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未来のミライ @チネチッタ

細田守監督の最新作を観に行ってきました。

未来のミライ

未来のミライ

本作、久しぶりに細田守監督らしい活劇を見せてくれるのではという期待がありました。映画のキービジュアルが『時をかける少女』とほぼ同じ構図・背景の雲使いで、それ以外の作品は主人公がドーンと正面に向いていたのとは一線を画して「原点回帰」っぽい雰囲気があったことと、タイムリープっぽい設定がそう思わせたのでしょう。細田作品は家族をテーマにするのが標準になりつつあり、かつ作品を重ねるごとに勢いが落ちてきている印象があったので、ここらで巻き返してほしいという思いもありました。

が、幕が開いてみるとなんだか事前の宣伝から期待された内容と違う。主人公の男の子が未来から来た妹と何かを求めて冒険する…という物語を想像していたのですが、全然そんな話ではありませんでした。主人公の「くんちゃん」を軸とした成長物語ではあるものの、妹の「未来のミライ」はタイトルになっているほどには登場も活躍もせず、プロモーションと実体の乖離具合は『ベイマックス』を彷彿とさせるものがあります。なんか夏空、JK、タイムリープものかつボーイミーツガールもの…という枠に当てはめたいプロモーション側の都合が見える乖離度合い。


物語は妹の「未来」が誕生し、今後の育児と生活は建築家として独立した旦那さんが兼業主夫として面倒を見、奥さんはすぐに社会復帰する…というところから始まります。旦那さんは一人目の子どものときはあまり自覚がもてず仕事優先で(これ自体は自分にも身に覚えがあるからまあわかる)、二人目の子どもなのにまるで初めての子かのようにミルクの与え方すらわからない(まずこれが理解不能)。なのに旦那さんは家事全般を引き受けようとするし、奥さんはそんな旦那に家を任せて生後三ヶ月でいきなりフルタイムで働き始めていきなり泊まりがけの出張に行ったりする。しかも復帰の理由が「同僚が産休に入って人手不足になるから」。そんなの生活が破綻するのは目に見えてるし、会社側も配慮なさ過ぎだろ!というのが気になってしまい、物語に入り込めなくなってしまいました。あまりにもリアリティがない…。

個々のシーンを見れば映像は美しいし、キャラクターの動きもすごく丁寧に描かれているし、素晴らしい。それぞれのエピソード自体は悪くないんですが、全体として見たときに抑揚がなく、「くんちゃん」の成長がイマイチ見えてきません。いや成長自体はしているんだけど、それが周囲の大人や友達との関係性の中で育まれるものじゃなく、不思議体験(という妄想)の中で起こるものという点がなんだかモヤる。

作中でくんちゃんが「不思議体験」をする場面の多くが大人にかまってもらえず、庭で一人で遊んでいる間に発生する…というところで気がついたのが、「本作はもしかして現代版の『となりのトトロ』を作ろうとしたのではないか?」ということです。トトロとは違う前提ながら母親が家におらず、父子家庭に近い環境で、子どもが不思議体験(明確には描かれないが空想や妄想である可能性もある)を通じて成長するという点で、この二作は似通っています。ただ、それぞれのイベントを通じてクライマックスへと盛り上げて行ったトトロとは違い、本作は散発的なエピソードの組み合わせで盛り上がりきらないまま終わってしまう。そういうところが物足りない理由の一つなのだろうと思います。

私が観た劇場では半分以上が幼稚園~小学生くらいの家族連れという感じで、特に前半のコミカルなシーンではたくさんの笑いが起きていました。子ども向けアニメとしてはよくできた作品なのかもしれませんが、大人向けとしては残念ながら物足りない。特にキャラの表情とか演出がすごくいいだけに、脚本がもったいなさすぎる。やっぱり細田監督は脚本は誰かに任せて監督に専念した方が良いのではないでしょうか…。

コメント

  1. EDF_45 より:

    私も今日見てきましたが、ほぼ同じ感想を抱きました。しかし小学生低学年の長女は「面白かった」、下の子も115分耐えて見ていたので、まさに子供向け映画だったのでしょう。

    大人視点では感動するポイントがなく、細田映画は、過去作の脚本の奥寺さんが偉大だったのだと気がついてしまいました…。

  2. B より:

    ですよね!!

    過去作(特に初期の)が良かったのは脚本があればこそだと思い知りました。
    最近の作品はせっかくのヒロインをまともに活用できてないし。
    次回作は外部脚本採用してほしい…。

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