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ラストマイル @ユナイテッドシネマみなとみらい

ネタバレを食らいたくなかったので公開初日に観に行きました。

ラストマイル

ラストマイル

大ヒットドラマ『アンナチュラル』『MIU404』の野木亜紀子チームによる劇場版ミステリーです。両ドラマと世界観を共有する作品ということでアンナチュラルは観たけど MIU404 は観ていなかった私は映画に向けて配信で予習したほど楽しみにしていました。
両ドラマは一話完結を基本としつつ全話を通して大きな事件を解明していくスタイルでしたが、本作は二時間超の映画ということで最初から一本の大きなテーマを扱っています。それだけに映画らしく見応えのある内容でした。

「ラストマイル」とは物流拠点から配達先までの最終経路のこと。時事問題を巧みに物語に取り入れるのが野木脚本の持ち味の一つですが、今回は巷で言われる「物流の 2025 年問題」を事件に絡めてきました。外資系の巨大ショッピングサイトとその物流を支える流通業大手、考えるまでもなく Amazon とヤマト運輸がモチーフ。
ショッピングサイト「デイリーファスト」がブラックフライデーセールのタイミングに合わせて国内発売する話題のスマホ「デイリーフォン」。その発売日に商品を受け取った顧客宅で爆発が発生し、被害者は死亡。捜査の結果届けられた荷物がその火元と判明する。ほどなくしてデイリーファストからの他の配達先でも爆発が相次ぎ、警察によって事件と断定される。デイリーファスト社で事件の対処にあたるのは着任したばかりのセンター長・舟渡エレナ(満島ひかり)とその部下であるマネジャー・梨本孔(岡田将生)。カスタマーオリエンテッドを謳いながら利潤を追求するデイリーファスト社、大量の荷物に現場が疲弊しながらもデイリーファスト社の要求を呑まざるを得ない羊急便社。もはや止めることのできないブラックフライデーセール・ウィーク、億単位で在庫・流通する商品のどれに、またセキュリティーが万全なはずの物流拠点のどこで爆弾が仕込まれたかも分からない中、果たして犯人を突き止めて事件を収拾することができるのか…という緊迫のストーリー。

私は当初、本作はいわゆる「ハウダニット」(犯人が序盤に明示された上で、その動機や犯行のトリックを解明していく構造)形式のミステリーかと思っていました。しかしそれは完全にミスリードで、実際は最初からオーソドックスな「フーダニット」(誰が犯人か)タイプでした。他にも巧妙に仕組まれたミスリードは複数にわたり、私はいくつかは気づくことができたものの、いくつかは完全にしてやられました。明らかに伏線と分かる台詞や演出がありつつ、それをここで回収するのか!という驚きが多数。静かなミステリーだったアンナチュラルとも熱血バディものだった MIU404 とも違うハラハラ感。ネタバレになるから詳しくは書きませんが、ミステリーでここまで面白いと思えたのは久しぶりでした。

アンナチュラル組と MIU404 組の登場の仕方も見事でした。メインキャストにガッツリ絡む感じではなく、要所要所で推理のヒントとなる捜査/調査結果を提示する役割。しかも序盤から登場するのはそれぞれのサブキャストで、メインキャストはジワジワと盛り上げた末に「待ってました!」というタイミングで出てくる。MIU404 組が登場する直前に伊吹藍のテーマが流れてきた瞬間には鳥肌立ちましたね。そしてアンナチュラル組は司法解剖医だから現在進行中の事件に関わるのは難しいよなあ…と思っていたら、そういう使い方がありましたか。
またドラマからの時間経過を示すように何人かのキャラクターが新天地で活躍していたり、かつて犯人だった人物が今は更生していたりするシーンが見られたのも良かった。まさか彼がその後四機捜で陣馬さんとバディを組むとはね…。旧作との繋がりを台詞で直接説明することはほとんどありませんでしたが、映像や演出で余白を想像させてくれる部分が多くあり、目頭が熱くなりました。

野木ミステリーは人間が組織や社会になったときの非情さを巧妙に描いたものが多いですが、本作は刑事や解剖医のような捜査/調査をする人が主人公ではないからこそ群像劇として描かれ、その社会的テーマがより克明に表現されていたように感じました。過去二作にもあった被害者の想いや犯人の苦悩が本作でも描写されていたことで、社会問題が共感できる自分ゴトとして降りてくるからこそ泣ける。また自称日本の製造業応援し隊隊員の私としては、海外製品にコスト競争で負けた日本メーカーの製品が最後の最後で何かを救ったシーンにはグッときてしまいました。あんな伏線、確かにあったのは憶えてたけどこんな使い方するのかよ!

今はいろんな人の感想や考察を読みあさっています。あのシーンってそういう意味だったの!という驚きもいくつかあったので、頭を整理してもう一度映画館に足を運びたいほど。それくらい面白い映画でした。

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