今年『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』の次くらいに楽しみにしていた映画を観に行ってきました。
当然 IMAX で鑑賞すべく品川へ。
前作の公開から 35 年、舞台設定としてはオリジナルの 30 年後を描いた作品です。これまで関連作品が全く出てこなかったのに何故今になって続編なのかとか、原作のない完全新作というあたりに少し不安もありましたが、ハリソン・フォードがデッカード役で再登場するというなら観るしかないじゃないですか!
映像はイントロからオリジナルへのオマージュ的カットが多用され、名作『ブレードランナー』の正統なる続編であることを自己主張しています。確かに映像のスケールは大きいし、アメリカとアジアをミックスしたような未来都市とか、ずっと雨が降っているウェットな世界観とか、間違いなく『ブレードランナー』なんですが、何かが少しずつ違う。あの許諾を取ったかも定かでない「強力わかもと」のネオンではなく、ちゃんとプレイスメント(創作映像の中に製品やブランドロゴを露出させること)して映像が作り込まれているし、オリジナルのカオスさはなりを潜めています。なんというか、続編というよりはよくできた二次創作的な何かを感じます。
が、劇中にオリジナルの作中のシーンが(音声のみ)出てきて、当時のキーマンの一人であるガフが再登場したあたりからその「ズレ」が少しずつ重なってきて、最終的にデッカードが画面に現れた時点で映像が完全に『ブレードランナー』の世界観と一致しました。
作品のテーマは「人間らしさとは何か」「本物と偽物を分けるものは何か」。これはオリジナルの『ブレードランナー』はもちろんのこと、全ての原作となった小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』から一貫した問いです。元になった二つは人間の視点から「人間らしさとは何か」を問うた作品であったのに対して、本作では最初から主人公「K」がレプリカント(アンドロイド)であることが明示されており、人間のフェイクであるレプリカントの視点から「人間らしさとは何か」に向き合った作品であると言えます。レプリカントの「繁殖」という可能性に対して、人間とレプリカントがそれぞれにそれを手に入れようとする理由が正反対であることがまた興味深い。そして「K」が最後に手に入れた「人間らしさ」をラストでそう表現しますか…という切なさがあります。
面白かった、んだけど、でもどこかちょっと冗長だったような、その割に投げっぱなしの伏線も多いような、終映後の気分としてはそういう中途半端さが残ったのも事実。「K」が自分の存在意義を見出す物語としては見事に完結しているものの、それ以外のものは全て世界観や主人公の物語を動かすための舞台装置としてだけ描かれているようで、消化不良感があります。ラストシーンは結局「K」の存在意義以外については何も解決していないし、この話の続きがどうなったのかすごく気になる(さらなる続編に繋げる意図なのかもしれませんが)。
冗長さに関しては、監督が『メッセージ』のドゥニ・ヴィルヌーヴという時点でそういう作風なのかもしれません。『メッセージ』は丁寧だったけどちょっと長さを感じたのも事実で、『ブレードランナー 2049』に至っては上映時間が三時間に迫る大作。観ている間も「もうちょっとテンポ良くできたんじゃない?」と感じてしまったので、オリジナルのファンでなければ途中で疲れてしまう可能性もあります。正直ハリソン・フォードにアクションさせるためだけにあのシーン作ったでしょ?とは思いました…。
テンポの良さと、ストーリーとテーマのシンクロがもうちょっとあれば文句なかったんだけどなあ。面白かったし、名作の続編としては期待通りよくできた映画ではあると思いますが、あくまでファンのための続編だと感じました。
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