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岸辺露伴は動かない 懺悔室 @チネチッタ

昨日公開されたばかりのこれを観に行ってきました。ちょうど上映前舞台挨拶ライブビューイングの回で、メインキャスト勢揃いでのコメントを聞くことができました。

岸辺露伴は動かない 懺悔室

岸辺露伴は動かない 懺悔室

ルーヴルへ行く』以来二年ぶりの『岸部露伴』シリーズの映画化。合間には NHK でのドラマも制作されており(ジョジョ 4 部のイタリア料理編を絡めた『密漁海岸』も素晴らしい出来だった)、着実に人気シリーズとして成長しました。ついでに言うと本作をきっかけに主演の二人が昨年結婚しており、そういう意味でも高橋一生のライフワーク的作品になっていると言えます。

『ルーヴルへ行く』はもともと長編として作られた漫画の映画化でしたが、『懺悔室』は本来短編。先に映像化された OVA でも 24 分のアニメーションだったのをどうやって映画の尺まで膨らませたのか…と思ったら、原作のラストの後に脚本が大幅に追加されていました。が、それが実に岸部露伴シリーズらしい展開だし、映像の美しさも相まって最初からこういう作品だったのでは?と感じられる完成度。
なお映像に関しては全編をイタリア・ヴェネツィアで撮影しており、どのカットを切り取っても美しく見応えのある映画になっています。『ルーヴルへ行く』はせっかくパリロケまでしたにも関わらず回想編(日本)とルーヴル地下編が長くて映像の美しさ的には物足りなかったので、本作はその点で「こういうのが見たかった」という映像で埋め尽くされています。単にヴェネツィアの風景や建物の美しさにとどまらず、それを様々な構図で登場人物の心境や物語の展開に重ね、不穏感や安心感を巧みに表現する映像演出が素晴らしい。スクリーンの大きさを活かしたカット割りで、これは映画館で観る価値ありますね。

テーマは「幸福と不幸は表裏一体」「絶望とは何か」。満たされているとその幸福を失うのが恐ろしくなるのが人間だし、逆に辛い日々が続いていても「明けない夜はない」と言って元気づけたりもします。そういう意味で幸福と不幸は地続きだし、同じ事象でも捉え方によって真逆に感じられたりもする。そういうのを極端な状況で突きつけることで視聴者にも考えさせる構成になっていて、ホラー要素の方が強かった原作よりも一段と深みが増しています。
懺悔室で露伴に自身の過ちを告白する男・田宮を演じるのは井浦新。他のドラマや映画ではあまり見たことのない演技で、もう顔や表情からして荒木飛呂彦作品の登場人物にしか見えないのがすごい。舞台挨拶での話によるとご本人が小学生時代からの荒木飛呂彦作品のファンとのことで、主演の高橋一生に負けないレベルで役に入り込んでいるように見えました。いくつかのシーンでは鳥肌が立ちましたね…。

個人的に心に残ったのは、序盤に露伴が自身を「芸術家」ではなくただ読者が読みたいと思える漫画を仕事として書く「漫画家」である、というくだりと、仮面職人のマリア(玉城ティナ)が最高の仮面を作ろうとする姿に共感をする場面でした。そこには露伴のセリフを通して、商業作品としてのエンタテインメントを作ることに誇りを持つ荒木先生および映画のスタッフ/キャスト陣の姿勢が感じられます。

原作が映画っぽくないから少し不安をもって観に行きましたが、個人的には『ルーヴルへ行く』よりもずっと良かった。映像も素晴らしかったし、シナリオの膨らませ具合や演出まで含めて岸部露伴シリーズらしい気持ち悪さ(褒め言葉)に満ちていると思います。

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