昨日に続いて、パケットビデオ社の Twonky モノフェローズイベントのレポート記事をお送りします。
今回のイベントには一名、パケットビデオ社外からのゲストが招かれていました。この blog を読んでいる方であればもう説明の必要はないであろう、フリーランスジャーナリストの本田雅一氏。
私が Twonky を知ったのも本田さんがきっかけなので、ご本人から Twonky やホームネットワークに関するお話が聞けるというのは、貴重な体験でした。
その本田さんから、『GET FREEDOM/メディアを楽しむ自由をその手に』というタイトルで、問題提起的なスピーチを伺ったので、私なりの解釈を交えながらレポートしていきます。
「デジタルメディア楽しんでる??」・・・のっけから、大きな、だけどとても身近な問いかけ。
今や、動画も音楽も写真も、私たちが日常的に目や耳にするコンテンツは、ほとんどが当たり前のようにデジタル化されています。これによって高いクオリティのコンテンツを、地域や場所によらず誰でも楽しめるようになりました。この blog の読者層であれば、デジタルメディアやそれを表示/再生するデバイスのおかげで文化的に豊かな生活を送ることができている、という方は多いんじゃないでしょうか。もちろん、私もその一人です。
でも、「利便性」という観点では、アナログだった時代に比べて本当に便利になったのでしょうか?
例えば、(今回は DRM の話は本質ではありませんが)「iPod からウォークマンに買い換えたら、iTunes Store で購入した DRM つきの楽曲が転送できなくなった」。物理的に CD というメディアでの楽曲販売が主流だった時代であれば、どのお店で買った CD でもテープや MD、iPod どんなメディアにでもダビングができたはずです。
「ハイビジョンの動画ファイル、同じ『.avi』という拡張子なのに、この機器で片方は再生できるけど、もう一方は再生できない」。よくよく調べてみたら、コンテナフォーマット(ファイル形式)は同じ AVI だけど、コーデックが違う。コンテナとコーデックって何?
「『DLNA』『HDMI』『i.LINK』。違うメーカーの機器同士を繋いでみたけどなぜか認識しない」。業界標準の方式のはずじゃなかったの?
デジタルメディアやデジタル機器にまつわるこんな話は枚挙にいとまがありません。世間一般から見ればこの手の知識をかなり持っているほうだと思われる私でさえも、こういう部分で困ったことは数知れず。しかも、年々新しい規格やフォーマットは増える一方、常に勉強していなければついていけない世界でもあります。
ここ 10 年のテクノロジーの進歩により、デジタル化、ネットワーク化、ワイヤレス化により、10 年前では想像もできなかったほど便利になった反面、上記のように逆に不便になったこともたくさんあります。
そして、そういうことに詳しくない人にとっては、それらは「よくわからないもの」というイメージで定着してしまい、一方で詳しい人にとってはそれらの技術や知識は「当たり前」というギャップが広がっているのが残念ながら現状。詳しい人からすると当たり前すぎて、それが使いづらいことに気づいていない部分もあるはずです。
本田さん曰く、そういう認識の格差が拡がって、「終わってしまった」のが現在の DLNA ではないか、と。確かに、DLNA という規格が起ち上がって 6 年、実は多くの機器に DLNA 機能が標準搭載されるようになった反面、DLNA といえば「ああ、あの繋がらないやつね」とか「あのなんだかよくわからないけどめんどくさいやつ」とか「できれば避けて通りたいもの/なくても困らないし」みたいな認識が多くの人についてしまっているのは事実でしょう。そして、既についてしまったネガティブイメージを今から覆すのは、ゼロから築き上げるよりもむしろ難しかったりします。
このあたりの歴史をずっと追いかけてきて、ご自宅にもホームネットワーク環境を構築されている本田さんにズバリこう言われてしまうと、非常に重いものがありますね・・・。
でも、「デジタルメディアを自由に扱いたい」という欲求はきっと根源的にあって、本当はこの動画はテレビの大画面で観たい、この音楽はリビングのステレオで聴きたいけど、面倒だから/できないからネットワークに繋がっている PC やスマートフォンの画面や音質でガマンしてしまう、というのは誰もが一度は経験したことがあるはずです。
昔だったら、それは赤白黄色のケーブルで繋げばそれだけで(クオリティはさておき)映って音が出たものでしたが、それがデジタルとワイヤレスやネットワークに置き換わった瞬間、簡単にはできなくなりました。デジタルメディアもワイヤレスもネットワークも、目で見て物理的にわかる世界ではなくなったことが、大きな原因の一つでしょう。
でも「デジタル化、ネットワーク化で不便になった」で止まっていては進歩はありません。本来、アナログ時代よりも便利に、より豊かにしてくれるはずだったデジタル技術は、もう一度本来の役割を果たすべきです。
「クオリティの高いコンテンツや情報を、もっと簡単に、便利に、自由に扱いたい」。この欲求はこれからもきっと萎むことはないでしょう。デジタル化でクオリティや伝達のスピードが向上することで、むしろ従来以上にその欲求は強くなるはずです。
デジタルメディアを楽しむ自由をもう一度、この手に。
この話は DLNA に限ったことではなく、コンテンツの互換性だったり DRM だったり、様々な分野に言えることではありますが、少なくともホームネットワークに関して言えば、DLNA は技術として悪いものではなく、ちゃんと使いこなすことさえできれば非常に便利な規格。ただ、規格書の解釈の違いやメーカー側の事情などによって、使いこなすにはユーザー側の努力が必要だったり、結局同一メーカーの機器で揃えなくてはならなかったりするのが現状です。
でも、DLNA を使いこなす上で最もハードルになる機器ごとの特性の違いを柔軟に吸収し、またネットワーク内で分散しがちなコンテンツをまとめて見せてくれる仕組みがあれば、ユーザー側の負担は軽減され、ホームネットワークのあるべき姿である「誰でも簡単に扱える」という状態に一歩近づくのでは?という発想でおそらく作られたのが、Twonky というソフトウェア。
ここで、本田さんからの提案。
誰もがやりたいと思っていること(持っているいくつものデジタル機器を繋いで、自由にデジタルメディアを楽しむこと)を、シンプルに、当たり前のように実現できる未来。特別な知識やスキルを持っていなくても、それができる世界。それはハードウェアやソフトウェア、コンテンツの提供側だけではなく、もしかしたらこうやって blog でそれらの技術に言及する我々の意識も変えていく必要があるのかもしれません。
Twonky はまだまだ起ち上がったばかりのソフトウェアで、外野的な立場から各機器間の接続を仲介する、無名のソリューションかもしれません。でも、そういう小さなものであっても、それによっていろいろな機器が一度繋がり始めれば、世の中が変わってくるはず。全てのデジタルデバイスが対等な立場で繋がりあって、全てのデジタルメディアが普通に再生できるようになれば・・・今度こそ、私たちが思い描いていたような未来がやってくるかもしれません。
Twonky が将来的にそのような「誰でも当たり前に使える」世界を目指しているのであれば、私も誰にでも理解できるような表現を心がけてみようと思います。私は基本的に文章がクドいのでどこまで簡単にできるか分かりませんが(笑)、Twonky を自宅の環境で試してみた暁には、そういった観点で使用感をまとめてみるつもりです。
コメント
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