「海産物だの、食材なんて言葉、このカキには失礼だ」
ここ数年来、寒くなってくると決まって食べたくなる味があります。それが『孤独のグルメ Season5』に登場した、埼玉せんげん台の「厨 Sawa」。個人的には孤独のグルメ登場店の中でも殿堂入りクラスにおいしい店で、特に冬に食べるカキとシチューが最高。ただ自宅からは電車で一時間半くらいかかるため、そうそう来ることもできません。しかし外食する機会そのものが減ってしまった今年、貴重な外食のチャンスにできるだけ好きなものを食べようと思い、気合いを入れてやって来ました。
店先には何やら告知文が出されていて、もしかしてしばらく休業するとかそういう悲しいお知らせだったりするのか!?と戦慄。
しかし近づいてよく読んでみると、
ランチ・ディナーともに原則予約制とのこと。感染防止の観点で行列を抑えるための策ですかね。
この日はさほど混んでいなかったようで、12:30 頃にお店に着いたところ予約なしでも待たずに入店できました。
カウンターに着席。メニューには秋冬限定のカキ関連が並んでいます。
やっぱりこの店に来たからにはカキのアレをいただかないわけにはいかんでしょう。
とりあえず前菜的に鴨のスモーク。
あっさり目の鴨にほんのりスモークが薫って、前菜としてちょうど良い。
これと、
白のグラスワインをチビチビいただきながら、カキ料理が出来上がってくるのを待ちます。
昼間からワインの贅沢。そういえば昼酒もずいぶん久しぶりだ。
この鴨と白ワインを堪能しているうちに、本命がやって来ましたよ。
カキのムニエル(焦がしバターソース)!!!
これがもう本当に大好きで、今思い出してもよだれが出てくる。これを食べるために、この季節をずっと待っていたのでした。
表面がちょっとカリッとなるくらいまで火が通ったカキに、香りだけで食欲を刺激する焦がしバターソース。香味付けに松の実とパセリが散らされているのも良い。
待ち焦がれたこの味…さっそく、いただきます。
表面の焦げ目にカキとバターの旨味が凝縮されていて、それを噛むと溢れてくる海のミルク。バターの濃い味がめちゃくちゃにうまい。
「誰もいなかったら、泣くかも」という井之頭五郎の台詞は、今この瞬間の自分の気持ちでもある。
もし明日死ぬと判っていたら、最後の晩餐にはこのカキのムニエルを選ぶかもしれない。それくらい、自分にとっては幸せの象徴のような味。
ムニエルについてくるパンは当然、こう。
焦がしバターソースをたっぷり染みこませて食べる。バターの風味とカキの旨味が全部パンに移って、俺はこのパンを食べるためにカキを食べていたんじゃないかと錯覚するくらいうまい。
バターの一滴さえ残すのが惜しい。最後までパンでキレイに拭って完食。
そしてメインディッシュの前に、セットのサラダ。
カキとバターでまったりした口の中を、このサラダで一旦リセットしよう。
からの、
カキのトマトシチュー。ドラマでは久住さんが食べていたやつです。
この店はシチューやオムライスの種類が豊富で迷ったけど、今回はあえてカキをダブらせにいこうと決めてました。
外食の機会そのものが限られている昨今、たまに食べに来たんだから好きなものを好きなだけ食べたって罰は当たらないはず。
トマトの旨味と爽やかな酸味がおいしい。具がゴロゴロと入っているのも嬉しい。
この店のマスター、きっとどこか名のある店で修業したに違いないと思わせる繊細で丁寧な仕事ぶりにも関わらず、それでいてどこか家庭的なやさしい味。気取って食べるんじゃなく家族とかごく近しい人を連れて来てほんわかしたくなる感じなんですよね。本当に、この近くに住んでいる人が羨ましい。
このシチューにもカキがたっぷり。
表面がカリッとして味が凝縮されていたムニエルとは対照的に、シチューのカキはプリップリ。その内面はとろけるうまさ。
この違いが味わえたなら、カキをダブらせたのは間違いじゃなかったと思えます。一人で十個以上は我ながら食べ過ぎだと思うけど(笑
この満足感の後、すぐに帰ってしまうのはなんか惜しい気がして、余韻を楽しむためのホットコーヒー。
これが運ばれてきたときにおかみさんと少し会話したのですが、「たくさん頼まれたから食べきれるか心配でしたけど、がんばって食べていただいてありがとうございます」とのこと。確か劇中でも似たようなやりとりがありましたが、やっぱり頼みすぎと思われていたか(笑
でも、ほんとうにおいしかったです。お腹も心も幸せで満たされました。
また寒い時期が来たら、カキをいただきにせんげん台まで来ようと思います。
ごちそうさまでした。
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