史上初の日本開催となったラグビーワールドカップが昨日閉幕しました。今までルールさえ知らなかった私も何試合かテレビ観戦して多少は分かってきたつもりになっているところです。
今回優勝したのは南アフリカ代表でしたが、ラグビー南ア代表について描いたこの映画があったことを思い出して、Netflix で鑑賞しました。
私が好きなクリント・イーストウッド監督作品ですが、ラグビーのルールさえ知らない私では楽しめないかもしれない…と今まで敬遠していた映画でした。でもイーストウッド作品で主演がモーガン・フリーマン/マット・デイモンなら名作でないわけがない。ようやくラグビーについて多少の知識を得て、かつ南ア代表が優勝した今こそ観るべきでしょう。
27 年間の投獄を経て大統領に就任したネルソン・マンデラ(モーガン・フリーマン)と、ちょうどラグビーワールドカップが自国開催されるタイミングに合わせて国民統合の象徴に祭り上げられたラグビー南ア代表・スプリングボクス。元々は白人のスポーツとして国内ではアパルトヘイトの象徴と目されていたスプリングボクスが逆に「統合の象徴」となり、自国 W 杯での初優勝を勝ち取るまでの実話に基づいた物語です。
マンデラは大統領就任以降、それまで自分たちを差別してきた白人に敵対するのではなく融和・統合すべき対象として様々な施策を実行します。その中でマンデラがラグビーを一種のプロパガンダに用いたのは計算ずくでのことでしょうが、ラグビーという協議の位置づけ、W 杯のタイミング、放送を通じて全世界にアピールできることなど媒体として最適だったことは間違いありません。マンデラが代表チームに面会する際に、主将のフランソワ(マット・デイモン)だけでなく全選手の名前を暗記して臨むくだりは、人心を掌握し味方を増やすために何をすべきかをマンデラがよく考えて行動していたことを示しています。一方でラグビーを単に政治利用しただけでなく、個人的興味としてチームの勝敗に一喜一憂していた描写もまた、マンデラの人間的魅力をうまく描写していました。
私自身はアパルトヘイトが廃止された直後くらいに中学地理で習った世代であり「歴史上の出来事」という認識だったのですが、この映画を通じて当時の南アフリカや人種差別が置かれていた状況を改めて実感することができました。もちろん映画で描かれている綺麗事ばかりではなかったのでしょうが、2019 年の南ア代表の半数弱が黒人かつキャプテンが初の黒人選手であったことを考えると、この 24 年の間で南アにおける人種問題が着実に改善し、マンデラが望んだ状態に近づいてきたことは事実なのでしょう。そういう視点で今回のラグビー W 杯を振り返ると、単なるスポーツの大会というのとはまた違った感慨が湧いてきます。同時に、桜の紋様を背負って戦った他国出身選手も多く含まれる日本代表に対しても改めて敬意を表したい思いです。
完全なるにわかではありますが、次回のラグビーワールドカップもできるだけ観戦したいと思います。
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