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本駒込 中国料理 豊栄 その 5

「食えば食うほど、もっと食いたくなる」

豊栄

ドラマ『孤独のグルメ Season6』に登場した中国料理の名店・豊栄。その後茗荷谷から本駒込に移転し、私は昨年ランチタイムに一度行ってきたところですが、改めて夜に行く機会をうかがっていました。そしたらちょうど会食に利用する機会があったので、電話予約して行ってきました。

お店は地下鉄南北線・本駒込の駅から目と鼻の先(JR の駒込駅ではないので注意)。あるいは都営三田線の白山駅からも歩ける立地です。以前の茗荷谷時代は駅から距離があったのに比べるとアクセスが良くなったのがありがたい。

中国料理 豊栄

豊栄

今回はテーブル席がいっぱいだったのでカウンター席で。テーブルでゆったりもいいけど、カウンターで店員さんの仕事ぶりを眺めながら食べるのも好き。

一杯目はビールから。きめ細かい泡が美しく注がれた生ビールが染み渡るうまさ。ここしばらく外で飲むのを控えていたからなおさらにおいしい。

豊栄

現在の豊栄は予約制のコース料理が主体の営業スタイルになっています。今回は最もスタンダードな豊栄コースを予約しました。

まずはお通し的な位置づけの自家製醤四点盛り。奥が生姜醤、手前が店名を冠した豊栄醤なのは分かったのですが、左右が何の醤だったか憶えきれなかった(汗
でもさすがは醤のうまみや辛味を料理に活かす名店。どれもそれぞれに異なる深みのある味わいで、これだけでお酒が進む。

ちなみに豊栄醤はえびみそやエシャロット、唐辛子、ニンニク、ココナッツファイン(乾燥ココナッツ)などを独自に調合したものとのこと。辛味がありつつもコクと後引くうまみがある醤、これがこの店の味の核のひとつになっています。

豊栄

続いて前菜三種盛り。エビの紹興酒漬け、さわらの山椒漬け、自家製チャーシュー。
どれも食材のおいしさを醤やタレが絶妙に引き出していてうまい。前から思ってたけどやっぱりここのマスター、うまみの魔術師と言って良い。この前菜、こんな小鉢じゃなくて大皿で出してくれてもいいんですよ!と叫びたくなるおいしさ。

豊栄

前菜の時点でビールがすっからかんになってしまったので、黄酒(ホアンチュウ)に続きます。
上海の代表的な黄酒という石庫門(シークーメン)の五年、甘みやうまみがありつつもスッキリとしていてこの店の料理との相性抜群。

豊栄

薬膳スープ。根菜や豆類を中心にいろんな野菜がたっぷり入っているのが見るからに体によさそう。
蓋を開けた瞬間に良い香りが漂ってきて、食べる前からおいしいことが確信できる。

豊栄

鷲のような形に飾り切りされた大根(?)。大正製薬かな?(違
こういうのが入っているだけで、味付けだけでなく具材の一つひとつに至るまで丁寧な仕込みが行われていることが伝わってきます。

味のほうは全体的にやさしく、じんわりと染み渡るおいしさ。貝柱のうまみが活きていて、いつまでも飲み続けていられる気がする。

豊栄

やさしいスープから一転して、見るからに辛そうな口水鶏(よだれ鶏)。

辛味、山椒の痺れ、うまみ、といったものが渾然一体となって押し寄せてくる。
鶏そのものもおいしいけれど、それ以上にこの醤や辛味ダレが絡んだ刻み野菜こそがこの料理の主役なんじゃないだろうか、と感じるくらいに残すところがない一皿。

豊栄

そしてそこに差し出されるニラと玉子の水餃子。
単体でかじってみても肉汁や野菜のうまみがヤバいけど、「よかったらよだれ鶏のタレにつけて召し上がってください」とのこと。それやりたいと思ってたし、むしろ白飯が欲しいくらいに思ってたよ!
というわけでここでよだれ鶏のタレ再活用。刻み野菜の一切れさえ残さないレベルで完食。

豊栄

続く野菜料理は菜の花とホタルイカのえびみそ炒め。まさに春を象徴するような一皿。
えびみそって適当に野菜と炒めるだけでうまいのに、そこに旬のホタルイカまで入ってきたらもっとうまくならないわけがない。

