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教皇選挙 @kino cinéma 新宿

イタリアでは今日から次期教皇を選出するコンクラーヴェ(教皇選挙)が始まったそうですが、私は連休中にこの映画を観てきました。

教皇選挙

CONCLAVE

新宿三丁目の kino cinéma、ここに映画館があるのは以前から知っていたのですが初めて入りました。このタイミング、かつそもそも上映館/上映回数が多いわけではない作品なこともありなんと満席。ここまでとは思っていなかったから驚きました。

在任中の教皇の急逝に伴い実施されることになった架空のコンクラーヴェについて描いた作品です。元は小説(未邦訳)のようですね。
個人的には教皇とか枢機卿とか大司教とかいうと悪役とか黒幕というイメージで捉えてしまうのですが、たぶん映画やアニメ、ゲームといった創作の影響を受けすぎだと思います(笑

コンクラーヴェを取り仕切るのは、自身の信仰や教会のあり方に疑問を感じ、自分が次期教皇に選ばれるつもりはないという主席枢機卿ローレンス。一方で次期教皇の座を狙うのは初のアフリカ系教皇を目指すアデイエミ、イタリア至上主義な保守タカ派のテデスコ、保守穏健派のトランブレ、先進派リベラルのベリーニの四名。それぞれが野心を抱く曲者で、誰が選ばれてもそれぞれ功罪ありそうな人物として描かれています。コンクラーヴェが始まると枢機卿たちはシスティーナ礼拝堂に隔離され、外部との連絡が絶たれた環境で誰か一人(立候補制ではない)が全体の 2/3 の票を得るまで投票が繰り返されます。
礼拝堂に渦巻くのはさまざまな権謀術数、情報戦、取引…といった「政治」そのもの。信仰のための活動とはあまりにも対照的に思えますが、きっとこうやって代々その時代に応じた教皇が選出され、キリスト教そのものがアップデートを繰り返してきたのでしょう。

そんな中で物語のカギを握るのが、前教皇が死の直前にトランブレ枢機卿を解任したという噂と、コンクラーヴェの直前になって発覚した「前教皇が秘密裏に任命していたという中東カブールの新任枢機卿」の存在。選挙の勢力図は二転三転し、最終的に誰が選ばれるか先の読めない展開が続きながらも最後には全ての伏線が驚きの結末に繋がっていました。

自身が深い悩みを抱えつつ、四人の候補者に翻弄されながらも前教皇の残した謎を解き明かすローレンスを演じたのはレイフ・ファインズ。『ハリー・ポッター』シリーズでヴォルデモートを、そして『ザ・メニュー』では狂気の料理人スローヴィクを怪演した名優です。私がこれまでに観た出演作の中では今回初めて人の心がある役どころだったわけですが(笑)、悪役のときとは全然違う深みのある芝居が素晴らしい。他の四人の候補者も人物像はややステレオタイプ気味ながら、各人がそれぞれの信仰に基づいて選挙を戦う姿が対比的に表現されていて良かった。
でも芝居以上に映像と音響が素晴らしかった!映像面では陰影を効果的に使っていたことに加え、意図的に余白を設けた映像を映画館の大スクリーンに映すことで構図によって演出意図を表現していたのが実に見事。音響に関しては密閉された礼拝堂の閉塞感と、それが外の空間と繋がったときの開放感の差がサラウンドにおける最大の聴きどころ。また投票シーンでは礼拝堂のざわつきがあまりにリアルで、自分自身がその場の一員になったような錯覚に陥りました。正直言って鑑賞前は「あまりアクションのないドラマだし、映画館じゃなくて配信を待てば良くね?」と少し思っていたのですが、これは映像的にも音響的にも映画館で観る価値ありました。

個人的にはここ数年観た洋画の中でベストと言って良いほど素晴らしい映画でした。「コンクラーヴェ」って今までは高校世界史で習った程度の知識しかなかったのが一気に解像度が上がったのも嬉しい。実際にコンクラーヴェが行われている期間にこんな映画を観られる機会なんてもう一生ないかもしれないし、選挙の結果が出る前に観に行ってみてはいかがでしょうか。

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