【レビュー】圧倒的な完成度。MacBook Pro(M1)の凄み-Impress Watch
昨日今日とネットを賑わせているのが「Apple M1 を搭載した新しい Mac がメチャ速いらしい」という噂。最初は「どうせ Apple シンパな媒体やライターが大げさに言ってるだけなんでしょ?」と斜に構えていたのですが、徐々に中立な媒体やライターさんによる客観的な記事が公開されていくにつれ「どうやら本当らしい」とザワついてきました。
上記の西田宗千佳さんのレビューによると M1 搭載 MBP の Cinebench Multi-Core のスコアは 7,511。私の VAIO SX14 の 1,112 はおろか Ryzen 5 3600 搭載自作機の 3,538 よりも倍以上速いんですけど!(;´Д`)。OS が違うからその差分は割り引いて考える必要があるとはいえ、M1 が恐るべき高性能であることは間違いありません。
(※写真は本文とはあまり関係なく我が家にある唯一の Mac、初代 Mac mini。発売日に銀座 Apple Store に並んだけどもう 10 年以上電源を入れてない)
M1 Mac が実際に速いことはまあ分かったのですが、どうしてこれがそんなに速いのかがよく解らない。まだ発売直後だから情報が出揃っていないだけでそのうち半導体解説の第一人者である後藤弘茂氏が PC Watch あたりで詳しく説明してくれそうな気もします。
素人発想で考えられるのは Intel CPU が過去との互換性確保のために無駄が多い構造であること、近年の Intel CPU の性能向上が鈍化していることに加えて、M1 Mac が macOS からプロセッサ、最終製品(Mac)に至るまで垂直統合で開発できることによる効率の良さ、あたりでしょうか。特に後者は Windows PC と比べて想定されるハードウェアのバリエーションが極端に少なく、その分 OS のコアそのものを軽く作れることと、OS が CPU の仕様を深く理解して最高効率で動けるという点は大きそうです。ただ、それだけでは「Intel 互換モードで動かしても M1 のほうが Intel Mac より速い」ことの説明がつかないのですが…。
Apple が Intel から独自 SoC に切り替えた理由は既にあちこちで語られていますが、2015 年の Skylake(第 6 世代 Core)の品質が低かったことが一つのトリガーになったようですね。それに加えてここ数年 Intel が半導体製造プロセスの微細化で他ファウンドリに遅れを取るようになったこと、およびそれに起因して Intel CPU の性能向上が伸び悩んでいたことが背景にあるのではないでしょうか。一方で Apple は iPhone に搭載する自社 SoC のロードマップや性能向上見込みを把握できているので、どのタイミングで逆転するかは読めていたはずです。
ちょっと気になったので Geekbench による iPhone 向け SoC の性能向上率を調べてみました。
年 | SoC | Geekbench Multi-Core | 性能向上率(前年比) |
---|---|---|---|
2020 | A14 Bionic | 3,932 | 118.6% |
2019 | A13 Bionic | 3,315 | 133.9% |
2018 | A12 Bionic | 2,476 | 117.7% |
2017 | A11 Bionic | 2,103 | 162.8% |
2016 | A10 Fusion | 1,292 | 129.8% |
2015 | A9 | 995 | 174.3% |
2014 | A8 | 571 | 120.5% |
2013 | A7 | 474 | – |
データがあった A7 以降で比較すると、2013 年の A7 から 2020 年の A14 Bionic の間に 8.3 倍の性能向上を果たしています。年平均で約 35% ずつ高速化している計算。それに対して Intel は 2013 年の Core i7-4650U(Haswell)の Multi-Core:1,278 に対して 2020 年の Core i7-1165G7(Tiger Lake)が 4,768(いずれも Windows での数値。OS が異なるため Apple Silicon の数字と直接比較はできません)。7 年間での性能向上は 3.7 倍、年率でも 20% に留まっています。実際、近年の PC の性能向上は CPU よりも GPU と SSD の進化によってもたらされていた部分が大きい。
ちなみに Snapdragon も 2013 年→2020 年の比較では 7.7 倍、ARM ベースであることもあり Apple Silicon に近い向上を果たしています。
2013 年時点での Intel CPU と Apple Silicon(ARM)の性能は比較にすらならなかったと思いますが、かたやプロセス微細化がうまくいかず近年では AMD にさえ性能で劣るようになってしまった Intel CPU と、常に TSMC の最新プロセスをいち早く採用して高性能化していく SoC ではこの 7 年間の進歩の幅が違った。また元々はスマホに採用できるサイズ/消費電力の SoC を Mac 向けに転用(スマホよりも高い電圧で動作させる)することで Mac 用としても非常に効率の良い SoC になったのではないでしょうか。こうなってくると Windows 派の私でも、M1 版 MacBook Air を一台買ってみるかという気になってきますね…。
余談になりますが、かつての 1GHz 競争時の対 ARM や Crusoe 登場時の対 Transmeta など、競合で危機に陥るたびに強力な CPU をリリースして打ち勝ってきた Intel も、近年の AMD の躍進や今回の M1 との性能差を見せつけられるともう一強時代もさすがに終わりかなあ、と思いますね。それでも Windows PC 向けとしては主流であり続けるでしょうけど。
ARM でコンピューターを動かすという意味では Mac よりもずっと先行していたはずの Windows 10 on ARM は鳴かず飛ばずなんですよね。Microsoft は Apple と違って自社 SoC を作る気はないだろうし、ARM に本腰を入れる理由も見当たらないのですが、性能面で Mac に後塵を拝し続けるようならばどこかで舵を切るようなことはあるかもしれません。というか、低発熱・低消費電力な ARM ベースならば PC の設計自由度が高まって面白い製品が出てきそうなので、ぜひそうなってほしいんですけどね。
コメント
突然失礼いたします。M1の速さはメモリもGPUもストレージさえも一纏めにしちゃって伝送ロスを最小限に抑えたというのがものすごく効いているのだと思います。またAppleはAシリーズを作り始めた時からいつかはMacにもと考えていたとワタクシは想像しているのですがどうでしょうかネ。
コメントありがとうございます。
CPU のパッケージ上にメインメモリまで実装してしまったのは PC の世界ではほぼ初じゃないでしょうか。今までの UMA(RAM/VRAM 共有)とは一段階違うわけで速いのも納得です。
SSD は物理的にはオンボードなようですが電気的には PCIe じゃないですかね。それでも最近のは 4~5Gbps 出るからメチャ速いですが。
Apple の技術者はいつかは Mac にも…ときっと考えていたと思いますが、一方で Intel CPU がこれほど停滞するというのも予想外だったんじゃないかと。その現実をふまえて具体的に自社 CPU への切り替えを検討し始めたのが 4~5 年前という感じなんでしょうね。