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シグマの「三層イメージセンサー」開発状況

実地開催を断念してオンライン限定となった CP+ に合わせて、シグマがいくつかのプレスリリースを打っています。

シグマ、ミラーレスカメラ用レンズに「富士フイルムXマウント用」追加。APS-C用の3本 – デジカメ Watch

まずはミラーレス用レンズのフジ X マウント対応。当初のラインアップは以前からある 16/30/50mm F1.4 DC DN が発売されるのみですが、コンパクトな大口径標準ズームとして評価の高い 18-50mm F2.8 DC DN も X マウント化の予定があるようです。フジユーザーにはこのレンズこそ本命ではないでしょうか。

ライカ L・ソニー E・マイクロフォーサーズ以外のミラーレス用レンズマウントへの対応は長らく待望されてきましたが、まさか X マウントは予想していなかったので驚きました。商売を考えれば母数の多いキヤノン RF マウントを優先しそうなもの。でもそうしなかったのは、後発で複雑な RF マウントよりも比較的シンプルな X マウントのほうが対応しやすかったというところでしょうか。新しいボディがほぼ出てこなくなった APS-C 用にシグマが今さら 18-50mm F2.8 を出してきたのは、APS-C 専用フォーマットである X マウントへの対応を視野に入れたものだったのかもしれません。

シグマ、“3層イメージセンサー”の開発状況を公開。小サイズで試作中 – デジカメ Watch

それよりもいろいろ考えさせられたのがこちら。2020 年 2 月に開発の仕切り直しを発表し、2021 年 2 月には白紙撤回からの再開発を表明していたシグマの三層イメージセンサーに関する最新情報です。

このリリースによると当該センサーはシミュレーションによる評価(ステージ 1)を終えて小サイズのセンサーの試作とその評価段階(ステージ 2)に入っているとのこと。小サイズというのがコンデジサイズなのか APS-C サイズなのかは不明ながら、画素ピッチ自体は最終製品に相当するスペックで試作されています。これがうまくいけば実サイズによる試作(ステージ 3)に移行するわけですが、一般的に考えてステージ 2 までは主に狙った性能が出せるかの確認、ステージ 3 では主に量産性(歩留まり)の確認になるはずです。過去二回開発中止したセンサーがどの段階で断念したのかは不明ながら、おそらくステージ 2 または 3 とみて間違いないでしょう。Foveon センサーはかつて歩留まりの問題に直面し初代 SD1 の価格が 70 万円になっってしまった経緯もあるので、今回仮にステージ 2 をクリアしてもその先も簡単な道のりではないはずです。

半導体についてここまで詳らかな開発状況を公表するケースは聞いたことがなく驚きましたが、それよりも気になったのはプレスリリース中の表現。従来のリリースで使われていた「フルサイズ Foveon センサー」という語句は今回一切使用されず「3 層イメージセンサー」という表現に置き換えられている点と、「シグマ本社主導のもと国内の研究機関と連携して開発」という点。これまでであればシグマの 100% 子会社である米 Foveon 社が設計して外部ファウンドリ(半導体製造メーカー)に生産を委託する形をとっていたところ、全く異なる開発体制への転換がなされたようです。
Foveon の名称が使われていないのは、シグマが Foveon 社の設計に基づくセンサー製造は不可能と判断し、Foveon とは異なる技術を使って三層センサーを実用化しようとしていることを示唆しているものと推察されます。それが Foveon とはどう違うのかは判りませんが、おそらく真の Foveon とは言い難い構造だった Quattro 世代の設計をやめて本来の Foveon に近い設計を採用しようとしたが、それは Foveon 社ではなく外部研究機関の知見を組み込まなくては実現できなかった…ということのような気がします。

ここで気になるのがシグマが言及する「国内の研究機関」というのがどこか。国内でこの手の大型イメージセンサーを製造できそうなところというとソニーとキヤノンくらいしか思い浮かびませんが、半導体 IP だけ持っている企業や研究所と協業して製造は海外のファウンドリに投げるのかもしれません。あるいは L マウント繋がりでパナソニック(2019 年にイメージセンサー事業から撤退しているはずなのに、何故か昨年 8K 対応有機 CMOS センサーを発表していたりする。製造は手放したけどファブレスで設計だけは継続している?)だったりするのか…それはないか。
ごく個人的な妄想としては、ソニーかキヤノンとクロスライセンスで三層センサーを開発して、同じセンサーを搭載したカメラが L マウントと E or RF マウント双方から出てきてくれたりしたら興奮するところですが、それもないか(笑。

このステージ 2 の開発がうまくいったとして、ステージ 3 のセンサー開発とその先にあるカメラボディ開発のリードタイムを考えると、実際に商品として出てくるのは 2~3 年後というイメージでしょうか。気の長い話ですが、焦らずに続報を待ちましょうか。

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