富山市ガラス美術館の後は同市内のこちらの喫茶店に行ってきました。
ここ、私の幼少期の思い出の場所です。幼い頃に両親に連れられて何度か来たことがあり、鉄道模型が見られる喫茶店ということで大好きな店だったのでした。その後、この近くの高校に通っていたからその時点までは存在していたことは知っていたのですが、まさかそれから三十年経ってまだ営業しているとは思ってもみませんでした。しかもその店がニューヨークタイムズ紙に紹介されるなんて。居ても立ってもいられず四十年ぶりに訪店。店構えも当時から全く変わらず、そのままそこにありました。
店内は一見レトロな喫茶店風。
私が子どもの頃に来たとき既におじさんとおばさんだったマスターとママさんは、今ではすっかりおじいさんとおばあさんになっていました。代替わりするでもなく、そのまんま四十年営業し続けていたとは。
食器棚以外の棚という棚に鉄道模型が飾られています。私は鉄道模型のことは(というより鉄道全般について)あまり詳しくないのですが、展示されている模型はほとんどが N ゲージよりも大型の HO ゲージ。
私が生まれ育った市は鉄道といえば路面電車くらいしか走っていないところだったから当時は鉄道そのものが珍しく、その精巧な模型がこんなに並んでいることをとにかく特別に感じたものでした。
テーブル席はまるで長距離列車の客車のようになっていて、壁にはガラス戸越しにさまざまな鉄道模型が陳列されつつ、下にはジオラマと HO ゲージの線路が通されています。
ガラス戸の周囲には鉄道にまつわる小物やヨーロッパの鉄道写真が飾られていて、本当にどこかを旅している気分。
そしてこの喫茶店のすごいところは壁沿いに HO ゲージの線路がずっと繋がっていて、店内をこの鉄道模型が走り回るところ。
カウンター奥に複数の鉄道模型が待機しており、それらが順番に店内を巡回していきます。
カウンター席なら手を伸ばせば掴めそうな距離を走って行くわけです!(実際にはガラスで仕切られていて触れることはできません)
それほど高速なわけではありませんが、この距離を横切っていくこのスケールのものを流し撮りするのは慣れていても難しかった(笑
店内には鉄道模型の発車順番表が掲示されており、実際にこの順番で列車が走行します。おそらく定期的に入れ替えられているものと思われます。
国鉄時代の SL から、JR でも既に廃止された編成、そして現行の北陸新幹線 W7 系と時代を超えた列車の競演。北陸本線管内を走っていた列車が中心でしょうか。
全自動とは思えないので、たぶんマスターが手動で切り換え操作をしているのでしょう。喫茶関連の仕事をしている時間よりもカウンターの奥で何かを操作しているっぽい時間の方が長い(笑)。実際の喫茶業務は主にママさんの役割なんだと思います。
もしこの鉄道模型が単に展示されているだけだったとしたら、子どもの頃の私はここまで心ときめかなかっただろうなあ。
普段触れることの少なかった(父親が出張から帰ってくるのを富山駅まで迎えに行くくらいしか接点がなかった)鉄道という特別なものが、模型となって目の前を走って行くことに夢がありました。もしこの店に中学生くらいまで通っていたとしたら、私も鉄道オタクになっていたかもしれません。
お店の奥の方にはガラスケースに日本全国の路面電車の模型がズラッと飾られています。富山に関しては市電が旧車から LRT に至るまでの歴代が並べられているあたり、富山市電の電停近くに構える店ならではのこだわりを感じる。
ちなみにカウンターの頭上にも線路が吊り下げられているのが見えますが、確か昔はここにも鉄道模型が走っていたように記憶しています。
展示物は鉄道模型にとどまらず、鉄道関連のものを幅広く取り揃えていてとにかくマスターの鉄道愛が伝わってくる。細かいところまで分からなくても、その愛の深さに触れているだけでこちらまで幸せを感じてしまうのは自分も別のジャンルのオタクだからでしょうか。
それでいて客層は鉄道マニアっぽい人ばかりではなく、近所のおばさんたちの憩いの場として使われているっぽかったり、早速外国人観光客が訪れていたりと幅広い。
そういえば特に鉄道好きというわけでもない両親が私をここに連れてきたのは何がきっかけだったんだろうか。単なる物珍しさなのか、それとも私が当時ちょっと電車のオモチャを気に入っていたからなのか。
喫茶店なのに喫茶の話をするのを忘れていました(笑。
手描きの SL のイラストがあしらわれた年季を感じるメニューを開くと、
実際の時刻表を使ったお品書きが出現。そうだそうだ、この店のメニューこうだったんだ。
古き良き喫茶店と言いたくなるオーソドックスな名前が並んでいるけれど、オレンジコーヒーとかハニーコーヒーとか変わり種もある。そして当時は意味がよく分かってなかったけど、四十年前からカプチーノを出していたことに驚きます。
当時まだコーヒーが飲めなかった私は、ここに来るとクリームソーダか砂糖をたっぷり入れたウインナコーヒーとチーズケーキを決まって頼んでいました。今はむしろ甘いコーヒーが苦手だけど、ちょっと懐かしくなってウインナコーヒーを注文。
ホイップクリームではなく泡立てた生クリームを浮かべたコーヒーで、砂糖なしで飲むとマイルドで飲みやすい。水出しだから尚更マイルドなんだろうなあ。
昔よりちょっと大人になったからチーズケーキではなくコーヒーチーズケーキを頼んでみました。
チーズケーキらしい味とコーヒーの香りを同時に楽しめるケーキ。ウインナコーヒーにもよく合います。
まさかこの店にまた来ることができるとは思わなかったから、ちょっと泣きそうになるくらい嬉しかった。昔ここに来たときの記憶を鮮明に思い出しました。マスターもママさんもお年は召したけどお元気そうで良かった。
この店がまだあって、しかも世界に紹介されるなんてなあ。でも個人的には、雪の大谷とか雨晴海岸など県内の有名な観光地に並ぶくらい行く価値のある場所だと思っています。
次に富山に行くときにもまた訪れる機会があるといいなあ。
ごちそうさまでした。
コメント