Netflix で配信開始されたガンダム新作を視聴しました。
全編を Unreal Engine 5 で制作された CG アニメーション作品です。舞台は一年戦争末期の地球、連邦軍が実戦投入したガンダムによって劣勢に追いやられるジオン地上軍視点で描かれています。まあガンダムといってもアムロ・レイが搭乗する RX-78-2 ではなく派生機である「ガンダム EX」ですが。
一年戦争末期の地上戦、かつジオン兵視点というと『08MS 小隊』と『0080 ポケット中の戦争』を想起しますが、実際その二作品との共通点も多く、また 3DCG で表現された MS が見所という点では『MS IGLOO』っぽさを感じるところでもあります(クオリティーが段違いですが)。
なお本作で猛威を振るうガンダム EX、ティザー映像の時点で 08MS に登場する陸戦型ガンダム Ez8(RX-79[G]Ez-8)に似ていると思っていたらガンダム EX の型式番号は RX-78[G]E、つまり陸戦型ガンダムの派生型ということで同じ系譜にあるようですね。時系列的にはガンダム EX のパーツまたは設計データが Ez8 に流用されたという裏設定があったりするのかもしれません。
全体的なスタイリングはセルアニメ系のガンダムとは大きく違いますが、そこは映像の作風に合わせたリアル寄りのアレンジと解釈すれば何とか許容範囲。とはいえロボットというよりはガッシリしたアスリート体型という点ではエクシア~バルバトス~エアリアルといった近年のガンダムのデザイントレンドに沿っているものの、イメージがちょっと有機的すぎて気持ち悪さが先に立ってしまいました。演出も相まってターミネーターっぽいというか。まあ「白い悪魔」と呼ばれたガンダムの恐ろしさを表現するという意味ではうまくいっていると思いますが。造形も動きも従来のモビルスーツの延長線上にあるザクやグフに対してガンダム世界の MS としては異形かつ予想外の挙動をするガンダム EX、という対比もよくできています。
モビルスーツのアクションはよくできている一方で残念だったのは人物の CG 描写。頑張ってるのはわかるけどクオリティーはファイナルファンタジーのゲーム内 CG の方がよくできてるのでは…というのが正直な感想です。まあ本作は人間同士のドラマよりもモビルスーツ戦の描写が主役だとは思いますが。でも大塚芳忠ボイス(本作では別のキャラクターだけど『Ζ』のヤザン・ゲーブルの声)が聞こえてきた瞬間にこれはやっぱりガンダムだ、という気持ちになりました(笑。
シナリオ的にはガンダム EX に執拗に狙われながらも撤退戦を戦うジオン兵がずっと描かれていて、ヒリヒリする緊張感はあっても大きなストーリーがないから完走した達成感みたいなものは特にありません。むしろ「アニメで見たことがあるシーンがリアル寄りの CG で表現されていることに注目する作品」という印象です。ストーリー上の最大の見どころはガンダム EX との決着がどういう形でつくのかという点ですが、小説版のガンダム G-3 の最期と同じような展開になったのは意外だったけどある意味それもガンダムらしいというか。
Netflix で世界配信という触れ込みのガンダム作品ではありますが、むしろ昔からのコアファンのための作品という印象です。ストーリーではなく映像を楽しみたい人向けですね。ちなみに 5.1ch 音声で配信されているのでマルチチャンネル環境で聴くと戦場のさなかにいるような臨場感が楽しめます。
個人的にはこの作品そのものの良し悪しというよりは本作で培われた映像技術が他のガンダム作品にフィードバックされることを期待しています。
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