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第 34 回 ファミリークラシックコンサート ~ドラゴンクエストの世界~

春にオクトラのオーケストラコンサートに行ったら今度はドラクエのオケコンも聴きたくなってしまったので、チケットを取って池袋の東京芸術劇場まで行ってきました。

第34回ファミリークラシックコンサート ~ドラゴンクエストの世界~ 交響組曲「ドラゴンクエストⅢ」そして伝説へ…

東京芸術劇場

ドラクエのオーケストラコンサートは実はけっこうな頻度で開催されています。定期的に開催しているのは以下の三団体。

  • NHK 交響楽団
  • 言わずと知れた N 響。最初にドラクエのサントラとしての交響組曲をリリースしたのも N 響(I・II は小編成の「東京弦楽合奏団」名義)でした。私は I~V までカセットテープでめちゃくちゃ聴き込んでた。

  • 東京都交響楽団
  • 通称・都響。この「ファミリークラシックコンサート」はすぎやまこういち氏の事務所が主催し、氏の生前は指揮・すぎやまこういち、演奏・都響で長年ドラクエ各シリーズの組曲を上演していました。

  • 東京佼成ウインドオーケストラ
  • ウインドオーケストラ(吹奏楽団)なのでドラクエの楽曲の中から管楽器主体の楽曲と吹奏楽アレンジされた楽曲をセレクトして上演。I~III、IV~VI、VII~IX などシリーズセットでの上演が中心。

これ以外にも各地方の交響楽団によるコンサートなども頻繁に開催されていて、調べてみたところほぼ毎月のように日本のどこかでドラクエのオケコンが上演されているようです。

今回はその中でも「ドラクエコンサートの本家」と言える都響のファミリークラシックコンサートのチケットを取ることができました。演目は 11 月の HD-2D 版リメイク発売に合わせて『交響組曲「ドラゴンクエスト III」そして伝説へ…』。個人的にはドラクエの楽曲は III または IV が至高と思っているので、これが生演奏で聴けるならこれ以上の幸せはありません。テープがすり切れそうなほど聴いてた小中学校時代の自分に「35 年後に生で聴く機会がある」と教えてあげたい。

第 34 回 ファミリークラシックコンサート ~ドラゴンクエストの世界~

客層は小学生を含む親子連れからお年寄りまでまさに老若男女。ゲームが好きそうな人だけでなく吹奏楽経験者っぽい会話もあちこちから聞こえてきて、幅広い層から『III』の音楽が愛されていることが分かります。

