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Lightroom CC と Adobe Sensei

今日、Twitter のタイムラインに何となく流れてきた話題を目にして、年末にアップデートされた Lightroom CC の新機能を見落としていたことに気づきました。

“Adobe Sensei”が写真を自動補正 ~Adobe、「Lightroom」の2017年12月更新を発表 – 窓の杜

Lightroom CC(クラウド版/クラシック版とも)および Camera RAW の自動補正機能に「Adobe Sensei」が導入されたとのこと。Sensei といえば、つい最近も Photoshop の「被写体を選択」機能に導入され、自動選択ツールの精度が向上したことが話題になったところ。Lightroom CC の自動補正機能といえば本来は現像ソフトとしてのキモの部分でもあるはずで、この使い勝手が向上するのであれば「被写体を選択」以上に恩恵が大きいはず。

というわけで、さっそく(といっても出遅れではあるけど)検証してみました。

Adobe Sensei が導入された自動補正機能は、Lightroom Classic CC では「基本補正」の「階調」の中にある「自動補正」ボタンに組み込まれています。このボタン自体は昔から Lightroom に備わっているもので、見た目が変わらないから中身が変わったことに今まで気づいていませんでした。Photoshop の「被写体の選択」も操作手順は変わらずに中身が刷新されましたが、Sensei はこのように一見それと判らないような形で導入されていくようですね。
実は私は今まで Lightroom の自動補正機能はほとんど使っていませんでした。自動補正の精度が悪すぎて使い物にならないため「無視すべきボタン」の代表みたいな機能でした。だからこそ今までアップデートに気がついていなかったということでもあります(笑。


いくつかの写真を使って、カメラ内 JPEG と Sensei なしバージョンの Lightroom で自動補正した結果、および Sensei ありバージョンで自動補正した結果を並べて比較してみました。
ちなみに角度補正機能についてもバージョンによって補正度合いの差があるか見るために、自動補正を加えています。

まずは露出アンダーになってしまった写真の補正から。
従来バージョンの自動補正では、けっこう大胆に露出を上げて画面全体の明るさ的にはバランスを取ったように見えますが、ハイライトが飛んで被写体の立体感が潰れてしまっています。従来の自動補正機能はこのように私の好みよりもかなりオーバーな露出補正を行うので、私は基本的に手動補正するようにしていました。
が、Sensei による自動補正では、暗部の露出補正は従来版と同じくらい持ち上げているものの、ハイライトをグッと抑えることでディテールを殺さないように処理してくれています。これは私の好みにかなり近い結果で、このまま使うか、手を加えるにしても微調整程度で十分仕上げられる印象。従来版よりも全然使えます。

なお傾き補正は新旧ともに自動補正されませんでした。ここまで水平・垂直が不明なごちゃっとした構図では仕方ないか。

続いて逆光。従来の自動補正ではシャドウを持ち上げた結果夕陽の階調がぶっ飛んでしまっており、台無し感が強い。従来の自動補正機能はカメラでいう評価測光的な考えで画面全体の平均値を揃えるような挙動をするので、ダイナミックレンジの広い構図には極端に弱い印象がありました。
それに対して Sensei はシャドウ側は保ちつつ、ハイライトを抑えて夕陽の色とグラデーションをしっかり表現してくれています。ソフトウェアの自動補正機能でこういう処理をしてくれたことは今までほとんどなく、大量の写真データからの「夕景写真はこう補正するのが良い」という学習結果すげえ、と感心してしまいました。

それから夜間イルミネーション系。これも従来の自動補正では全体的に露出を上げる方向の補正で、ライトアップの色が飛んでしまっていますが、Sensei による補正は暗部の階調は少し持ち上げつつもハイライトの色調を引き立てる方向で補正してくれていて、「そうそう自分でもこういう風に補正するよ」という結果に。

今までの自動補正は使う気が起きない代物でしたが、Sensei による自動補正は記録写真やある程度の商業写真でもそのまま採用できそうなクオリティだし、作品づくりにおいても手動補正する前の基礎補正として作業軽減の役に立ってくれそうです。

ちなみに RAW 現像と JPEG の補正でどの程度画質差が出るかも試してみました。

モトクロス撮影でやりがちなのが露出オーバー。地面が黒く、逆光になりがちなこともあって空が白く飛んでしまうことが少なくありません。こういうハイライトがぶっ飛んでしまった写真の JPEG データからでも、ボタン一つでここまで救えてしまう自動補正にはちょっと恐れ入りました。
まあ、JPEG からの補正ではさすがに空の青さがやや不自然だし、空にも雲にもトーンジャンプが発生していますが、元データからすればむしろよく補正できていると言えます。しかし色調情報の残っている RAW データからの自動補正であれば、これだけ白飛びしてしまった画像でもまるで最初から適正露出で撮ったかのような補正まで可能。もっとも最初から露出ミスしない設定で撮れよって話ですが、こういうスポーツ撮影では状況も刻一刻と変わるため、そうも言っていられません。

Photoshop の「被写体を選択」機能に比べればあまり話題になっていないようですが、Sensei が入った Lightroom、素晴らしいじゃないですか。
今までどうして「Sensei」と呼ぶのか解らなかったんですが、ようやく理解できました。例えば知らない言葉や地図を調べるときに「グーグル先生に訊いてみよう」と言うように、クラウドの力を使ってイイカンジにしてもらうという点で、これは「アドビ先生に頼んでみよう」という感覚なんですね。今後は積極的に自動補正機能を使っていこうと思います。

Adobe / Creative Cloud フォトプラン(Photoshop+Lightroom)

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