久しぶりに時代物の映画を観てきました。
個人的な経験からすると仇討ちものの時代劇にハズレなし。しかもメインキャストが柄本佑・渡辺謙・北村一輝ときたら観たい要素しかない、ということで劇場へ。調べてみたら原作は三年前に直木賞を獲った小説なんですね。
江戸・木挽町(現在の歌舞伎座のあたり)にある歌舞伎小屋・森田座付近で、忠臣蔵の千穐楽がはねた夜に仇討ちが発生。女装した美濃遠山藩士・菊之助が界隈で有名なゴロツキ・作兵衛(北村一輝)を父の仇として討ち取った。その仇討ち劇は多くの芝居客に目撃され、以後江戸での語り草に。
それから一年半後、同じく遠山藩から江戸に出張ってきた元藩士の総一郎(柄本佑)が、何故かその仇討ちの詳細を森田座の関係者に根掘り葉掘り尋ねて回る。森田座の面々は不審がりながらも相手をするが、総一郎の真意は…というミステリーです。
まず引き込まれたのが冒頭の仇討ちのシーン。雪が舞う江戸の街中で、屈強な大男と牛若丸のような小兵が繰り広げる殺陣が見事。それを見守る森田座の面々の芝居がかったリアクションも含めてまるで劇中劇のよう。
その後、時が経って現れる総一郎はどこかとぼけた感じで底が知れない人物。まるで刑事コロンボか古畑任三郎のよう…と感じていたら、実際にコロンボをイメージして作られたキャラクターらしいですね。どこかコロンボを彷彿とさせる茶系の衣装まで含めて狙ったものだったか。また飄々としつつも腹の読めない怖さを感じる柄本佑の芝居はお父さん(柄本明)に通じるものを感じます。
森田座が「目撃」した仇討ちの様子も、総一郎の立ち居振る舞いも共になんだか作りごとっぽさを感じるなあ…という違和感はやはり伏線で、総一郎の調査により少しずつ真相が明らかになっていきます。オチとしてはある程度予想できる範疇に収まったもののそこに持って行く芝居と演出が見事。実力派俳優の説得力ある芝居に引っ張られます。森田座の立作者(脚本家)であり実質的な座長である金治(渡辺謙)は当然として、木戸芸者師役の瀬戸康史、立(殺陣)師役の滝藤賢一、小道具方役の正名僕蔵とその妻役のイモトアヤコ、さらには時代劇の悪役の定番・石橋蓮司も含め深いバックグラウンドを感じさせます。中でも異色だったのが衣装方役の高橋和也がまさかの女形での出演で圧倒的な存在感を放っていました。
でも芝居で群を抜いていたのは作兵衛役の北村一輝。昔から悪役を演じることが多い同氏、近年では『地面師たち』でのキレた芝居が特にインパクト強かった。そして本作でもそのイメージを引っ張ってきたかのような分かりやすいのゴロツキで来たな…と思ったら、そういうメタなコンテクストまで含めてが伏線だったとは。まるでひとつの作品の中で何役も兼ねているかのような演技の幅に魅せられつつ、要所要所で笑わせてももらいました。あの顔芸はズルいでしょ(笑。
あとは菊之助の殺された父役で登場した山口馬木也も素晴らしかった。『侍タイムスリッパー』でブレイクした同氏ですが、短い登場シーンにも関わらず心に刺さる芝居。本作で一番泣けたのは同氏のシーンでした。
仇討ちものでミステリーならばあまりスッキリせずしんみりとした結末になることを予想していたのですが、クライマックスでは想定外のドタバタコメディもありつつ最後は大団円。こんなに晴れやかな印象で観終われるとは思っていませんでした。やはり劇中劇があり、また芝居への愛に溢れた劇作品は素晴らしい。
歌舞伎モチーフで芝居が素晴らしい、という点では『国宝』の流れに乗る部分もあるし、『国宝』ほどとはいかないまでもクチコミベースで隠れたヒット作になりそうな気がします。
いやーいい映画でした。観て良かった。



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