「ここでは青空がおかずだ」
西武池袋本店、9F 空中庭園にある讃岐うどんの店「かるかや」が 6 月末をもって閉店することが発表されました。漫画『孤独のグルメ』にも登場したお店です。
池袋西武、私が初めて来たのは 40 年前。埼玉に単身赴任していた父に会うために家族で上京したときに連れてきてもらったのが最初でした。玩具売場で電車のおもちゃを買ってもらったのを憶えています。だから自分にとって「東京の立派なデパート」の原体験はここ。
近年は低層階にハイブランドが幅をきかせるようになってからすっかり敷居の高くなり、池袋に来ても西武は素通りする場所という認識でした。しかしこのたび 2025 年のヨドバシカメラ入居に向けた改装でテナントの多くが入れ替わり、その一環でかるかやも閉店するとのこと。
ここの屋上に来たのは 11 年ぶり。さすがにいろいろ変わっており、かるかやも店構えが若干変わりつつも営業していました。
壁面緑化に埋もれるような形になっていたから一瞬分かりませんでしたが、確かに以前からこの場所にあった。
二週間ほど前から「閉店するらしい」という噂が流れ始めてから閉店を惜しむお客さんが増え始めていたようですが、昨日池袋西武の Web サイトに正式に閉店告知が出てさらに増えたらしい。
増えたどころか大行列です。私は 11:50 頃に現着したのですが、その時点で既に百人前後(!)の行列ができていました。
小さなカウンターで一人一人注文~会計~商品提供としているから時間がかかる上、お客さんが多すぎて食器が足りなくなるという状況も重なってさあ大変。
しかも 12:10 頃にはうどんが品切れでこれ以上並べない、とのこと。
既に並んでいる人の分まではあるとのことでしたが、ちょっとでも到着が遅れていたら危なかった…。
そんなわけで並んで待つこと 50 分。ようやく自分の順番が回ってきました。
しかしよく考えると 100 人の行列を 50 分で回したということは一人あたり 30 秒?驚異的な回転率と言わざるを得ません。
店頭には改めて閉店のお知らせが。
今回の閉店の報を聞くまで知らなかったのですが、ここの地下食品売場にある「かるかや」で自家製麺(生麺)を販売していて、屋上ではそれを調理して出していたんですね。で、地下のお店の閉店に伴ってうどんが調達できなくなるから屋上も閉店、という。
メニューは 11 年前から値段は変わったけど内容は変わらないようです。
前回来たときにはゴローと同じく温かい(月見)おろしうどんを頼んだけど、今回は気温の高い中で 50 分も待ったから冷たいうどんが食べたい気分。
スペシャルメニュー的なのもあり。いろんなトッピングがのっかったのも、梅おろしもおいしそうだなあ。
でも自分的には、ここはごくシンプルなので攻めたい。
ということで注文したのはつけうどん(冷)+大根おろしトッピング。
つけ汁には生卵も入っているし、結果的にゴローが食べた月見おろしうどんのつけ麺版みたいな感じになっちゃいました。
店舗の近くに蓮の花のプールがあり、その縁で食べられるようになっていました。
これはいい、身も心も涼しくなれそうだ。ここにしよう。
太さの揃っていない、いかにも手打ち感あるうどん。この素朴さが良いじゃないですか。
昭和 43 年からやっているということは 55 年にわたってこのうどんを作り続けてきたってことですよね。池袋西武が「誰もが利用できる百貨店」から「高級ブランドを売る店」になってもなお変わらずにやってきたこの店が、ついになくなるのかあ…。
讃岐うどんらしい強めの歯ごたえが良い。
この麺なら、出汁のあっさりした汁うどんよりもつけうどんの方が味濃いめで相性が良い気がする。
つけうどんにして正解、冷たい麺が身体を中から冷やしてくれるのもまたいいじゃないか。
やっぱり、ここでは青空がおかずだ。
6 月末閉店ということだけどこれから梅雨を迎える季節、ここで青空のもとでうどんを啜れる日はあとどれくらい残っているだろうか。
昭和の頃にはミニ遊園地があった空中庭園も、時代の変化とともに遊具は撤去され、今はこじゃれた「食と緑の空中庭園」と呼ばれる場になっています。でも、時代が変われどこういう場所で子どもたちがはしゃぐのは変わんないなあ。
ヨドバシ化されたらかるかやだけでなく空中庭園自体もなくなっちゃうんだろうか。ヨドバシって効率重視でこういう方面には興味がなさそうだからなあ。
ともあれ、最後に青空の下でこのうどんを食べられて良かったです。
ごちそうさまでした。そして長い間お疲れさまでした。
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