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地獄の警備員 [Prime Video]

以前から一度観ておきたいと思っていた映画を鑑賞しました。

地獄の警備員

地獄の警備員

Prime Video や Netflix の見放題にはなかったので、Prime Video のデジタルレンタルで視聴。

俳優・松重豊の映画初出演作です。1992 年の作品ということは、松重さんが蜷川スタジオを出奔して建設現場で働いた(ランドマークタワーの建設にも関わったとか)後に俳優業に復帰してすぐの頃じゃないですか。今や映画にドラマ、ナレーションに CM と引っ張りだこな松重さんのキャリアの転換点となった作品と言えるのかもしれません。

バブル期の日本。美術館の学芸員だった成島秋子が美術品売買を始めたばかりの商社に転職し、着任するところから物語は始まります。その会社にはかつて殺人で逮捕されつつも精神鑑定の結果釈放された元力士・富士丸が新入り警備員として働いており、成島はひょんなことから富士丸に見初められ(?)ます。その後、成島の会社で続けざまに起こる不可解な殺人事件。ある日、成島が同僚とともに残業しているところで、一人また一人と富士丸の毒牙にかかり…というホラー映画です。
バブル期といえば日本人の平均身長が今ほどは高くなかった時代、190cm(当時)の松重さんは異様なほどの巨漢。ロングコートに官帽、ロングブーツというシルエットが『帝都物語』の加藤保憲を彷彿とさせ、今よりも目つきが鋭いこともあって本当に怖い。近年のコミカルなおじさんのイメージが強いせいで「画面に出てきてもそんなに怖く感じないだろう」という予想は完全に裏切られ、まるで日本版ジェイソンかフレディか、と言いたくなるような恐ろしさがあります。

ジャンルとしては典型的なバイオレンスホラーで、ストーリーなんてあってないようなもの。オフィスビルという密室の中を迫り来る恐怖をひたすらに描いています。雰囲気としては B 級ホラー映画なんだけど、序盤の B 級感からジワジワとホラー成分が増えていって、後半はとにかく恐怖。富士丸の内面を明かさず純粋な殺人鬼として描いており、「なぜ、何のために殺すのか」が理解できないからさらに怖い。殺し方も単に殴ったり斬ったりするスプラッターではなく、手法のバリエーションが広くそして執拗な殺し方が恐怖をあおってくる。アメリカの単純なバイオレンスホラーとはひと味違う、ウエットな怖さに日本らしさを感じます。

一方で脇を固める登場人物は神経質な中間管理職の大杉漣、チンケな悪党役の内藤剛志、得体の知れないプレイボーイ的な長谷川初範、という具合に名優たちがまるで当て書きかのようなハマリ役で出演。
また陰影の演出やカメラワークが凝っていて、単なる B 級ホラーと馬鹿にできない映像作品としての強さを感じます。私はバイオレンスやホラー系映画はあまり得意ではないのですが、それでも引き込まれるものがありました。

この映画から 20 年脇役一筋でやってきて、初の主演映像作品が『孤独のグルメ』なのだから人生わからないものです。
松重さんは『孤独のグルメ』以前は映画でもドラマでも大抵ヤクザか警察役というイメージでしたが、私が知る限りでは「怖いけどどこか人情味を感じる」という役柄が多かったように思います。それが原点と言えるような作品でここまで尖った役を演じていたとは、改めて目から鱗が落ちる思いでした。芝居でも音楽でも芸能の世界は一つ当たったら似たようなものばかり求められてしまうのが常ですが、個人的にはむしろ振れ幅の大きさを見られる方が嬉しかったりします。

けっこうガチで怖いから何度も繰り返し観たい映画ではありませんが、一度ちゃんと観られて良かったー。

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