最近、目先の大きな仕事がようやく一段落したので、次への仕込みを始めつつ、また自分の頭の養分を吸収するべくいろいろ勉強中。タイトルに惹かれてこんな本を読んでみました。
湯川 鶴章 / 次世代マーケティングプラットフォーム 広告とマスメディアの地位を奪うもの
うーん・・・ちょっと物足りないというか何というか。「マーケティング」という企業活動の認識の違いですかね?
著者は新聞社の方らしいので、どうしても広告宣伝の側面が主になっているのだと思いますが、一般的に言っても「マーケティング」を「広告宣伝・販促関連だけに関わる仕事」と定義している企業もおそらく少なくないのでしょうね。むしろ、国内における一般論としてはそちらの認識のほうが多そうな気もします。ただ、個人的には、この内容ならばタイトルは『次世代マーケティングプラットフォーム』ではなくて、『次世代 Web アド・プロ・セールスプラットフォーム』としてくれたほうが、すんなり飲み込めたと思います。
内容的には、少し前に流行った Google・Apple 礼賛本に近い勢いで Omniture すげー、Salesforce.com すげー、Amazon すげー、というものです。具体例が多いので、既存のフレームワークを応用した Web セールス/プロモーションプラットフォームをこれから立ち上げよう、あるいは改善しよう、という人にはかなり参考になるような気はします。まだあまり日本には導入されていないアメリカでの事例が主なので、目新しいものも多いですし。
でも私が求めていたものはもうちょっと違って、どちらかというと、もっと全体を俯瞰した意味での「マーケティング・プラットフォーム」を期待したので、そういう意味ではあまり参考になりませんでした。具体的には、Web と既存媒体、マスコミュニケーションとカンバセーショナルコミュニケーション、イノベーターからラガードまでといったマーケット全体をより体系的にとらえて、どうクロスコミュニケートしていくか、そのときのプラットフォームや(もっと言うと)企業のあり方はどうあるべきか・・・みたいな内容を求めていたのですが、ちょっと大きすぎましたかね。
でも、参考になった話もいくつかあって、特にそれは序章と終章に集約されていました。序章の「イノベーションは周縁から起こる」という話は、まあ一般論ではあるのですが、確かにどんな世界でも革命というのはその世界のど真ん中ではなくて周縁から起こり、真ん中にいる人たちはそのイノベーションを受け入れようとせず、気がつけば立場が逆転している、という話。業界や社会の常識に縛られず、フラットな視点で流れを読む力を磨きたいものです。
また、終章の
ターゲットメディアになるということは、一方通行のマスメディアとは異なり、ターゲットとなる顧客と向き合うということでもある。(中略)一対多の関係であっても、一方的に情報を出すのではなく、メディア側が出す情報を核にユーザーが情報を交換し合うようなコミュニティを作る営みなのだ。
には、個人的に激しく同感。でも、それを実現するのがとてつもなく高い壁だったりもするので、むしろその壁を越えるヒントを書いてくれよ!!!と思いましたが・・・。
そういう意味では、全般的に至極もっともな話ばかりなのですが、もう一つ高いレイヤーであったり、もう一歩踏み込んでほしいところがことごとくその手前で止まってしまっているのが非常に残念でした。既存の事例や小手先の手法じゃなく、もっと普遍的な考え方について「共感」して「納得」しつつ、さらに「発見」がある書物こそ読みたいのです。何か良い本ないかなー。変に書物に頼るより、同じような分野で活躍している人と議論するほうが、最近は得るものが多いとは思っていますが。
コメント