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gifted/ギフテッド

今回の北米出張には初めてアメリカン航空を利用したのですが、機内エンタテインメントで少し気になっていた映画がラインアップされていたので、移動中の時間潰しがてら鑑賞しました。

gifted/ギフテッド

自殺した姉に託された「特別な才能」をもつ姪を独りで育てる男の物語です。”gift” には「神からの贈り物=天賦の才能」という意味もあり、つまりはそれだけ傑出した才能をもつ子をどう育てるか?という話。

ボートの修理工として働くフランクは、彼の姉譲りの天才的な数学の才能をもつ少女メアリーを姉の遺言に従って「普通の学校」に通わせようとするが、周囲の子たちとの能力の違いから校内で浮き、次第に問題を起こすようになる。それでも彼女なりの信念に基づいた行動で同級生たちと馴染み始めたところで、絶縁状態だったフランクの母=メアリーの祖母イブリンが現れ、メアリーを一流の教育機関に移そうとする。母親との衝突の末自殺を選んだ姉の気持ちを組みメアリーを普通に育てようとするフランクと母イブリンは最終的に法廷で親権を争うようになり…というのが大まかな流れです。
扱っているテーマ的には『グッド・ウィル・ハンティング』と共通するところがあるものの、『グッド〜』がトラウマに埋もれた才能を見出して彼の能力を発揮できる場所へと導く話であるのに対して、本作は才能ある子を特殊な環境に置かず「普通の感覚」を学ばせるために育てるという点で、逆方向を向いたような話になっています。まあ、人間社会で生きていくために才能よりも社会性を育てる必要のある幼少期と、ある程度人格が形成された青年期とでは導くべき方向性が異なって当然ではありますが。

映画は基本的に主人公であるフランクの視点で描かれます。だから特別な才能があっても家族の前では年相応に子どもらしいメアリーはとてもかわいいし、姉の遺言も関係なく近くで成長を見守りたくなる気持ちはわかる。一方で自分も一人の親としての視点、そして自分の親に育てられてきた経験をふまえると、自分が為し得なかったことを子や孫に投影し、その才能を最大限に伸ばしてやりたいイブリンの気持ちもまあわかる。どちらの生き方が正解かは、実際に大人になったときの本人次第でもあるわけで、難しい話です。
ただエンディングまで観た限りでは、最終的にはこの映画は育て方がどうこうというよりも、固い絆で結ばれた事実上の父娘の愛を描いた作品なのだなあ…という感想を持ちました。多くのシーンで表現されていた「メアリーの子どもらしいかわいさ」は、才能云々を離れた幸せな親子像を映像で表現したものに違いない。


我が家も長女が一年前に中学受験を経験し、来月四年生に上がる次女が塾に通い始めたこともあって、子どもの能力の伸ばし方について考えることが増えた身としてはいろいろ感じるところがありました。私は別に娘を天才数学者にするつもりはないけれど(笑)、娘たちが将来自分で生きる道を選ぶ日が来たときにできるだけの選択肢を用意しておいてやりたい。また娘たちが通う都内の小学校で実際に学級崩壊や崩壊寸前の状況に何度か遭遇したことで、今の東京で「普通の学校」に通わせることが必ずしも幼少期の幸せや健全な成長につながるとは限らない。かといって一定水準の環境を子どもに与えるためには相応のお金がかかる。この映画のような二元論ではいかない話だし、近年の私の最大の関心事は実はそれだったりします。でもそういう状況だからこそ、この映画を観てみたいと思っていたのでした。

話を映画に戻すと、この作品は本当に芝居と演出が素晴らしい。アクション映画のような派手さはないものの、クリス・エヴァンス(『キャプテン・アメリカ』)を筆頭とするベテラン俳優陣が実に深みのある芝居をしています。でもそれ以上に圧巻だったのがメアリー役のマッケンナ・グレイス。撮影当時まだ 10 歳やそこらだったにもかかわらず、学校のシーンでは自分の能力に自信をもつ大人びた小学生として演じ、フランクや愛猫フレッドと触れ合うシーンは屈託のない笑顔や仕草を見せ、フランクとの関係性が変化していくシーンでは微妙な心境を表現してみせ…本当に振り幅が広くて素晴らしい。しかも自分の子じゃないのに「この子を絶対幸せにしてやりたい」と思ってしまうかわいさ!(笑)この感情、娘を持つ親ならば共感してもらえるんじゃないでしょうか。
映像についてもメアリーがフランクやフレッド、隣人のロバータと接する何気ないカットの使い方がとても巧く、変に科白で言わせなくても彼らの関係性がしみじみ伝わってくる、いい画なんですよね。

ラストはまあ「めでたしめでたし」で丸く収めた感じの脚本だけど、翻って自分の子どもたちの幸せって何なんだろう…?と考えてしまう部分はありました。でもウチの場合は二人とも、少なくともこれまでの選択の結果については納得しつつ充実した日々を送ってくれているようだし、これで良かったと思いたい。

いい映画でした。映像作品としても余韻のあるいい画がとても多いし、定期的に見返したくなる作品だと思います。

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