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銀座 魚勝

以前から行きたいと思っていたお店にようやく行ってきました。

銀座魚勝

もともと京橋のほうにあったお店が移転してきた、銀座の魚系和食のお店(京橋店もまだしばらく平行営業中)。知人が関わっていてずっと気になっていたのですが、これからしばらく混みそう、ということでいよいよ行ってきました。

数寄屋橋と和光のちょうど間、天使が覗き込んでいる曲がり角の隣のビルの 2F。銀座のまさに中心部という超好立地にあります。

それほど広くない店内の、こぢんまりとしたテーブルに着席。ちなみに店舗はこの夏に改装予定とのことで、改装後はもう少しだけなる予定だそうです。

とりあえずビールで乾杯するわけですが、こういうお店の生ビールはヱビスかプレモルと相場が決まっているもの…と思ったら、ここのはアサヒの「琥珀の時間」。プレミアム系ビールの中でもなかなか飲む機会が多くないので、ちょっと嬉しい。
お通しは鯖と梅干し。この鯖がまた、お通しとは思えないクオリティの、脂乗りの良い鯖で、これから出てくる料理の期待を高めてくれます。

「魚勝」というからには、まずはお造りから入るべきでしょう。マスターは築地の卸の家の生まれだそうで、その時点で魚の質は保証されたようなもの。

これは大分産の釣りあじ刺。刺身の直球ど真ん中だけど、脂の乗り具合と身の締まり具合のバランスがちょうど良く、まさに王道のアジ刺。

ど真ん中ストレートの次は内角高め的な(笑)いわしクジラの刺身。イワシなのかクジラなのか…と思ったら、思いっきりクジラ。でもクジラ刺って一度ハマるとやみつきになるんですよね。
ニンニク醤油でガツッといただくと、これがビールによく合うんだ。


旬カツオの塩炙り酒盗和え。鰹も酒盗も好きな私としては、これは外せない。
ちなみに酒盗は鰹のワタを使った塩辛(魚の種類は違うこともあるけど代表的なのは鰹)なので、鰹の刺身に合わないわけがない。

鰹の炙りも酒盗も、単品で十分にうまいのに、この組み合わせは破壊力が高い。こ れ は う ま い。

こういう展開になってくるともう日本酒に進まずにはいられないわけです。

そしてこの日本酒メニューの品揃えがいい。誰もが知っているナショナル銘柄の日本酒は一切なく、お店のこだわりで選び抜かれた精鋭たち。この中で私が知っている銘柄と言えば、阿部勘か神亀くらいです。それぞれのお酒にどんな世界が広がっているのか、全部試してみたくなります。

まずは旬の鰹に合わせるべく、いかにも「夏!」というイメージの「奥 夏吟醸」。この水色で「奥」「夏」とくると、細田守版『時かけ』の奥華子のエンディングテーマを思い出します。

さておき、確かに名前に違わずさっぱりしていて、夏によく合う日本酒。もちろん鰹にもよく合っています。

次なる標的は、カウンターにズラリとならんだこのおばんざい。タイトルを読むだけで期待に胸が膨らむ、役者が揃っています。
しかも、どれもリーズナブルな値段が書かれていて、ここが銀座のど真ん中であることを忘れそうになるほど。地元で昔からやってる居酒屋のおばんざい、的な気安ささえ感じるのが嬉しい。

ではさっそく、新じゃがのイカワタ煮から。
ホクホクのじゃがいもに、苦味がなく旨味だけが抽出されたイカワタが絡んで、これも日本酒が進む味。イカの胴でも下足でもなくワタ、というのがいい。

密かにこれを楽しみにしていた、尾崎牛の厚揚げの炊いたん。
後述する尾崎牛のうまみを厚揚げと大根がしっかりと受け止めていて、それでいて尾崎牛もやわらかく、これはどこをどう食べてもうまい。これに白飯と味噌汁があったら夕食はそれで十分なくらいの満足感。おばんざいの一つではなく主力メニューと言われてもおかしくないと思います。

お酒は阿部勘の純米辛口に移っていきます。
これ、美味しいんですよね。こないだの GW の仙台旅行で飲んでいたく気に入った日本酒に、銀座で再会するとは。

エシャロットでちょっと箸休め。

この香りが口の中を一度リセットしてくれて、また新たな気分で飲み食いできるわけですが、呑んべえ的には、この添えられている味噌だけでも日本酒が飲めます(笑。

脂イワシの灰干し。灰干しって干物の一種かな、と思って頼んでみたら、想像とは違う見た目のものが出てきてちょっと驚きました。どうやら「灰干し」とは天日干しとは全く違い、火山灰を使って魚の水分を取り除く加工法だそうで、いわゆる干物にありがちなパサパサ感は皆無、本来のイワシの脂のみずみずしさを保ったまま、うまみだけが凝縮されている感じでとてもうまい!イワシ自体も大ぶりで、とても満足度の高い一品。今度来たときにもあったらまた食べようと心に決めました。

