キヤノンが 2 月に開発を予告していた EOS R5 をいよいよ正式発表しました。
キヤノン、4,500万画素ミラーレスカメラ「EOS R5」を7月下旬発売。約50万円 – デジカメ Watch
開発発表時点でかなりのハイスペック機になることは仄めかされていましたが、新規開発の 4,500 万画素フルサイズセンサを軸とした高画素兼高機動ミラーレスカメラといった雰囲気です。α でいうところの α9 シリーズと α7R シリーズを融合させたようなモデルで、今までスペックで α の後塵を拝していたミラーレスで一気に巻き返しを図ろうというキヤノンの気合いが感じられます。
4,500 万画素の高解像度に動物(鳥を含む)の全身/顔/瞳を検出可能な追尾 AF、メカシャッター 12 コマ/秒・電子シャッター 20 コマ/秒、ボディ/レンズ双方の IS の協調動作による最高約 8 段分の手ブレ補正、カメラ内 8K 動画記録対応、というハイスペックの塊のようなカメラです。今までは EOS D の手前ちょっと遠慮していたけれどもうミラーレスに完全注力することに決めた以上は出し惜しみせず全部出したった製品、という印象。
また EOS R/M を問わず従来のミラーレス EOS では操作系に実験的な試みをすることが少なくなかったのが、EOS R5 ではかなりオーソドックスに EOS 5D 系のそれを踏襲してきたのも象徴的です。本体デザインが EOS R/RP 世代からみてもかなり EOS 5D シリーズっぽい方向性に寄せてきたことも含め、この世代で一気に EOS D ユーザーを切り替えさせたいということなのでしょう。既に少なくない数の EOS ユーザーが α に鞍替えしてしまった現状ではありますが、「スペックで α に勝てば慣れ親しんだデザインと操作系で EOS にスイッチバックさせられるはず」という意図で企画されたんじゃないか…という気がします。
しかし価格は実に 46 万円(税別)。α9 II と α7R IV を融合させたようなスペックならまあそうなるよね、という値段ではありますが、おいそれと手が出る値段ではありません。それだけ日本の物価感覚が世界とずれてきているということなのかもしれませんが、カメラ市場の縮小に伴い期待できる販売台数が減った分単価を上げないと採算が取れない、という側面もあるのかもしれません。いずれにしても我々にとってはあまり喜ばしい話ではありませんが。
キヤノン、約2,010万画素のスタンダードモデル「EOS R6」。約33万円 – デジカメ Watch
そして R5 の下位モデルにあたる「R6」も同時発表されました。これは α7R と無印 α7 みたいな兄弟機の関係にあるのかと思ったら、筐体からして全くの別物なんですね。グリップラバーの巻き方が特徴的で、今までの EOS R 系とはちょっと系譜が異なる感じ。
R5 との違いはイメージセンサが 2,010 万画素に変更されていることで、これにより記録画素数が小さくなることと 8K 動画記録に非対応(4K60p 動画は撮影可能)になることを除けば、AF や連写性能、8 段分の手ブレ補正といった「撮影の歩留まり」に関するスペックはほぼ同じ。今さら 2,010 万画素という点がちょっと気になるとはいえ、多くのユーザーにとっては R5 よりもむしろ R6 のほうが本命と言えるのかもしれません。位置づけ的にはこちらが「R5」で R5 のほうが「R5s」だったとしても驚かないくらい強いカメラ。
しかしこれも価格がボディ単体で 30.5 万円(税別)。2,010 万画素で樹脂ボディのカメラに私が EOS 5D Mark III を買ったときとほぼ同じ値段を払うのか…と考えると、ちょっと躊躇するところがあります。入ってる機能は当時とは全然別物とはいえ。
キヤノン、超望遠ズーム「RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM」の詳細仕様を発表 – デジカメ Watch
キヤノン、開放F11で小型軽量化した超望遠レンズ2本。10万円前後 – デジカメ Watch
キヤノン、協調ISに対応した中望遠ハーフマクロ「RF85mm F2 MACRO IS STM」 – デジカメ Watch
今回驚いたのはボディ以上にレンズのラインアップではないでしょうか。以前 RF100-500/F4.5-7.1L の開発予告がされたときも F 値が暗いことと、それでも L レンズ銘が与えられることにちょっと驚きましたが、今回はそれに加えて RF600mm・RF800mm のともに「F11」という超望遠レンズが追加されました。これらのレンズにエクステンダー 2x をつけると F22 相当になり、EOS R5・R6 ならばその状態でも AF が可能というのだから驚きます。
ボディ側の AF 性能と高感度性能が飛躍的に向上したことで暗いレンズのデメリットの一部(AF 性能に制限が出ることと高感度ノイズ)が解消されてこういうレンズが製品化しやすくなったということなのでしょう。一方で、スマホのカメラ性能がどんどん上がってきた結果、カメラ専用機はもっとスマホでは対応できない撮影領域に踏み出していかなくてはならないため、今までは高くて重くてユーザーが限られていた超望遠レンズを「安くて軽い」ものにしなくてはならなかった、というカメラメーカーの悩みも見えてきます。
それにしても RF レンズは F2 通しズームや F1.2 単焦点といったハイエンド系と、明るさを大胆に割り切った普及ラインとで極端に戦略を振り分けている印象。逆に F4 通しズームとか F1.8 単焦点みたいなオーソドックスな使用のレンズは中途半端だし、ユーザーの多くが EF マウントからの移行組ならばそういうのは EF-RF マウントアダプタでやってね、ということなのかもしれません。思い切ったことするなあと感心する一方で、レンズメーカーが独自性を発揮する余白を奪うことは結果的にマウントシステムの魅力を損なうことになるのでは、と少し心配にもなります。
まとめ的なことを書くとすると、ついにキヤノンがフルサイズミラーレスで本気の製品を出してきたことで、いよいよ α との本格的な殴り合いが始まりそうですね。競争はユーザーにとってはメリットしかないからどんどんやってほしい一方で、オリンパスに代表されるようにキヤノン・ソニー以外のメーカーにどんどん余力がなくなり、競争から脱落しかけているように見えるのが気になります。いちカメラファンとしてはもっと健全な状況で競争してほしいところではありますが、この流れはもう止められないんでしょうね。
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