プログラムは以下のとおり。アンコール曲以外は当日配布されたパンフレットに書かれていましたが、基本的には組曲なので CD(都響版)に収録されているとおりですね。

1 ロトのテーマ
当然この曲から始まるわけです。「あのイントロ」が生演奏で流れてきた瞬間に涙腺決壊。『ドラクエ I』の発売から 38 年のいろんな思いが駆け巡る。
2 まどろみの中で
SFC 版リメイクで追加された楽曲。オープニングで流れる曲ですが、この後に勇者が母親から「おきなさい わたしのかわいい ○○○○や。」と呼びかけられることがこのタイトルの由来でしょうね。
3 王宮のロンド
旅立ちの日、王様に会いに城に入った瞬間の優雅さとちょっとした緊張感を思い起こさせてくれる楽曲。私は「ロンド」や「メヌエット」(IV)といったクラシック音楽の典型的な構造はドラクエから学んだと言っても過言ではありません。
4 世界をまわる(街~ジパング~ピラミッド~村)
愉しげな『街』と長閑な『村』の間に挟まる『ジパング』と『ピラミッド』のギャップが素晴らしい。特に和楽器を一つも使っていないのに和を感じる『ジパング』、ファミコン音源よりも交響組曲で聴く方が感動があります。『ピラミッド』は聴くだけで黄金のツメを取った後に一歩ごとにモンスターに遭遇する緊張感を思い出す。
5 ローリング・ダイス
SFC 版のミニゲーム「すごろく」用に追加で作られた楽曲。だから『III』の他の楽曲と並べると少し浮いて聞こえますが、王宮のロンド~世界をまわる を聴いてから『冒険の旅』が始まる前の小休止、という感覚。
6 冒険の旅
プレイ中、最も長い時間聴いただろうフィールド曲。組曲だとメインテーマの前に壮大なイントロがつくのがいいんですよね。I・II のフィールド曲はどこか一人旅の寂しさ・心細さを感じさせる部分がありましたが、III では最初から四人パーティーで旅立つことができる心強さや冒険のワクワク感が表現されていました。生演奏だと録音よりも音量のダイナミックレンジが広くてさらに迫力があります。
7 ダンジョン~塔~幽霊船
どこから何が飛び出してくるか分からないおどろおどろしさを表現した『ダンジョン』。対照的に人工の塔の中を探索する緊張感を感じる『塔』。どちらもいいけど、ゲーム中で一度しか聴くことがないわりに強烈に印象に残っている『幽霊船』。背筋が寒くなるヴァイオリンの音がなんとも言えません。
8 戦いのとき
SFC 版で追加されたボスバトル曲。確かバラモス戦で使われていたと思います。『ダンジョン』のモチーフをベースにしつつ大幅にアレンジされたバトル曲で、シンプルな構成の曲が多かった『III』の既存曲に比べ大曲に仕上がっています。雰囲気的には『III』というよりも『V』以降のボスバトルに使われそうな感じ。
– Intermission –
9 回想
これも SFC 版で追加された曲ですね。この楽曲のおかげで FC 版ではややあっさりしていたオルテガとの再会シーンがドラマチックに化けました。ただ私はリメイク版のサントラはあまり聴き込んでいないから「そういえばこんな良い曲あったなー」という感覚。
10 鎮魂歌~ほこら
『鎮魂歌』はバトルで全滅したときの BGM。プレイ中は全滅すると悔しくて速攻で王様の前に戻していたからちゃんとフルコーラスで聴いたのはテープが最初だった記憶(笑)。そこから繋がる「ほこら」、ドラクエのほこら曲には実は名曲が多いんですがこの曲は特に神曲と言って良い。どこかもの悲しいメロディーが、III のほこらの中でも特にレイアムランドのほこらでラーミアの卵を守る双子の巫女の祈りに重なるものがある。また、この曲を聴くと脳内で「旅の扉」のワープ音が無意識に重なってくる楽曲でもあります。
11 海を越えて
さらに広い世界への旅立ちを感じさせる悠然とした曲。この曲の持つ明るく楽しいリズム感や伸び伸びとしたホルンの音は船を得て新しいフィールドに出られる喜びを実感させてくれます。特に船を手に入れるための道のり(トンネルを開通させたり、カンダタと戦ったり、黒胡椒を手に入れたり…)が長かっただけに、この曲が達成感を与えてくれました。
12 おおぞらをとぶ
III に限らずドラクエシリーズ随一と言って良い名曲中の名曲。船よりも自由に空を飛び回る曲だからもっと明るくても良いはずなのに、どこか少し悲しくて使命感を帯びたように聞こえる楽曲です。オーケストラだとハープのアルペジオの上に主旋律がフルートからオーボエへとシームレスに引き継がれるときの響きの変化が沁みる。これを聴くと涙を堪えきれなくなります。
13 ゾーマの城
SFC 版からの追加曲。『ダンジョン』をさらに緊張感高くしたアレンジ版という感じで、ラストダンジョンに相応しい。FC 版だとラストダンジョンでも普段と BGM が変わりませんでしたからね。
14 戦闘のテーマ~アレフガルドにて~勇者の挑戦
ドラクエのノーマルバトル曲ではこの『戦闘のテーマ』が疾走感もあって一番カッコイイと思います。楽団の皆さんもこれを弾いているときは活き活きとしていてこの曲が好きなことが伝わってきたのも良かった。そこからのメドレーは『アレフガルドにて』、I のフィールド曲『広野を行く』のリバイバルだけどゲーム内で初めて闇の世界に降り立ったときにこの曲が流れてきた瞬間には感動したなあ…。そしてラストバトル・ゾーマ戦の楽曲、『勇者の挑戦』というタイトルからしてカッコイイ。この難しい曲をファミコン音源で表現したのもすごいことだと思いますが、オーケストラで聴くと本来の表現意図がよく解ってさらにカッコイイ。これ、ゲーム音源でしか聴いたことがない人は CD でも良いから一度オケで聴く価値あると思います。
15 そして伝説へ
エンディング曲。もうね、このイントロが流れた時点で私の脳裏には黒地に「そして でんせつが はじまった!」の文字が表示されるわけです。交響組曲を通じてほんの 90 分ほどの時間でアリアハンからギアガの大穴を通ってアレフガルドまでの長い冒険を完遂した気分。感動しすぎてハンカチじゃ全然足りなかった、これはスポーツタオルを持ってくるべきでした。
– Encore –
16 時の子守唄
アンコールは『III』の組曲の後だから『広野を行く』か『この道 わが旅』あたりかな…と思っていたらまさかの『VI』のエンディング曲でした。私は VI 以降はそこまで深くやりこんでないしサントラも聴いてないからあまり馴染みがなかったのですが、この『時の子守唄』はドラクエ楽曲の中でもすぎやまこういち先生自身が特に気に入っていた曲らしいですね。すぎやま先生のご逝去後初めて開催されるファミリークラシックコンサートとしては外せなかったということでしょうか。
17 序曲 XI
そして大トリは XI のオープニング。7 月 29 日は奇しくも七年前のドラクエ XI の発売日と同じだから、ということにちなんだものと思われます。ドラクエのテーマ曲はイントロ以外全シリーズを通じて共通なイメージがあるけど、冒頭の『ロトのテーマ』と聞き比べるとアレンジがずいぶん違うことがよく分かります。それにしても、序曲で始まって序曲で終わるというのがいかにもドラクエらしい。最後にもう一度これを聴けて、お腹いっぱいで芸劇を後にできました。

