東京ドームシティで開催中の河森正治 EXPO を見に行ってきました。
マクロス関連の展示会には何度か行ったことがありますが、他の作品を含む河森正治監督自身の展示会はこれが初めて。プロデビュー 40 周年を記念したイベントということで、監督作品以外にもメカニックデザイン等で参加した作品から企画倒れになった作品まで(!)膨大な量の河森作品に触れることができる展示会になっています。私はリアルタイムではガンダムよりマクロスに触れて育った世代だけに、これは見に行っておきたかった。
入場してすぐのところにあるドーム型シアター(以前お台場にあったガンダムフロント東京の DOME-G を一回り小さくしたような感じ)で本イベント用の河森作品クロスオーバー映像(入場料とは別料金!)を観たらメインパビリオンに進んでいきます。
メインパビリオンは主に立体物中心の展示。実寸大とはいかないまでも大型(3m 弱くらい?)の立像が圧倒してきます。こちらは『劇場版マクロス F』のクライマックスに登場した YF-29 デュランダル、個人的には劇中で長く活躍した VF-25 メサイアを見せてほしかったけど、ディテール含めこだわりを感じる可変戦闘機の立体物を目にすると感激します。
こちらはアクエリオン EVOL の立像。河森作品といえば変形ロボですが、中でも三体が数パターンで変形合体するアクエリオンはバルキリーとはまた違った河森メカの真骨頂だと思います。これを机上の想像や CG によるシミュレーションではなくまずレゴブロックで試作検証するところから作る、というのがまたすごい。なおレゴブロックによる試作は過去のイベントでも展示されたことがありましたが、今回は初代マクロスの制作時にバルキリーの可変構造検討のために手作りしたペーパークラフト(!)が展示されていて、これまたのけぞりました。
ニルヴァーシュ(エウレカセブン)の立像の脇にさりげなく展示されていた AIBO ERS-220。子ライオンがモチーフだった ERS-210 をベースとしたバリエーションモデルですが、これもまた河森デザイン。ロボットをあくまでロボットとしてペット化するという概念は他の AIBO とは一線を画しており、また河森メカらしいフェイスデザインも相まって当時も強いインパクトを受けたのを憶えています。
なにげにこの展示会ではこの AIBO がいくつもの場所でフィーチャーされていたのが印象的でした。河森メカの中でも玩具ではなく実際に動作するロボットとして製品化されたのは今のところ唯一だし、河森監督的にもやっぱり思い入れあるんですかね。
歴代バルキリーのプラモデル。スケール違いやバリエーションモデルも含まれるとはいえ、これ全部独りでデザインしたものなんだからすごい。ガンダムだって作品によってデザイナー違いますからね。
なおこれらのプラモはバンダイをはじめとして現行キットばかりだったように見えますが、個人的には初期マクロスのプラモを販売していたアリイやイマイのものも見たかった。
VF-1 の着陸シーケンスを立体でコマ送り風に再現した展示。DX 超合金(ですよね)を並べただけといえばだけながら、きりもみしながらファイター→ガウォークに変形して着陸後にバトロイドになる一連の流れはテレビ版のオープニング映像を思い出させて、それだけで胸が熱くなります。
それまでほぼスーパーロボット系のアニメ・特撮や玩具にしか触れてこなかった自分にとって、ほとんど実在する戦闘機と同じ飛行機が二足歩行ロボットに変形するというのは子ども心にも衝撃でした。しかも VF-1 のデザインはバトロイド形態はさすがに時代を感じるけどファイターとガウォークは今見ても格好いい。プラモめっちゃ欲しかった記憶があります(確か一、二個だけ買ってもらえた)。
個人的にマクロス最大の発明だと思っているのがこのガウォーク。ファイターとバトロイドに加えて中間的なこの形態があることで、劇中でのバルキリーの芝居に広い幅が持たせられていると思います。
立体物の中でも圧巻だったのがこれ。アクエリオンの「無限拳」を河森作品関連のプラモの空き箱で作ったという展示です。河森監督自身はこれも立像化したかったそうですが、予算の都合で空き箱で組み立てることになったとのこと(笑。でも普通に立像化するよりもこういう展示のほうが、河森作品にある「一見馬鹿っぽいことでも全力でやりきる」という作風に通じるところがあって、なんかイイ。その対象がこの作風の真骨頂ともいえる無限拳なのがまたイイ。
有料の音声ガイドは河森監督、声優の東山奈央さん(『マクロス Δ』のレイナほか)、中村悠一さん(『マクロス F』のアルトほか)の 3 パターン。私はせっかくだから河森監督バージョンを利用しました。思っていたよりも(?)テンション高めのトークで楽しめましたが、3 バージョンで音声ガイドが聴けるポイントが違っていて、これなら追加料金払ってでもいいからあと 2 パターンも聴いてみたかった。
河森監督のデザイン画や絵コンテが展示されているクリエイティブパビリオンは残念ながら撮影禁止だったので、メインパビリオンに展示されていたキャラクターフィギュアの写真でお茶を濁します(ぉ。
このコーナーがまたメインパビリオン以上の物量で、圧倒される数の資料が壁中に貼られています。今までこういうアニメ系の展示会には何度か来ていますが、ここまでの物量があるイベントは初めてではないでしょうか。
