詳しくない人でもこれを読めばスマホの今がある程度理解できる内容になっていると思います。この世界に比較的近いところで活きている私としては過半がある程度知っている内容でしたが、こうやって俯瞰することでスマホと世界がお互いに与えている影響がフラットに理解でき、次に起こり得ることがなんとなく予想できる。
私は 7~8 年くらい前、スマホの次の時代はスマートグラスの時代が来るんじゃないかと予想していました。2025~30 年頃にスマホを置き換えるというよりはスマホのコンパニオンデバイスとして、全員ではないけどある程度の割合の人々が日常的に XR グラスを身につけるようになるのではないかと。しかし表示デバイスの進化がそう一朝一夕にいくものではなく、スマートグラスも VR HMD もまだ一部の好事家が使うものの領域を抜け出していません。日常的に身につけるという点では TWS イヤホンがそれに近いポジションを得ていますが、それだってまだ音声・音楽聴取と通話目的がメインで情報端末のコンパニオンデバイスとして活用されているとは言い難い。「大半の人が同じように使う」という意味ではもしかするとスマホの形状が最終到達点なのかもしれない…という考えを否定することは難しい。
というわけで、本書の結論も「スマホの次はこれ!」という大胆な予想を打ち出すものではありません。西田さんの著書らしくファクトを真摯に積み重ね、客観的に推測しうる未来を示唆するに留まっています。ただ、ここ数年代わり映えがしなくなって進化の踊り場にあるように見えたスマホが、AI の日進月歩と言える進化、通信やその周辺ビジネスを取り巻く環境の変化、そして国家間の経済や軍事上の関係の変化などによって今後変化を余儀なくされそうな状況にあることは既にある程度見えています。片手で何とか持てるサイズの板というプラットフォームは大きくは変わらないかもしれませんが、数年後にはその役割や人間との関わり方が少しずつ変わっていっている可能性は大いにありそう。世の中の大きな変化に抗うことは難しいですが、これを読むことで少なくとも身構えておくことはできる。そんな一冊だと思います。
スマホはどこへ向かうのか? 41の視点で読み解くスマホの現在と未来 (星海社 e-SHINSHO)
- 西田宗千佳
- 講談社
- 価格¥1,307(2025/06/11 21:44時点)
- 発売日2025/05/21
- 商品ランキング17,775位
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