愛読しているコミックの続巻が発売されたので、さっそく購入しました。
昨年末に発売された 1 巻は外食好きとしてはとてもブッ刺さる作品でした。その後も梵辛先生の Twitter を中心に続編が公開されていましたが、このたび単行本としての分量が溜まったということでめでたく 2 感が発売。前回は明確に「1 巻」という扱いではなかったので続巻が出たことはとてもめでたい。
和紙カバーの柔らかな質感がこの作品の雰囲気にとてもよくマッチしています。このカバーの触り心地を感じながら読む体験は、スマホで読むのとは違って紙の単行本を買って良かったと思いますね。
本作の内容は基本的に前回書いたとおり、とある飲食店のくちべたな店員さんとこれまたくちべたな常連客の心温まるふれ合いを描いたものです。
お客さんを喜ばせようと日々がんばる店員さん(くちなしさん)のこの一生懸命な顔や、
定食を日々堪能する常連さん(ヤナギ先生)のこの幸せそうな表情を見るたびにこちらが癒やされる。これらの表情を見るために読んでいると言っても過言ではありません。
1 巻ではお互いがそれぞれ気持ちを伝えたいけどあまり重い一言で気持ち悪がられたくない→結果的に一言二言しか交わせない、というもどかしさが面白さの軸となっていましたが、
2 巻では二人の関係性は少し進んで、(まだぎこちなさはあるものの)それなりにコミュニケーションが取れるようになってきました。この変化を素直に喜ばしいと思う一方で、もうしばらくすれ違いが続いてじれったさを感じてみたくもあった(笑
また二人の間だけでなく周辺も掘り下げられていて、
ヤナギ先生の働く学校での生徒とのやりとりとか、一緒に飲食店を経営するくちなしさんの家族にまつわるエピソードも登場し、作品の世界観が広がってきました。
こういうお店の外での状況が描かれることでお店での二人の気持ちがさらに深まり、高まって見えるのが良い感じ。
そういう変化がありつつも、お互いの距離感に悩む二人のぎこちないやりとりは基本的には変わらず。
「自分の推しの店に繁盛してほしいけど、知り合いの来店が増えて自分のパーソナルな安らぎの場でなくなってしまうのは寂しい」というジレンマ。めっちゃわかる。
味変に関する悩み!これ死ぬほどわかる!!!
…私はメニューや貼り紙でお店側のオススメ味変手順が書かれていたらそれに従うし、なければ基本的には半分くらいはデフォルトの味で楽しんで、残り半分で(あまり極端に変えない範囲で)味変する、というようにしています。
そして、何よりこの台詞なんですよ。
忙しいとき、疲れたとき、大変なとき、一仕事終えたとき、羽を休めるように馴染みの店に入って、いつもの味と店員さんの笑顔に癒やされ、励まされる。世の中にはうまい店や人気のある店はごまんとあるけれど、自分にとってのこういう位置づけの店を見つけられることが外食における真の幸せだと思うのです。一昔前ならこういう感覚に共感してくれる人はあまり多くなかったかもしれませんが、「おひとりさま」や『孤独のグルメ』の流行そして COVID-19 に伴う「孤食」概念の定着によって、独りで料理やお店と向き合うことで得られる癒やしや幸せが多くの人に理解される世の中になってきたのかな…と思っています。
ちなみに、今回も巻末には単行本専用の描き下ろしエピソードが掲載されています。Twitter 連載では読めない、それでいて作品世界を掘り下げる意味ではけっこう重要なエピソード。Twitter で無料公開してくれたことに対する感謝+新規エピソードへの課金+α(じっくり読める紙の読書体験)のつもりで私は単行本を購入しています。
世の中的には、以前に比べると外食のハードルは随分下がってきましたが、私自身はリモートワーク生活が継続しているから日常的には週末くらいしか外食できていません。でも本書を読むとやっぱり外で、それもいい店とかじゃなく生活圏にある個店で食事したくなりますね…。今度機会を見つけて、昔よく通っていた飲食店のいくつかを改めて巡ってみたくなりました。本書のような飲食店とお客さんのやりとりがもっと普通にできる日々が戻ってくることを、強く願っています。
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