お正月休みを利用して、昨秋に配信開始されていた『キャシアン・アンドー』のドラマを視聴しました。
スター・ウォーズシリーズのスピンオフ『ローグ・ワン』の前日譚にあたるストーリーのドラマ化です。ローグ・ワンでは反乱軍がデス・スターの設計図を入手してレイア姫に手渡すまでの物語が映画化されましたが、本作ではローグ・ワンの主人公の一人キャシアン・アンドーがいかにして反乱軍に加入したかを描いています。ジェダイもフォースもほぼ登場しなかった物語の派生作品を再びジェダイでないキャラクターを軸に描くというのはまたマニアックな…と思いつつ、ローグ・ワンが大好きだった私は密かに楽しみにしていました。そういう意味ではコアファン向けの映像作品ではあります。
本作の主人公キャシアン・アンドー。反乱軍加入前は帝国軍のメカパーツを盗んで転売することで生計を立てていました。しかし生き別れの妹を探して立ち寄った惑星でいざこざに巻き込まれ、保安官二人を殺してしまったことから彼の人生が変わっていきます。
このキャシアンがブラスターや体術を駆使したアクションでガンガン見せてくれる話かと思っていたら全然違って、序盤は彼の生い立ちや人となりをじっくり説明することに終始。最初の 2 話くらいは「これはちょっとハズレだったか…?」と思いました。
『シスの復讐』から『ローグ・ワン』を繋ぐ物語ということで、他作品に登場したキャラクターもちょっとだけ登場します。まず反乱軍結成の物語を描く上で欠かせないのがモン・モスマ。ベイル・オーガナ(レイアの義父)の盟友であり最終的に反乱軍の指導者となる女傑ですが、本作では政治的な動きを大いに見せてくれて今までのモン・モスマの印象が変わりました。従来は正義感が強くて毅然とした人物だけどインパクトには欠けるキャラクターという印象がありましたが、本作では清濁併せ呑める政治家としての彼女の活動によって反乱軍の基礎が作られていった(であろう)ことが分かります。まあ Season 1 では途中までしか語られていないので、おそらくそうなるだろうという話ですが。
そして『ローグ・ワン』で反乱軍に協力することになる組織「パルチザン」を率いるソウ・ゲレラも登場。帝国に対する反乱分子の中では過激派で人のことを信用しない性格だけど案外情に厚い、という印象はローグ・ワンと同じ。今回は目立った活躍はありませんでしたが Season 2 で見せ場があるか。またローグ・ワンの主人公ジン・アーソがかつてこのソウ・ゲレラの組織にいた設定になっているから Season 2 で何かしらの絡みがあるかと思ったのですが、ジン・アーソがパルチザンを抜けたのは Episode IV の六年前ということで直接的には絡まなさそうですね(本作は Episode IV の五年前の話)。
物語のカギを握るのがこのルーセン・レイエル。表向きは古物商を装いながら、その実はモン・モスマとともに反乱軍の組織化を進める活動家。キャシアンも彼によって能力を見出され、反乱軍への協力を示唆されます。今までシリーズの表舞台に出てきませんでしたが、ときにはモン・モスマさえも手駒の一つとして使う彼の狡猾さがあったからこそ反乱軍が組織できたという説得力のあるキャラクターです。逆に言えば、モン・モスマやベイル・オーガナにはできない汚れ役が反乱軍には必要だったということでもあります。
本作は、反乱軍といえども清廉潔白ではなく裏では後ろ暗い仕事もしていたし、一方で帝国軍にも正義感があり優秀なスタッフはいたが、事なかれ主義や足の引っ張り合い――いわゆる「大企業病」的なやつですね――によって彼らにとっての脅威の発見が遅れ、それが反乱軍に付け入る隙を与えたことが丁寧に描かれています。アクションシーンが少なくて正直食い足りない部分はあるけど、帝国軍と反乱軍を取り巻く政治劇として見ると非常に見応えがありました。そういう様々な動きが最終的に大きなうねりとなって『ローグ・ワン』へと繋がっていくんだろうなあ…というのを予感させる Season 1 のラストでした。
ライトセーバーもフォースも一切出てこないから人を選ぶ作品ではありますが、いい大人になった古参ファンなら楽しめるのではないでしょうか。配信時期未定ながら Season 2 も今から楽しみにしています。でもその前に 3 月から配信予定のマンダロリアンの Season 3 ですね。
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