中でも驚いたのは、マクロスシリーズでの作曲家への依頼メモにかなり具体的な内容が記載されていたこと。例えば『虹色クマクマ』のオーダーでは「魔法少女になったランカが不気味な(けど可愛い)モンスターを倒す」「アイテムとして鍵を持っている」「サビは観客と一緒に歌う」「リラメル・ララメル・ランルララン」「オープン・ランカ」など最終的に楽曲に取り入れられ、映像化されたキーワードに満ちています。マクロスシリーズの楽曲は半分は監督自身が作ったようなものだと言えるし、発注する時点で既に映像のイメージが出来上がっていてそれを逆算する形で必要な部品を集めていくスタイルで作品を作っていることがよく分かります。これはメカニックデザインや世界観のデザインについてもそうで、頭の中に一つの世界が出来上がっているという点では先日行ったシド・ミード展で触れたのと似た種類の衝撃を感じました。
河森監督といえば『機動戦士ガンダム 0083』にもメカニックデザインとして参加し、ガンダム GP01 と GP02 およびアルビオンのデザインを担当したことでも知られていますが、終盤に登場した GP03 だけはカトキハジメデザインだったのでした。が、この展示会の会期後半ではボツになったという河森版 GP03 のデザイン画が初公開されていて、私はこれを見るのを大きな楽しみの一つでした。
コーナー全体が撮影禁止だったため写真はありませんが、河森版 GP03 はまさかの「ネオ・ジオング」型!ネオ・ジオングも初登場時には想像の斜め上で驚きましたが、その二十年以上前にそういう斜め上の提案をしていたのが河森監督らしい(笑。
ここから写真撮影が再び OK になります。河森監督が若い頃にやっていた「大量のロケット花火を一斉に発射する遊び」の再現展示。こんなのまで大真面目に作り込んで展示する河森ワールド(笑。
でも後に板野一郎氏とこの話で盛り上がり、マクロス名物とも言えるミサイル一斉射「板野サーカス」に繋がるわけですから、貴重なエピソードです。ロケット花火のこの軌跡、まさに板野サーカスですよね。
ちなみに私は河森作品はマクロスシリーズとアクエリオンシリーズくらいしか観ていないんですが、メカニックデザイン等まで含めると「こんなものまで!?」と驚くほど数多くの作品に関わっていることに改めて気付きました。例えば河森監督がマクロスの前に仕事として関わったタカラ(現タカラトミー)の『ダイアクロン』、これは後にアメリカに渡ってあの『トランスフォーマー』シリーズに続くわけですが、この初期のメカデザインを二十代前半の河森監督が手がけていたとは!私、これ幼稚園くらいのときに持ってました(笑。そんな時代からお世話になっていたのか…。
高校時代の同級生に美樹本晴彦氏、細野不二彦氏、大野木寛氏という錚々たるメンバーに恵まれ、そのうち美樹本氏・大野木氏とともに『マクロス』を手がけることになるわけですからすごい話です。
またガンダムの前にガンダム的な世界観のロボットマンガを描き、ガンダムの同人誌まで作った上で『0083』にも参加するほどガンダム(とそれに近い世界観)を愛した河森監督ですが、『マクロス』の開始直前まで富野由悠季監督とともに『アステロイドワン』という作品の企画を進めていたそうで、その作品に関連する資料の展示もありました。その作品がもし世に出て成功していたら現在のように『ガンダム』と『マクロス』が長く支持されるのとは違った世界線になっていたかもしれませんが、観てみたかったなあ。
なお本イベントの展示には展示パネルに河森監督が直筆でいろんなコメントを記入していて、それを読むのも楽しみの一つ。加えてところどころに各作品に参加した他のクリエーターや声優さんのコメントやイラストも書かれていて、本当にみんなで楽しんで作り上げている展示会であることが伝わってきます。
また最近のニュースでは、AIBO 以来 18 年ぶりのソニー製品としてスマートウォッチ「wena wrist」のデザインを手がけることも発表されています。私は wena wrist には興味がありつつも自動改札を通るのに左手を差し出さなくてはならない(自動改札機の読取機は右側)というのが引っかかって今まで手を出さずにいたのですが、最近腕時計に興味が湧いているところでもありデザイン次第では河森モデル、買ってしまうかもしれません。
そして『マクロス Δ』の続編として完全新作となる『劇場版マクロス Δ 絶対 LIVE!!!!!!』の制作も発表されています。前作に輪をかけてもはやワルキューレが主役、場合によってはデルタ小隊も VF も出てこなくても可笑しくないくらい音楽を中心にしていることが伝わってきます(笑。ただ一つ気になるのは、今までのワルキューレの楽曲はタイトルや詩にメンバー五人にかけた「5」というキーワードを多用しており、最新曲『チェンジ!!!!!』でも!マークは五つだったのが、今回は「LIVE!!!!!!」にかかる!が六個。これはワルキューレに新メンバーが追加される予告なのではないでしょうか?とはいえ今から全くの新規キャラをメンバーに加えるとも考えにくいし、ここはひとつ旧劇場版で見せ場の少なかったミラージュがワルキューレ入りする説に一票入れたいと思います。過去にワルキューレ Ver. のフィギュアも作られたことがあるみたいですし(笑。
…と、このへんの写真を撮っていたところで、奥の方がやけにザワついてる。なんかあるのか?と振り向いてみたところ、
まさかの河森監督ご本人!!!!!
どうやら海外メディアの取材対応のタイミングに偶然出くわしたようですが、これにはさすがに取り乱しました。過去にイベントですごい遠くからご本人を見たことはあったんですが、今回は至近距離ですからね…。ほんの数分間の出来事でしたが、本当に行って良かった。
それにしても超おなかいっぱいになるイベントでした。絵コンテやデザイン画の写真撮影 NG だったのが本当に残念なくらいの展示物量には圧倒されました。全体で一時間ちょっとくらいのつもりで見に行ったところ、優に二時間は経っていたという(;´Д`)。河森作品のファンならば半日空けるつもりで見に行くべき展示会だと思います。
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