久々に単館系の映画を観てきました。
日比谷のTOHO、ミッドタウンの方のスクリーンは時々利用するけどシャンテは相当久しぶり。間違えて商業ビルの方のシャンテに入ってしまったくらいです(TOHOシャンテは隣のビル)。
『ハリー・ポッター』シリーズでヴォルデモート卿を演じ、近年では『教皇選挙』や『ザ・メニュー』といった作品でも名演を見せているレイフ・ファインズが主演。それも合唱がテーマとあって、実は合唱経験者な私としては観てみたかったのでした。
第一次大戦中、イギリスの田舎町。地元の名士が創設した合唱団は徴兵によって貴重な団員を喪い、さらには指揮者まで戦争に行ってしまったため存続の危機に。そこで地元にまだ残っている若者から団員を募り、また新たな指揮者として招聘されたのは、敵国ドイツで活動していたヘンリー・ガスリー博士(レイフ・ファインズ)。戦争という苦境の中、バラバラで技術も伴わなかった団員たちはガスリー博士のもとで少しずつ団結し、良い歌を歌えるようになっていくが…という話。
レイフ・ファインズの代表作となった『教皇選挙』では、ファインズ演じるローレンス枢機卿自身が物語を回していく役どころでした。が、本作では合唱団の指揮者という重要な役割ではあるものの、シナリオ上はあくまで「群像劇に参加する主要人物の一人」という扱い。もっと合唱団をまとめ、技術を引っ張っていく苦労が描かれるかと思ったのですが、その点では少し肩透かしでした。でもこだわりが強く少し気難しいガスリー博士の人となりがよく伝わってきて、やはり引き出しの多い名優であることが改めて分かります。
映画はまさに戦争に翻弄される人々による群像劇。合唱団関係者の人間模様が、ともするとフォーカスする人数を広げすぎでは…と感じるほどつぶさに描かれています。これから徴兵される者。戦争で家族や恋人を喪った者。戦場から帰ってきた者。徴兵されなかった老人や婦人。合唱という共通の目的のもとに集まりながらも状況や立場が違う人々の想いが交錯し、またそれと平行して演奏会に向けた練習や準備は進んでいきます。演奏会の曲目は、敵国ドイツの作曲家は選べないということで『威風堂々』で有名なエドワード・エルガーの『ゲロンティアスの夢』。とはいえ合唱団の編成ではオリジナルをそのまま上演することは難しく、大胆なアレンジを試みたところ当のエルガー自身が演奏会に聴きに来てしまい…という展開に(もちろんフィクションです)。
合唱団の成長物語という観点では、練習に苦労する様子があまり描かれない割にある時から急に上手くなっていたり、都合の良いタイミングでソリストとして上手い人材が加入したり、それほど難航した様子には感じられません。経験者視点ではそういう難局をどう乗り越えたかを観たかったから残念。本作はそれよりも、当時の人々が戦争に振り回されていくさまを客観的に、やや淡々と表現することを主眼としたように感じました。歌を通じて懸命に生きた人々と、それとは関係なく無情に動いていく現実。そのギャップが心に刺さる映画だったなあ。そういう意味では「希望を紡ぐ歌」というサブタイトルは作品の実態をあまり正しく捉えていないようにも思います。
いかにも単館系らしい映画、というのが正直な感想です。でもたまにはこういう映画も悪くない。



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