先日金沢に行っ(てついでに穴水にも行っ)た際、帰りにちょっとだけ富山に寄り道してきました。
富山にはもう自分の実家はありませんが、先日ニューヨークタイムズ紙が「2025 年に行くべき 52 カ所」に富山を選出したことが話題になっていたからそれ関連の場所を巡っておこうと思い。

富山市街地で紹介されたスポットは私が昔からよく知るエリアばかり。でも高校卒業からもう三十年近い年月が過ぎ、昔とは変わってしまった場所もいろいろあります。そういえば帰省で富山に来ても市街地を歩くことって少ないし、久しぶりに歩き回ってみました。
※写真は全て α7 IV+FE24-105/F4G にて撮影。
NYT 紙に特にフォーカスを当てられていたのがこの富山市ガラス美術館。ここはもともと北陸を代表する百貨店「大和」があった場所なのですが、十数年前に近隣の総曲輪(そうがわ)通り沿いに移転して跡地に美術館と市立図書館が入居する建物ができました。私はそのニュース自体は知っていたけどここに来たのは初めて。富山とは思えないモダンな建物にちょっと驚きます。
この建物を設計したのは建築家の隈研吾氏。なんか近年の日本で話題になる建築というと隈研吾ばかりで、他に建築家っていないのかよ!と突っ込みたくなります。でもひとたび中に入ってみると、木材を使った温かみのある内装と外光をたくさん取り込める構造はなかなかイイ。この日は冬の北陸らしく曇(ちょっと小雨)の天気だったにも関わらず、天井から吹き抜けにたっぷりとした光が射し込む感じがいいじゃないですか。
レイヤーがシームレスに繋がっていく開放感ある階層構造と、横方向には抜け感がありつつも程良く遮蔽されるブラインド状の木材の使い方が絶妙。基本的には図書館と美術館のための建物ということで、商業ビルとは違った静かで落ち着いた空間が心地いい。ここなら一日過ごしても苦にならないに違いない。
木目に囲まれているとなんだか落ち着きます。木造の一軒家に生まれ育ったせいか、それとも祖父が大工だったからか。この空間にいるとマンションじゃなくて一軒家に住めば良かったかな、と思ってしまいます。
館内の上下移動にはエレベーターもあるけど、どちらかというとエスカレーターを使ってこの開放感を浴びながら移動したい。
美術館内には常設展と企画展があり、写真撮影は常設展のみ許可されています。
個人的には撮影不可だった企画展がすごく刺さりました。ガラスのアートは光を透過したり反射したりするから、一つの物体でも見る角度や光の具合によって表情が全然違う。なんかこれって写真表現にも通じる話だなあ、と思って光と色と影の関係を一心不乱に見入ってしまった。
常設展は大物系の展示中心。ガラスの、それも工業製品ではなく工芸品でこれだけ大きなものを意図通りに形作ってさらに色も乗せていく、って途方もない作業だろうなあ。芸術家でありながら職人の域に近いのかもしれません。
私は富山で生まれ育ちながら富山が「ガラスの町」という意識が全然なかったのですが、富山では売薬業の発展とともに薬瓶としてのガラス製造が発達したのだとか。今では呉羽(くれは)山のふもとに代表的なガラス工房があり、圏外からも著名なガラス職人が富山に移住してガラス作品の製作に励んでいるそうです。
館内では富山市内の老舗喫茶店「小馬」が支店を出していました。小馬ってもっとレトロなイメージがあったのにここのお店はすごくモダン。
ちょっと一杯珈琲を飲んでいきたくなったけど、この後別の喫茶店に行くつもりだったから泣く泣くスルー。
市立図書館。図書館としての存在感は石川県立図書館が圧倒的だと思います。それに比べるとここは中身は普通の図書館だけど、気合い入れて来なくてもいい気軽さと開放感、落ち着き感のバランスがすごくいい感じ。高校時代にここがあったらきっと学校帰りに入り浸ってただろうなあ。
建物と同じく本棚も抜け感があって、図書館につきものの閉塞感がない。それがこの場所の居心地の良さに繋がっているのかもしれません。
絵本や児童書のコーナーは本棚も低くなって、さらに開放感高め。
土地が余っている富山だからできることかもしれませんが、こういう空間的余白のある図書館って初めてかも。幼少期からこういう場所で本に触れていた子は本好きになるに違いない。
ちなみに今回そうとう久しぶりに路面電車(市電;旧ライトレール)に乗りました。市内中心部の足ともいえる交通手段ですが、私は高校時代はバス通学だったし市内の移動はだいたい徒歩で済ませてたから当時からあまり乗る機会がなかったんですよね。
ちょうど来たのは懐かしい旧車両でした。そういえば『孤独のグルメ Season10』の富山回でゴローが「腹が、減った」をやっていたのもこの旧車両内。期せずして聖地巡礼を果たす格好となりました。
というわけで、次回に続きます。
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