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クライ・マッチョ @チネチッタ

クリント・イーストウッドの監督・主演最新作を観てきました。

クライ・マッチョ

クライ・マッチョ

イーストウッドももう御年 91 歳。新作が公開されるたびに「これが遺作になるかもしれないなあ」と思いながら映画館に足を運んでいます(笑。そして銀幕に映し出されるイーストウッドを見て「まだまだ元気だな」と思うところまでが毎回のパターン。

かつてロデオスターとして名を馳せた老人マイク・マイロは、恩人である雇い主からメキシコにいる元妻の元から彼の息子ラファエルを連れてくるという仕事を請けます。ラファエルは元妻から虐待を受けており雇い主は親として息子を守りたいと。マイクは単身メキシコに乗り込みラファエルに会え、母親の元を離れてアメリカで自由になりたいという彼の希望を叶えようとするものの結果的にラファエルを誘拐した形となってしまい、メキシカンマフィアや警察から追われる身となってしまう…というお話。『グラン・トリノ』以降のイーストウッド主演作は家族を失った or 疎遠になった主人公が家族以外の若者や子どもと出会い、触れ合いを通じて大切なものを取り戻していく…という構成の物語が続いていますが、本作もそれらとよく似たシナリオではあります。特にイーストウッドが単身クルマでメキシコに赴きマフィアの本拠地に乗り込むという点は二年前の『運び屋』そのもので、道中の映像も含めて既視感がありました。

昔はその道では右に出る者がいない達人だったという役どころは近年のイーストウッド主演作ではよくありますが、一昔前の作品ならば「人を殺すことも厭わない、怒らせると何をするか判らない」という怖さを秘めたキャラクターが多かった。でも『運び屋』とそれに続く本作ではそういう怖さはなりを潜め、若者や家族に対する温かな目線や寂しさが前面に出てきている印象があります。本作でも牧場勤務時代の経験を生かし道中の町で家畜やペットの世話をしながら「俺はドクター・ドリトルか」と自虐するシーンが象徴的でしたが、もうすっかり優しいおじいちゃんが板についた感じ。なんとなく、自分の祖父が昔は怖かったのが歳をとるにつれて好々爺になっていったのと重なって見え、微笑ましく感じられます。

映画的には激しいアクションも特になく、シナリオ的な抑揚は少なめ。映画的な見栄えよりもマイクとラファエルの二人が旅を通じてそれぞれの生き方を(マイクは人生の終着点を、ラファエルは底辺の生活から脱出した後の自由な未来を)見出していく課程が主軸になっています。淡々と、しみじみと二人の心境の変化を描く落ち着いた映画ですが、私は逆にそれがいいと感じました。なんというか、近年のイーストウッド主演作は亡き祖父に再会したような感覚を味わわせてくれるんですよね。そういう意味では、本作は私にとっては「癒やし」なのかもしれません。それと、ラファエルが飼っている雄鶏のマッチョがかわいい(笑。

地味だし万人受けする映画ではないかもしれませんが、私はとても気に入りました。むしろこれまでのイーストウッド作品でベストだったと言っても良いかもしれません。

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