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PowerShot N という変なカメラ(褒め言葉

CES で発表されたこの変なカメラがとても気になっています。

【CES】キヤノン、ユニークな操作性のWi-Fi搭載機「PowerShot N」など
2013 International CES:何とも不思議なマシカクカメラ 「PowerShot N」をCESで発見 – ITmedia デジカメプラス

見た目からしてインパクトのあるカメラです。まるでリコー GXR のカメラユニットみたいな、単体でカメラとして成立しなさそうな形状でありながら、これでカメラ。スマホの影響で「画面タッチでシャッターを切る」という操作系は市民権を得てきているし、カメラ側でもタッチシャッター対応製品が増えてきているので、シャッターボタンとグリップとレンズを前提としたデザインである必然性は薄れてきていますが、レンズの付け根の部分に「シャッターリング」をつけて、縦横どちらでも同じような使い勝手で撮れる、とか、そういうチャレンジまで含めてとても面白い製品。


1996 年に DSC-F1 という初期のデジタルスチルカメラに出会い、レンズが回転するというフィルムではあり得なかったデジタルの発想に衝撃を受けて、それまでカメラになんてほとんど興味がなかったのに買ってしまった(当時は学生だったのですぐには買えず、翌年後継の DSC-F2 を買った)私としては、こういう既存のカメラの概念に囚われない未来志向の製品を見過ごすことはできません。
事実上世界初の民生用デジタルカメラだったカシオ QV-10 の時点で既にレンズ回転式という機構を搭載していたし、その後もオペラグラス型のリコー RDC-7 というカメラや縦型デザインの富士フイルム FinePix 6800Z、というあたりもフィルム時代には考えられなかったカメラのありようを示していました。他にもレンズ回転式のニコン COOLPIX2500 や、まだ記憶に新しいカシオ EX-TR100 など、私の記憶に残っているデジタルカメラといえば、「デジタルならでは」を志向する製品ばかり。それが、現在のような「いかにもカメラ」という見た目をした製品ばかりになっていったのは、デジタルカメラが性能面でフィルムカメラを凌駕し、市場を駆逐していくにあたってカメラというアイコンを必要としたということなのでしょう。が、いちデジタルカメラファンとしては、その状況をずっと寂しいことだと思っていました。クラシックカメラ然としたスタイルのカメラが新製品として数多く並んでいる状況を見ると、個人的にはとても残念な気持ちになります。

ちょっと話は逸れますが、シグマが Contemporary/Art/Sports という新コンセプトを発表した際に、同社の山木社長は「2012 年はカメラが多様化した年だった。それは写真という文化にとってとても喜ばしいこと」ということを仰っていました。確かに、技術と市場が成熟した結果、カメラメーカー各社の志向性が明確になり、スペック面では多様な製品が登場した面白い年だったことは事実です。が、フィルム時代のカメラの思想を逸脱するほどの多様性を見せられたかというと、そこまででもなかったように思うのです。
そういう観点でみると、この PowerShot N というカメラは、久しぶりに現れた突然変異という印象で、とても面白い。スマートフォンの普及により、いっぽうでは従来のスマートフォン的な撮影スタイルを模索し、他方ではスマートフォンとの連携を前提とする。まあ、新しいのは操作性だけで、それを活かした撮り方が提案できているようには(少なくとも現時点では)見えませんし、過去の例に照らし合わせるとこういうカメラはあまり売れないのでしょうが(笑)、少なくとも一石を投じる存在にはなりそうだし、個人的にはなってほしいなあ、という願望を込めて思うわけです。

CP+ がだんだん楽しみになってきました。

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