先週末に Prime Video で配信開始された『仮面ライダー BLACK SUN』を視聴しました。
仮面ライダー BLACK SUN [Prime Video]
1987~1988 年にテレビ放送された『仮面ライダー BLACK』のリブート作品です。仮面ライダー 50 周年記念作品とのこと。
私の子ども時代は仮面ライダーの新作がほぼ作られていなかった空白期で、仮面ライダー BLACK が唯一リアルタイムでした。ただ当時私は断片的にしか見ていなかったためストーリーはほとんど覚えておらず、基本設定とライダーのデザイン、変身ポーズ、主題歌が記憶に残っている程度。それでも懐かしい作品のリブートな上に主演が西島秀俊・中村倫也ということで「これ本気のやつじゃん!」と興味を持ちました。
設定は原典のテレビシリーズから大きく変更されていて、人間社会の中に怪人が普通に共存しており、しかし人間から差別を受けている状況。主人公の二人(南光太郎=ブラックサンと秋月信彦=シャドームーン)も青年期ではなく幼少期に改造手術を受けたことになっています。そして秘密結社ゴルゴムは 1972 年に学生運動の一環として誕生し、その設立に光太郎と信彦も関わっていた、という。仮面ライダー 50 周年記念作品ということもあって、2022 年の現代と 1972 年の回想シーンを行ったり来たりしながら物語が進みます。切り替えが多いため序盤はついていくのがちょっと大変だったほど。本作のメインターゲットは私のような BLACK リアルタイム世代だと思いますが、学生運動とかあさま山荘事件を想起させる話は 1~2 世代ずれていてちょっとピンとこなかったですね。
本作の良いところは何よりも芝居と演出に尽きます。R18 指定なこともあって凄惨なシーンやグロテスクな映像も多いですが、脇役も含め実力派の俳優陣が揃っているだけあって芝居に重みとリアリティーがある。西島秀俊の芝居が良いのは言うまでもないですが、個人的には今まで優男的な役でしか見たことがなかった中村倫也の悪役ぶり(しかも嫌味がない)に感服しました。そして、何といっても変身アクション。序盤は二人とも殿様飛蝗怪人(バッタ怪人)として活動していてなかなか仮面ライダーになってくれないのですが、中盤でついに変身ポーズを披露してライダーになったときには心の中でガッツポーズですよ。焦らされた分、ちゃんとオリジナルを踏襲して「許さん!……変・身!!」とやってくれた瞬間の快感といったらありません。対するシャドームーンの変身シーンもカッコ良すぎる。同世代の人であればこれを見るためだけに本作を見る価値があると言えます(笑
逆に残念だったのは脚本。全般的に悪くはなかったのですが、作り手のイデオロギーが前面に出ているように感じて少し引いてしまいました。社会風刺を舞台装置としてシナリオに組み込むのは別にいいんだけど、そこに特定の個人や団体への嫌悪をあからさまに入れられると白ける。途中まではまあこれくらいならアリかな…と思いながら観ていたんですが、終盤からラストにかけての展開は許容範囲を超えていると感じました。それにあのテロを容認するような最後はちょっとどうなのか。
というわけで途中までは良かったのに最後で台無しにされてしまった感が強いのですが、それでもあの「許さん!」を全力でやってくれただけで許そう(笑。変身シーンと格闘シーンだけダイジェストにしてもう一度観たいくらいです。
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