正式発表から一週間近くが経過してすでに話題の旬を逃したと言っている方もいるようですが、密を避けるために先行展示にさえ制限がかかっている状況では口コミが広がりにくいという側面もあるのではないでしょうか。それを補うかのように各種媒体で情報が小出しにされてきている印象がありますが、個人的に注目したのはこの記事です。
解説:EOS R5・EOS R6で"最大8.0段"の手ブレ補正 – デジカメ Watch
ミラーレスカメラでは既にセンサシフト方式によるボディ内手ブレ補正は一般的な機能で、レンズとの協調動作で強力な手ブレ補正を実現している機種も珍しくありません。キヤノンは一眼レフ時代からレンズ内手ブレ補正にこだわってきたこともあり、ボディ内手ブレ補正においては後発どころか今回の EOS R5/R6 が初搭載だったりします。それがいきなりレンズ協調で「最大 8 段分」の手ブレ補正ですから驚きます。
8 段というと数字が大きすぎてピンと来ませんが、絞り値でいえば F1.4→F22 相当(F22 まで絞っても F1.4 と同じくらいブレにくい)、ISO 感度で言えば ISO100→ISO25600 相当(ISO25600 まで上げないとブレる明るさでも ISO100 で撮れる)、シャッタースピードなら 1/60→4 秒相当と考えるとその凄さが理解できます。実際の撮影時には手ブレだけでなく被写体ブレもあるし、撮影設定も一つではなく複数のパラメータを組み合わせて撮るとはいえ、手持ちでもスローシャッターを恐れずに使えることは設定の自由度が広がり、より表現の幅や歩留まりを向上させることに繋がります。
そういえばオリンパスも E-M1 Mark II で 5 秒手持ちが撮れるというのが以前話題になっていましたが、8 段分とどちらが凄いのか?と確認してみたところ、この後継である E-M1 Mark III で「最大 7.5 段分」と言っており、EOS R5/R6 はそれを上回ってきたことになります。というか後発である以上、フルサイズでオリンパス超えをターゲットにおいて開発してきたのではないでしょうか。
さらに驚かされるのが、「最大 8 段分」というのはよほど条件の良いレンズとの組み合わせに限定されるんだろうと思ったら、全体の半分以上のレンズで 8 段分の手ブレ補正が可能という点。今回同時発表された RF800mm/600mm F11 を除く全ての RF レンズでボディとレンズの協調動作に対応しており、手ブレ補正性能が劣るレンズでも 6 段分の補正が可能というから恐れ入ります。ひとつは RF マウントの口径の大きさによる(=センサシフト量が大きく取れる)ところもあるでしょうが、とにかく複雑そうなボディとレンズの協調動作をここまで作り込んだことに驚嘆するばかりです。あまりに複雑すぎて誤動作もあるんじゃないかと心配になるレベル(笑。最近ニコンもやらかしたところですからね…。
「協調制御により地球の自転影響によるコリオリ力も考慮して補正する」という話を読んだときには本当かよと思いましたが(笑)、さすがに 5 秒を超える手持ちが可能になってくると地球の自転に伴うブレも無視できなくなってくるということでしょうか。ボディ内のジャイロセンサ(もしかすると電子コンパスも入っている?)でカメラの向きや傾きを検出してコリオリ力の影響を推定する、という仕組みになっているんですかね。
近年はイメージセンサの高感度性能が上がってきたおかげで暗い場面では遠慮なく ISO 感度を上げて撮っちゃうことが普通になってきましたが、それでも ISO 感度は抑えめにしておくのに越したことはないから強力な手ブレ補正は歓迎だし、何より技術的に非常に興味深い。買うつもりはなくとも、やはり一度実機を触ってみたくなりますね。
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