久しぶりにオールドレンズ本を買いました。最近は本で読むよりも気になった方向のレンズ群について Web で自分で調べたり、実際に店頭に行って手に取ってみたり、と自ら沼の中を突き進んでいくほうが楽しいんですが、この本は今まであまり書籍で取り上げられてこなかったオールドレンズについて触れられているようだったので。
今まであったオールドレンズ本の多くが各マウントのレンズを 1~2 本紹介する程度でどちらかというと間口の広さを重視した内容だったのに対して、この本はどちらかというと深い方向、例えば他のオールドレンズ本にはないほど多くのライツ、あるいはキヤノンでも Serenar だったり、ミノルタではなく千代田光学時代の SUPER ROKKOR だったり、本当の意味での「オールドレンズ」が多く紹介されています。これに比べたら YASHICA/CONTAX なんて全然現代のレンズですよ、と言いたくなってくるほど。
この書籍の元ネタは玄光社の『フォトテクニック デジタル』誌における同名の連載で、登場する機材(ボディ)にはちょっと旧いものもあります。また、単行本のために吟味されたレンズチョイスではないためか、レンズ選びにまつわる失敗談も多く、そういう点ではこれからオールドレンズの深い沼に足を踏み入れようとする人には注意点が分かって参考になる反面、純粋にそのオールドレンズの実力を知りたいを思っている人には向かないかもしれません(まあ、オールドレンズである時点で個体差は少なからず存在するもので、真の実力値というのは定義しづらいのも事実ですが)。
個人的には、今まであまり深掘りしてこなかった方面のオールドレンズに関する情報がいろいろ得られたのが良かったいっぽうで、レンズの評価に使われる語彙が乏しく、「空気感まで写す」みたいな表現が多用されすぎていたのがイマイチ。「レンズの味」とか「空気感」と言ってしまうと、結局主観的に好みかどうか(そこには書き手がそのレンズに払った対価に対して自己肯定したいというバイアスも含まれる)に収斂してしまって客観的な分析ができなくなってしまうので、オールドレンズ選びの参考にしたい人向けの読み物としてはどうかなあ、と思うわけです。ま、そもそもオールドレンズなんて現代的な解像力を求めて買うものじゃなし、そういう楽しみ方でいいんでしょ、という考えもアリですが。
ちなみに本書の内容は、抜粋バージョンが「Lite 版」として雑誌オンライン他で試し読みできるようになっているので、興味のある方はどうぞ。
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