次なる日本酒は「日高見」の夏吟。日本酒のセレクトが季節に合わせてあるので、ついついビールに走りがちなこの季節でも、冷たく爽やかな日本酒をどんどんいけてしまいます。これはまずい。おいしいけどまずい(笑

というわけで、またうまい日本酒とうまい料理の螺旋階段に突入していくわけです。

こちらは釣り穴子の天ぷら。サクフワで日本酒によく合う。

で、青森産のあいなめ刺。これはなかなか食べられるものではありません。

続いては、旭興・無加圧純米吟醸。

ここで食べられるとはちょっと思っていなかった、白海老の唐揚げ。
私の故郷、富山の定番料理です。こういうので不意を突かれると、酔っていることもあってつい涙腺が緩みそうになってしまいます。

クライマックスに向けて盛り上げていくべく、珍味三種盛(カラスミ、鯖へしこ、ふぐの子)を。どれも濃いめの味の珍味。銀座の真ん中でこういうのをアテに日本酒をチビチビやれる、それが大人の特権だ。

石川の銘酒、農口(のぐち)。北陸の日本酒はけっこう知っているつもりでしたが、これは初めて。

濃厚なうまみで、もちろん白海老の唐揚げとのコンビネーションは抜群。今度帰省したら買ってこよう。

ワンクッション置いて、タラコのポテトサラダ。

こういうの、ちょっとほっとします。

そしてこれがクライマックス、尾崎牛ロース芯和風ステーキ。魚の店で肉、というのは邪道な気もしますが、この肉はただの肉ではなく、「尾崎牛」というブランド。松阪牛とか神戸牛のような地名のブランドではなくて、宮崎の尾崎畜産さんで育てられた牛のブランドです。

細かいサシがたくさん入っているんだけどこってりとはせず、脂が口の中でサッと溶ける。その後に肉自体のうまみがやってきて、ああ本当にいい牛肉というのはこういうのなんだなあ、というのを実感できます。岩塩と山葵でいただくと、さらにうまみが引き立ちます。脂っこいもの好きのピーク年齢を越えてきたから余計にそう感じるのかもしれませんが(笑、これは本当に魚メインのお店を名乗らせておくのはもったいないレベルの高さ。

この尾崎牛のうまみを受け止めるのが、柔らかさが特長の萩の鶴・純米酒。

自分の中で宮城の日本酒ブームが来ているだけに、粒ぞろいの日本酒メニューの中で、ついつい宮城のお酒ばかり選んでしまいます。

そろそろ〆の御飯ものへ。

こちらは自家製うに醤油の卵かけごはん。今まで食べてきた TKG の中で、これほど豪華な TKG がかつてあっただろうか。
〆に卵かけごはんというだけでも幸せなのに、その上にうにの身とうに醤油、という贅沢。この瞬間に急性痛風が発症して死んでしまっても後悔はありません(ぉ。

続いて高菜チャーハン。魚も肉も関係のない〆チャーハンも、味付けに抜かりなし。バシッと濃い味で締めたいときにはこれが最適じゃないでしょうか。

〆の三連発、最後は胡麻漬け茶漬け。これも、お茶漬けなのにしっかり締めてくる味で、「ああ、俺って今日うまい魚をたくさん食べたんだなあ」と浸りながらこの一席を総括させてくれます。

魚料理は素材が命。だけど、素材の良さだけに頼らない丁寧な仕事ぶりが、一皿一皿から伝わってきます。
知人が関わっているというのを差し置いても、一つ一つの料理が期待を上回る美味しさと良心的なお値段で、これだけの満足感を提供してくれるお店はなかなかありません。満席が続き、マスターはずっとカウンターの中で調理に明け暮れていましたが、一段落したところでそれぞれのテーブルやカウンターにご挨拶に回ってきてくださる心配りも有り難い。心がこもった仕事というのはこういうことを言うんだなあ、と一発でこのお店のファンになってしまいました。

ちなみにこのお店、本日発売の「おとなの週末」誌に三ツ星店として掲載されました。それで当分は予約が取りづらくなると思って慌てて訪店した、というわけです。おそらく当面は予約の電話さえかかりづらい状況が続くでしょうが(電話予約は 15~18 時のみ対応とのこと)、掲載に合わせてトレタを導入されたとのことで、24 時間 Web 予約が可能になっています。

このお店には、雑誌掲載フィーバーが多少落ち着いた頃に必ずまた来ようと思います。というわけで、美味しい料理と日本酒をじっくり味わえる人を募集中です(笑。

おとなの週末 2015 年 7・8 月号

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