「モノを食べる時はね、誰にも邪魔されず自由で、なんというか救われてなきゃあダメなんだ。独りで静かで豊かで…」
孤独のグルメ史(何)に残る、作品を象徴するとも言える名言を残したのが第 12 話「東京都板橋区大山町のハンバーグ・ランチ」。今回の『孤独のグルメ』聖地巡礼【原作版】は、その記念すべき回に登場した洋食店のモデルとなった店のある、板橋区大山町にやって来ました。
この回は、ドラマでも Season1 の「文京区根津 飲み屋さんの特辛カレー」で原作オマージュが行われた、伝説の「アームロック回」。『孤独のグルメ』原作の中でも、特にインパクトが強い回と言えます。
普段、東武線に乗ることなんてまずない生活をしている私にとって、大山というのは全く縁のなかった街。巡礼するにあたり、大山が何線のどのあたりにある駅なのか、ということを調べることから始めた、といえばどれくらい縁がなかったか分かるでしょうか(笑。
そんな見知らぬ駅を降りてほんの数分歩いたところに、そのお店はありました。
派手すぎず、気取らないけどこぎれいな感じで、なかなかいい佇まいじゃないか。
調べてみたところ、原作で取り上げられた当時は、留学生のバイトにきつく当たっていた店長のモデルになった人物は実在したらしいですが、現在はスタッフも入れ替わって普通のお店になっているようです。特に頑固親父がやっているという雰囲気でもなく、まさに「地元の洋食屋さん」という感じ。
壁には、まな板で作られたメニュー。そのどれもが、学生さんや独身サラリーマンにはうれしい、どれも腹を満足させてくれそうな内容。値段のところ、何度か貼り替えられた跡が残っているのが、このお店の歴史の長さを物語っています。
原作で台詞の中にだけ登場した「ジャンボ焼ランチ」がどういうものかもちょっと気になるけど、聖地巡礼ならばやはり、ここはハンバーグステーキランチで決めよう。
ほー、いいじゃないか。
こういうのでいいんだよこういうので。
大ぶりのハンバーグに目玉焼き、つけあわせのスパゲティとポテトフライ。古き良き洋食店といった風情。だからこそ、落ち着きます。
ハンバーグは緩めに固められていて食べやすい。ソースはケチャップベースなので酸っぱい感じか、と思ったら、胡椒とかスパイスがいろいろ混ぜてあるようで、なかなか複雑なお味。改めて、看板にあった「創作料理」の四文字は伊達じゃなかったんだ、と実感します。
スパゲティはカレー味。ナポリタンじゃなくてカレー味、というのがまた古めかしくて、「男のメシ」って感じがして、いい。
ついてくるの汁が味噌汁じゃなくて豚汁っていうのも、なんか得した感じでいい。
この豚汁、ちょっと味が濃いめだけど、メインのハンバーグやスパゲティに負けない存在感があって、それでいて、ほっとする。
完食。満足。ごちそうさまでした。
ボリュームもいいけど、満足感ある味付けのわりに、毎日食べても飽きの来なさそうな気張らなさが、気に入った。我が家の近所、飲食店不毛地帯なんだけど、こういう店が一軒でもあれば、家族がいない日や食べて帰らなきゃならない日の夕食として重宝するんだろうけどなあ。
このお店、実は密かにチェーン展開しているらしく、他には池袋や高田馬場、新板橋などに支店があるもよう。どこも普段あまり利用しない場所だけど、池袋に用があるときにお腹が空いたら、気取らずに満足できる店として覚えておいて損はないかも。今度食べるとしたら、やっぱりジャンボ焼かなあ。でも、こういう店のかにクリームコロッケなんかもうまいんだよなあ。
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