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レミニセンス [Dolby Cinema] @T・ジョイ横浜

映画館で久しぶりに洋画を観てきました。

レミニセンス

レミニセンス

どれくらい久しぶりかというと前回が『テネット』だったので、一年ぶりの映画館での洋画。劇場は昨年横浜駅ビル内にオープンしたばかりの「T・ジョイ横浜」に初めて行ってみました。ドルビーシネマは座席がちゃんと階段状になっているぶん丸の内ピカデリーよりもこちらが良いですね。今後ドルビーシネマ上映を鑑賞する場合は横浜に来よう。

クリストファー・ノーランの弟ジョナサン・ノーランが製作を務める SF サスペンス。彼自身はこれまで『インターステラー』などのクリストファー・ノーラン作品の脚本を手がけてきたということで、あのノーランワールドの作り手の一人であることは間違いありません。時間、次元、夢などの概念を視覚ギミックとともに映像化したのがノーラン作品ですが、本作のテーマは「記憶」。人の記憶に潜入して事件の捜査を行うというのは『インセプション』に近いコンセプトで、その主役を張るのがヒュー・ジャックマンときたらそれは完全に私向けの映画でしかありません。ノーラン兄の監督作品ではないためそこまで話題になっている印象はありませんが、ちょっと楽しみにしていました。

大戦争によって人口の大半が喪われ、温暖化に伴う海面上昇で居住可能な土地が極端に少なくなった世界。人々はダムで生活圏を守っているものの、徐々に上がっていく海面は少しずつ土地を奪っていく。また気温上昇で昼間の生活が現実的ではなくなり、人類は夜行性への移行を余儀なくされていた。退役軍人であるニック・バニスター(ヒュー・ジャックマン)は戦時中に拷問装置として使われていた記憶潜入装置を使い、顧客に望む記憶を追体験させる仕事で生計を立てていた。ある日、失せ物を見つけるために記憶の追体験を希望してきた謎の美女・メイと出会い、ニックの人生は大きく変わっていく――というストーリー。

幸せだった頃の記憶に逃げ込むのか、それとも辛い現実と向き合って生きるのか。VR をさらにリアルにしたような記憶潜入(レミニセンス)は麻薬のような体験であり、本作の登場人物たちはその二者択一を日々迫られます。当初はあくまで仕事として割り切り、自分では記憶潜入しようとしなかったニックがメイと出会ったことで彼女との幸せだった記憶にすがるようになり、失踪したメイを周囲の忠告を無視して捜すようになる。銀幕の中のメイは本当に見とれてしまうほど美しく、ニックが心を奪われるのも無理はありません。無辜な女性なのか悪女なのかどちらともとれない妖しい魅力を放つメイ…どこかで見たことがあると思ったら、『グレイテスト・ショーマン』で歌姫ジェニー・リンドを演じていたレベッカ・ファーガソンじゃないですか!メタ的な視点で見ると『グレイテスト・ショーマン』ではバーナムに異性としての感情を抱いていたリンドに対してバーナムはリンドにあくまで舞台の演者として惚れ込んでいたという非対称がありましたが、今回はニックがメイを愛し、一方メイは…という逆転の構造になっているのが面白い。

物語は終始一貫して「メイが何のためにニックの前に現れ、何故ニックの前から姿を消したのか?」に尽きるわけですが、さまざまな関係者の記憶を辿って事実が一つ明らかになるたびに状況の見え方が変化していくトリッキーなシナリオが面白かったです。兄ノーランが『テネット』や『インセプション』でやったような形で終盤に次々と伏線が繋がっていく感覚。結末を知った状態で最初からもう一度観たら見え方が全然違ってくるんだろうなあ。

特に世界を救ったりはしないのでスケールが大きな話ではないし、兄ノーラン作品のような派手な映像ギミックもありませんが、世界観はいかにもノーラン兄弟らしい秀作だと思います。映像的にはあまりドルビービジョンを感じる画作りではありませんでしたが、朝日や夕日のシーンが印象的に使われていてハイコントラストなスクリーン向き。派手なアクションや爆発がなくても面白い映画は作れるというお手本のような作品でした。私はけっこう好き、配信されたらもう一度最初から観てみようと思っています。

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