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オールドデジカメ・ファン

玄光社から発刊された珍しいカメラムックを読んでみました。

鈴木文彦 / オールドデジカメ・ファン

アナログ時代のカメラやレンズと違って、デジカメは陳腐化のスピードが速いので(まあ近年はそうでもないですが)こういう企画のムックって成立するのか?と少し懐疑的に思っていました。でも実際に読んだ人々の評判が思いのほか良かったので、電子版で購入。

まだ 35 万画素しかなかった黎明期(初めて買ったのは 1997 年のソニー DSC-F2)からデジタルカメラと生きてきた私にとって「オールドデジカメ」というのはせいぜい 200~300 万画素が主流だった時代の感覚。なので本書に登場するカメラの大半は「オールドデジカメ」というより「ちょっと前のカメラ」という印象があります。まああまりに旧くて実用に耐えないデジカメを紹介しても読者にとっては懐古趣味以上の意味はないし、これを読んで中古屋を物色しに行くくらいに実用になる製品を取り上げたいという意図は分かります。ただ本書を執筆するために借りて初めて使った、とかサーチ(検索)して知った、みたいなカメラがいくつか紹介されていたのにはちょっと底の浅さを感じてしまいました。

掲載されているオールドデジカメは大きく分けて以下の 5 カテゴリー。

  1. フルサイズの名機
  2. CCD センサー搭載一眼レフ
  3. GR、フィルムシミュレーション(富士フイルム)、Foveon などの実力派カメラ
  4. 機能やデザインで一芸に秀でたカメラ
  5. 性能的にはもう辛いけど忘れられないレトロデジカメの名機

確かに今ではほとんど語られることもなくなった CCD センサー搭載機を今紹介するというのは分かります。でも巻頭がいきなりフルサイズ機というのは驚きました。私の感覚だとデジタルでフルサイズが一般化したのはごく最近の話で、最初の実用的なフルサイズ機である初代 EOS 5D(2005)はわかるとして、5D Mark III(2012)なんて私は今でも現役でたまに使ってますからね…。確かに発売から 10 年経ったけど、これをオールドと言われると。もしかしてレンズ交換式カメラ=ミラーレスとなった今、レフレックス付きのカメラはもうオールドということなのでしょうか。まあそうなのかもなあ。

個人的にはレトロデジカメ特集(私にとってはこれくらいが「オールド」の範疇だと思う)が懐かしくて面白かったです。CONTAX Tvs DIGITAL とか i4R は今でも時々欲しくなって中古価格を調べてしまうくらい。今さら 400~500 万画素のデジカメを買っても実用になりませんが、CONTAX はデジタルになってもモノとしての佇まいが良かったんですよね。今でも中古相場がド安定しているのがすごい。

↑は本書に掲載されていたものではありませんが、家にあった「オールド」なデジカメ。旧いデジカメは手放してしまうことが多い中、この三機種(リコー GX200、ソニー DSC-L1、DSC-T700)はなんか売り時を逃して手元に残っています。

掲載されている中で私が使っていたカメラももちろんありました。5D Mark III が掲載されていることにはやっぱり納得いってないのですが(笑)、それを除けば α700 は確かに名機だったなあ…。あの小気味よいシャッター音は今でも思い出して、たまに買い戻したくなります。

私としては「オールドデジカメ」を語るなら 1995~2000 年頃のデジカメが一番ワクワクしたなあ。いずれもレンズが回転するカシオ QV-10、ソニー DSC-F1・F505、ニコン COOLPIX 950、オペラグラスのような佇まいのリコー RDC-7、縦型だったフジ FinePix 700(本書には後継機種である 4800Z が掲載)…フィルムや光学ファインダーの物理的制約から解き放たれ、デジタルならではのカメラのありようを模索していたあの頃。もはや老人の懐古以外の何物でもないのかもしれませんが、現代のデジタルカメラのほとんどがフィルムカメラの相似形に収斂してしまったのは必然であり、寂しくもあります。そしてスマホの進化によってカメラ好きや職業写真家以外の人にとっては「自分には関係のないもの」になりつつあるのがさらに哀しい。

かつて「カメラ」と呼ばれたものが今は「フィルムカメラ」と呼ばれ、当初「デジカメ」と呼ばれていたものが「カメラ」になりました。そしてスマホがカメラを兼ねるようになった今、かつて「デジカメ」だったものはまた「過去の概念」を表す言葉に置き換えられていくのでしょうか。

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