豊栄

いたいた、ホタルイカちゃん。
今シーズンの初ホタルイカ、まさか和食系の店でなく中国料理でいただくことになるとは思ってなかったけど、期待通りのうまさ。えびみそとホタルイカが互いを高め合い、そのおいしいところを菜の花が吸ってさらにうまい。

豊栄

ホタルイカをうまいうまい言っていたらマスターが「ちょっと味見してみますか?」と自家製ホタルイカ XO 醤をサービスしてくださいました。
こんなものまで醤にしてしまうのかこの店は!でもうまみの権化的なホタルイカを醤にすればおいしいことは自明なわけです。これだけで黄酒の二、三杯は空けられてしまいそうにおいしい。

豊栄

続いて魚料理、長崎県産キハタの蒸籠蒸し。
盛り付けからして美しい一皿、まるで中華庭園をドローン撮影しているような眺め。

醤油やゴマ油ベースと思われるタレをキハタや刻みネギが存分に吸収して、これもたまらないおいしさ。

豊栄

さらに黒酢の酢豚。
カリッと揚げられた豚肉に濃厚な黒酢。酸っぱさよりもうまみと甘みが前面に出つつ、その味が揚げ豚の表面によく絡んでおいしい。

豊栄

料理のおいしさの前にボトルで入れたはずの黄酒でさえ空いてしまったため、ハイボールを追加注文。
冒頭のビールに負けず劣らず丁寧に入れていただいた一杯、とてもおいしい。中華料理店だからってドリンクにも手を抜かずベストなものを提供しようという姿勢が素晴らしい。

豊栄

カウンター奥の棚に並んでいたのは自家製の薬膳酒で、右から順に高麗人参酒、生姜酒、レモン酒。それぞれお好みの飲み方で提供してもらえるようです。
その隣にある「警視庁」と書かれた物々しい瓶は警視庁のプライベートブランドの焼酎で、マスターの警察関係の知人が持ってきたものとのこと。この瓶があるだけで「この店じゃ悪いことできないな」となる効果がありそう(笑。後で調べたらこの焼酎、かつて実際に警視庁内で売っていて、警察関係者なら買うことができたようですね。

豊栄

ここで真打ち・麻婆豆腐の登場。辛さよりも山椒の痺れ中心の麻婆豆腐、だけどやっぱりその奥からうまみが追いかけてくるという層の厚いおいしさ。
やっぱりこの店の料理、どれも味が立体的なんですよね。

それにしても…この麻婆、白飯が欲しくなる味だな…と思っていたら、

豊栄

まるでこちらの心を見透かしたかのように提供される小ライス(おかわり可)。麻婆豆腐をかけて食べてもおいしいですよ、と言われたらミニ麻婆丼を自作せずにはいられません。
さっきのよだれ鶏に合わせた水餃子といい、この麻婆豆腐にライスといい、タレを余さずに楽しませようという配慮には恐れ入りました。

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…というこちらの気分に追撃をかけるかのように、さきほどの蒸籠蒸しのタレに柳麺を絡めて出してくれるタイミングの良さ!
この蒸籠蒸しのタレも絶妙なうまさだったので、それにこの極細麺を絡めるともう「参りました」という言葉しか出てきません。

ああ、うまい。もうそれしかない。

豊栄

デザートは自家製で桂花陳酒ヨーグルト、杏仁豆腐、山査子アイスの三種からの選択制。
どれも手間をかけたのが分かるおいしさ。食材のうまみを活かすという点でメイン料理からの一貫性を感じます。この店はとにかくうまみの活かし方がうまい。

豊栄

いやあおいしかった。堪能しました。
茗荷谷時代はアラカルトでしか頼んだことがなかったし、移転後に前回来たのはランチセットだったので、コースで食べたのはこれが初めて。アラカルトで頼むのとはちょっと違ってストーリー的な、お店側の演出意図のようなものが伝わってくるコース編成で楽しかったです。

豊栄

この店が『孤独のグルメ』に登場したのは 2017 年のことでしたが、その後 2018~2022 年まで 5 年連続でミシュランのビブグルマンに掲載されていたようです。この味ならばそれも納得だし、何度来ても新しい発見のあるお店なのは確か。個人的には過去 10 シーズン放送された『孤独のグルメ』ドラマの中でも中華系ではトップクラスに位置するお店だと思っています。

また機会を見つけて食べに来ようと思います。
ごちそうさまでした。

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