やはり III は名曲揃いでした。これをオーケストラで、それも都響の演奏で聴けて良かった。五年前までならすぎやま先生ご自身の指揮で聴けたのなら、機会を作って聴きに行っておけば良かったなあ…と今さらながらに思いました。

また、今回がすぎやま先生が亡くなってから初めてのファミリークラシックコンサートということもあってか、カーテンコール時に指揮の和田一樹氏が何度も楽譜に礼をし、楽譜を高く掲げ、最後には楽譜を胸に抱えて退場されていったのが印象的でした。すぎやま先生あってのこのコンサートだし、それだけすぎやま先生へのリスペクトが強いということでしょう。

第 34 回 ファミリークラシックコンサート ~ドラゴンクエストの世界~

改めてじっくり聴いてみると、ドラクエの楽曲はどれもクラシックらしいオーソドックスな構成なんですよね。最近はゲーム音楽というと(特にバトル曲は)変拍子で緊張感を出して…というのが当たり前になっていますが、あまり変わったことをしなくても和音や楽器の使い方で十分に疾走感や緊張感を表現できることがよく分かります。変拍子系の曲もカッコいいんですけどね。また初期のドラクエは ROM 容量の都合もあって楽曲自体が短尺のループを前提としているから構成がシンプルで分かりやすく、それを組曲に仕立てるから取っ付きやすいのも良いところ。だからこそゲーム音楽界のクラシックとして三十年以上にわたって愛されてきたのだと思います。

期待通り、全部すごく良かった。良い心の貯金になりました。そして HD-2D 版ドラクエ III がさらに楽しみになりました。
この流れでもう一つの名作である『交響組曲「ドラゴンクエスト IV」導かれし者たち』も聴きたくなりました。今後も機会を見つけて時々ドラクエのオケコンを聴きに行くことにしようかと思っています。

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