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すずめの戸締まり [IMAX] @T・ジョイ PRINCE 品川

IMAX で観てきました。新海誠作品は画質的に IMAX よりもドルビーシネマのほうが相性良いと思うんですがやってないので…。

すずめの戸締まり

すずめの戸締まり

宮崎に住む普通の女子高生・すずめがある日登校中に出会ったイケメンと、その少し後に発見した不思議な「扉」をきっかけに文字通り「日本を揺るがす」大事件に巻き込まれ、各地に現れる扉を閉じるために旅をする物語。
私は新海誠ってあまり好きになれないのですが、『君の名は。』『天気の子』同様に公開されたらとりあえず観ておくかくらいの感覚で鑑賞しました。

本作を語るにはネタバレを避けることが非常に難しいので、見に行く予定があって未見の方はこの時点でこのページを閉じることを推奨します。

映像はいつも通り綺麗だし、女子高生すずめの成長を描いたロードムービーとしては普通に楽しめました。いろいろありながらも行きずりの人々との交流を通じて絆が生まれ、それによってすずめが強さを手に入れていく展開は観ていて楽しく、温かい気持ちになれます。登場人物に悪人はいないし、みんな個性的で魅力的。ちょっとした映像の端々にフェチシズムは感じるけど(笑)過去の新海作品に感じた独りよがりな感覚は薄いし、良作だと思いました。途中までは。

■新海誠作品と神道的なもの、そして災害
私は『君の名は。』以前の新海作品もいくつか見ているんですがあまりに合わなさすぎて記憶に残っていないので『君の名は。』以降の話しかできないのですが、少なくとも『君の名は。』『天気の子』とこの『すずめの戸締まり』には共通して神道的なモチーフと日本を襲う厄災が描かれています。『君の名は。』のヒロイン三葉は災害から村を救うための力を授かった巫女だし、『天気の子』のヒロイン陽菜も東京を水没の未来から救う人身御供でした。本作にも日本を厄災から救う人柱としての役割が登場するし、そもそもメインキャラの二人の苗字「岩戸」「宗像」って神社由来ですからね。『君の名は。』は三葉が自らの力を使って村を救う話、『天気の子』は世の中のための人身御供になることをやめて世界なんかどうだっていいから自分たちの幸せを掴む話、じゃあ今回は?となるわけです。
ちなみに厄災は八百万の神が起こすもの、それを抑えるために日本人は太古から様々な儀式や封印を行ってきて、現代にも残るあの史跡は実は封印のひとつだった…という伝奇的なストーリーは日本を舞台としたファンタジーでは昔からよくある手法だったりします(例えば CLAMP の『X』とか)。

■今、こういう形で災害を描く意味
日本列島の下には荒ぶる神のごときものがいて、それが「扉」を使って表層に出てくるときに災害という現象として現れる、そしてその「扉」は人が放棄した廃墟に出現する、という設定は最初は面白いと思いました。すずめが住む宮崎、次の愛媛、まではまあ違和感なく見られたのですが、その次の舞台が神戸だったあたりから嫌な予感が。今の日本で災害というと 11 年前のあれを思い出すのが普通でしょうが、あれを真正面から題材に組み込んでくるとは思っていませんでした。近年の映画などのフィクションではあの災害を直接的に描くのではなく何か別のメタファーとして表現することが多く、またそれで十分だったようにも思いますが、設定上も映像でもここまで直接的に描くとは。
私はあの日は東京にいたので被害を受けたうちには入りませんが、あのときの恐怖とかそれからしばらく消えなかった不安はまだ残っています。今でも大きめな揺れがあると同様の不安を感じるし、緊急地震速報のアラート音は心臓に悪い。だからあの終盤の描写は直視できませんでした。この題材をこの時点でここまで直接的に描写する必要があったのか?は少し疑問ですし、さらに言えば物語を動かすための舞台装置として使ってほしくはなかった。だって廃墟があったってなくたって大地震は起きるでしょう?人間が場所を見捨てた結果なんだ、という描き方には違和感しかなかったです。人間が放棄した場所は急速に自然に侵食されるのは事実だけど。

ただ、本作のメインターゲットであろう中高生世代なら違うかもしれません。私の長女はすずめと同じ高校二年生ですが、震災当時はまだ 5 歳だからリアリティを伴う恐怖の記憶としては残っていません。そういう世代が見たら伝奇ものとして普通に楽しめるのかもしれません。私も大正の関東大震災が封印が解けた結果として起きたという話だけであれば「ああ、そういうお話なのね」と納得できていたと思います。
本作で本当に描きたかったのは、おそらくラストのように「災害で大切なものを失っても、生きてさえいれば新しく大切なものを見つけられる」というメッセージのはずです。それ自体の描き方は良かったのですが、その前の描写で私はダメになってしまいました。

■人身御供について
本作では過去に作とは違って「巫女」ではない存在が人身御供の役割を持っています。覚悟のあるなしに関わらず押しつけられるそれはまさに生贄そのもの。途中、死ぬことも生贄になることさえも怖くないというすずめの態度はいろいろと重いものを背負った人生ゆえの諦めだったのかもしれません。でも最終的にはすずめの行動によって別の二人(話の流れからいって元々は人間だった時代もあるのだろうと想像しています)が生贄になるわけですが、その過程の説明があまりに雑でご都合主義的に見えてしまいました。だってアイツ「またいっぱい人が死ぬね」と楽しそうに言ってたじゃん。

■本作の真のヒロインは
本作の真のヒロイン(?)というか、愛されるべきキャラクターは宗像草太の親友・芹澤ではないでしょうか。基本的にいい人しか登場しない作品の中でも最高クラスにイイ奴。後半に颯爽と登場して、見た目とは真逆な言動で視聴者の心を鷲掴みにしていきました。そしてエンドクレジットを見てさらに驚き。神木隆之介、こんな役もできたのか。

というわけで、基本的には面白かったんですが心に強い引っかかりができて素直には楽しめない部分が多い作品でした。事前の期待値よりはずっと良かったけど、二回目はちょっと観れないと思います。

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