BenQ の超短焦点プロジェクタ「W1080ST+」のレビュー、そろそろまとめに入りたいと思います。
AV マニアではない人でも手が届く価格帯でコンパクト、かつ設置も容易ということで、これからプロジェクタを始めてみようかという人はまず検討すべき製品じゃないでしょうか。これより安いプロジェクタもありますが、フル HD に満たない解像度の製品では、画質面で満足できるとも思えません。そうなると、選択肢に挙がるのは BenQ かエプソンか、という実質二択。エプソンのほうはじっくり触ってみたことがないので詳しくは分かりませんが、まずは DLP(BenQ)か液晶(エプソン)か、というパネルタイプによる選択になるでしょう。
DLP は液晶に比べてコントラスト比が高いのが特長で(液晶は上位機種になるとシーンに応じて光源の絞りを制御することで、トータルでのコントラスト比を高めているものもある)、クッキリハッキリ見やすい画質。真っ暗にしなくてもそれなりのコントラストが得られるので、リビングシアターに向いていると言えます。
画質は調整の幅こそ広くないものの、デフォルトでも初心者でもお手軽に楽しめる分かりやすい画質。
動作音は本体に耳を近づけると確かに聞こえるものの、夜間でも映画の音をサラウンドで鳴らしている限りはまず気になりません。
DLP の暗部の沈み込みは、液晶プロジェクタではなかなか得られないもの。宇宙を舞台にした SF モノの作品では、漆黒の宇宙空間とそこに浮かぶ星々をしっかりと描き出してくれます。
また、(最近の製品では改善してきているものの)液晶プロジェクタでは LCOS を採用したハイエンド機を除き、その構造的にドット間の隙間が見えてしまいますが、DLP ではドット間の隙間が狭いため、凝縮感のある映像が得られます。DLP にもカラーブレーキング現象とかグラデーションが苦手といった弱点はありますが、今回試用した限りではそれほど気になりませんでした。
画質面での難点としては、やはり超短焦点ゆえのレンズの歪みと画面が素早くパンしたときの追従性の悪さ、くらいでしょうか。細かくいじろうとさえしなければ、この二点に目を瞑れば非常にコストパフォーマンスの高いプロジェクタだと思います。レンズについてはこの焦点距離ならば仕方ないところではあるわけで、画質にこだわるなら何とか設置環境を整えて長焦点のプロジェクタを設置する以外にありません。我が家は幸いにして 3m くらいの投写距離は確保できるので、仮に BenQ を買うなら通常焦点の W1070+ のほうにすると思います。逆に設置環境がないのであれば、W1080ST+ は無二の選択肢と言えるでしょう。
試しに自前の VPL-HS10 と比較してみましたが、さすがに 12 年も前のものと比べると、画質の差は歴然。解像度、ドット間の隙間のなさ、明るさ・コントラスト・色乗り、動作音の静かさいずれをとっても W1080ST+ に軍配が上がります。HS10 の良いところといえばレンズの歪みのなさくらい。これは HS10 からの乗り換えなら、W1070+ でも十分に満足できそうです。
いずれは LCOS の高画質プロジェクタを…と夢見ていましたが、そうこうするうちにプロジェクタ界にも 4K の波がやってくるんだろうし、それまでの繋ぎとして安価なフル HD プロジェクタ、というのは現実的にアリかもしれません。
■関連リンク
BenQ W1080ST+ レビュー (1):コンパクトな超短焦点プロジェクタ
BenQ W1080ST+ レビュー (2):設置のしやすさが魅力
BenQ W1080ST+ レビュー (3):画質をチェック
BenQ W1080ST+ レビュー (4):超短焦点レンズの癖
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