そういえばこの夏に移転したという「キッチン南海」の新店舗にまだ行っていなかったことを思いだしたので、神保町へいそいそと。
神保町の駅近くで 54 年(!)にわたって愛されてきたキッチン南海本店が、建物の老朽化のためこの 6 月に惜しまれつつ閉店しました。私が南海のカレーを初めて食べたのは三年前ですが、コク深い好みの味で一口で気に入ってしまったのでした。閉店のニュースはけっこう話題になっていたので、外食が憚られるさなかでも耳に入ってきていました。
新しい店舗は正確には本店で働いていたシェフが独立したのれん分け店という位置づけのようですが、同じ神保町で本店の味がそのまま継続するということで客視点では実質的な移転。実際にお店に行ってみると、外壁から看板、庇の色に至るまで元本店をそのまま新しくして移設したような佇まいで、それだけで安心できるじゃないですか。
12:30 頃にお店に到着したところ、お店の外には建物をぐるりと回り込んで隣のビルに迫る勢いの行列ができていました。それでもカレー店の良いのは回転が早いところ。最後尾に並んで待つこと 30 分で入店できました。
店舗の外観はもちろんのこと、ガラスケース内のこれらの食品サンプルも本店からそのまま持ってきているようで。以前の店舗に比べると駅からはちょっと遠くなってしまったものの、本店の魂をそのまま受け継ごうという意志が伝わってきます。
そして今回もひらめは売り切れてます(笑
ここまで毎度売り切れているともはや様式美に見えてきますね。もしかすると実在しない幻のメニューなのでは?とも思えるけど、検索すると実際に食べた人の報告が見つかるので本当に数量限定ですぐになくなってしまうということのようです。これは是非一度食べてみたい、そもそも「ひらめのフライ」なんて出してる店自体が珍しいし。
自分の順番が回ってきたので両手をアルコール消毒してから入店し、カウンターに着席。
カウンター内では二人のシェフが黙々とカレーやフライを作り続ける姿がなんだか美しい。こういう雰囲気、好きです。
運ばれてきた私のカツカレー。何にしようか迷ったけど、変わらない味であることを確認するために結局カツカレーを頼んでしまいました。
お皿の柄が変わった程度で、ルウの色からカツの大きさ、盛り付けに至るまで本店そのまま。同じ人が作っているわけだから当然ではありますが。
『空洞のなかみ』にあったように、スプーンの上に小さいカレーの世界を作って食べるのがカレー好きのありかた。
見た目の黒さから感じられるコクの深さに、ちょっとした酸味とけっこうしっかりした辛さ。サラッとしたルウをライスで受け止めて食べると、なんだか昔からずっと食べてきた味のような、懐かしいおいしさが口の中に広がります。これは紛れもなくあのキッチン南海のカレーだ。
カレー以外にも揚げ物系ランチが主力であるお店らしく、揚げたてサクサクのカツ。しかしカレーを押しのけるほど主張が強いわけではなく、あくまでカレーを引き立てつつ食べ応えを増してくれるナイスアシスト。このカツは単体で食べるよりも、ルウと一緒になることで完成するカツ、という感じがします。
ああおいしかった、期待通りに変わらぬ味で安心しました。
このカレーも定期的に食べたくなる味なんですよね。この味がこれからも続いていくことに感謝です。しばらくしたらまた食べに来ます。
ごちそうさまでした。
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