「おかず横丁、グッとくるネーミング。このへん、きっといい店がある」
今年もドラマ『孤独のグルメ Season4』の聖地巡礼を続けていきます。今回は、予告通り残りの第 7 話の舞台、台東区鳥越に来てみました。鳥越という地名自体、ドラマに出てくるまで知りませんでしたが、御徒町と浅草橋の中間くらいにこんな場所があったんですね。まさに下町、古き良き昭和の東京、といった雰囲気。
夜は 19 時にはもうほとんどのお店が閉めているようで、残念ながらお土産のおかずは買いそびれてしまいましたが、そんな商店街のさなかにあった、小さな居酒屋。
知らなければ通り過ぎてしまいそうな、本当にこぢんまりとした店構え。
この寒いのに、テラス席が用意されているのが何とも言えません(笑
予約してあるので、さっそく入ろう。すいませーん。
主、猫好き。
外観と同様に賑やかな店内に、所狭しと猫写真が。
メニュー、豊富なんてもんじゃない。でたらめに近いほど、カオスな店。
でも、劇中で見かけたとおり、どのつまみも呑兵衛の心を捉えて放さない感じ。迷うなぁ~っ。
これは気をつけないと、注文がとっちらかっちまうぞ。
とりあえずビールから。ヱビスの生が 500 円、これは安い。
そして、お通しに出てきた大根の煮物がたまらなく美味い。ぶり大根を思わせる、芯まで味の浸みた柔らかい大根。これは嬉しい。
ビールのつまみは、まめぞ特製みそクリームチーズと、定番いぶりがっこ。
みそクリームチーズは、想像通り濃厚な味。クラッカーもいいけど、いぶりがっこと合わせてもいい。
いぶりがっこはマスカルポーネだけじゃなくて、クリームチーズとも合うんだよ。
それから「ふらっと QUSUMI」で見て絶対に食おう、と思っていたアジフライ。
子どもの頃はアジフライが食卓に出てくると「え~、メンチカツかコロッケが良かったあ」とぶーたれていたものだけど、今はアジフライこそ至高。大人の味覚になったんだなあ。
まめぞ特注ソースをかけていただきます。
このソース、甘みが全然違う。フルーツの甘みが感じられるソースで、アジフライの新たな一面を引き出してくれる感じ。
そしてメインのアジ。こんなに大きくて肉厚、なのにふわっふわのアジフライは初めて。衣はサクサクなのに脂っこさがなく、軽い食感。
こんなアジフライ、今まで出会ったことがないぞ。これなら何枚でも食べられそうだ。
アジフライ専用飲み物(※注:ビール)も、どんどん進みます。
あとこれも久住メニュー、明太子の粕漬け。
明太子なのにマイルド、それに粕漬けの深みが重なって、初めて味わううまみ。
これはご飯もいいけど、やっぱり酒だな。
日本酒を、ぬる燗で。
銘柄は女将さんにお任せしてみたら、あと少しだけ残っていたという獺祭をぬる燗にしてもらえました。
獺祭のぬる燗なんて、初めて。
これが明太子の粕漬けに、この上なく合う。
そして「せんちゃんサラダ」。
キャベツの千切りで「せんちゃん」かと思いきや、これも猫の名前から取っているようです。
シャキシャキしたキャベツにオニオンスライスとピーマンが隠し味。パルメザンの上からシーザードレッシングをかけると、サラダなのにつまみになっちゃいます。
良い、良い。せんちゃん、良い。
この店の名物のひとつ、生ハム(ハモンセラーノ)。
カウンターに鎮座する原木からその場で切り出してくれます。
生ハム原木は個人では買ってはいけないという言い伝えがありますが(笑)、こういうところでスライスして出してくれると本当に嬉しい。
単体で食べてもこの上なくいいつまみだけど、ゴロー同様にせんちゃんサラダに載っけて食べても、バッチシうまい。
さっきの粕漬けがとても気に入ったので、続いては銀だらの粕漬け。
粕漬けの定番だけど、予想通りのうまさ。これを食べたらまた日本酒を飲まないわけにはいかないでしょう!
そこで、若葉のしぼりたて生酒を冷酒でいただいちゃうわけです。
久住さんも飲んでいた岐阜の井戸水(ぉ)だけど、久住さんが飲んでいた「若葉 大いばり純米」がなかったので、こちらで。
でもこれはこれでうまい。
この若葉の仕込み水のチェイサーまで出てくるこだわり。この店は若葉がおススメのようだ。
こちらはフィッシュ&チップス。
いぶりがっこからハモンセラーノ、粕漬けを経てフィッシュ&チップスという、和洋を行ったり来たりできるのがこのお店の良いところだ。そして和洋が混ざってもどこか一貫した美学が感じられる。
魚はお店からのサービスで、カジキマグロと鯛を半分ずつ。
このフライもさっきのアジフライ同様、サクフワで絶品。ポテトフライのほうは一転して、ガーリックの香りを効かせた濃いめの味付け。この店の揚げ物、侮れんぞ…。
というわけで、揚げ物と揚げ物をあえてダブらせていきます。カキフライと鶏の唐揚げ。
やっぱりこの店の揚げ物、どれも重ったるくなくて、いくら食べても食べ飽きない。これはいい。
お酒はお酒で、途中揚げ物に合わせてビールやハイボールに揺り戻したりしつつ、最終的に若葉の蔵出し原酒に移行するわけです。
ここで日本酒ときたら、アテは干しホタルイカと、
やっぱ、にぎす干は外せない。
見た目はししゃもっぽいけど、ほほう、こうきたかにぎす干。
うんうん、深海魚だけに深い味わい。
ホタルイカもにぎすも、富山湾の至宝。
このお店の魚介類は、富山の魚津港から直送しているとのこと。
氷見や新湊ではなくあえて魚津とはまたマニアックな…と思ったら、このお店の常連さんに漁協の関係者がいて、その縁で魚津から送ってもらっているそうです。
こんな江戸の下町で故郷の味に出会えるとは。
そろそろ〆に入ろうかというところで、最初から気になっていたコーヒー酒に手を出してみます。
自家製のお酒で、コーヒーの銘柄はモカ、キリマンジャロ、ブルーマウンテンの三種。
キリマンジャロを飲んでみましたが、確かにコーヒーだけど、コーヒーそのものを凝縮してお酒にしたような、濃厚なお味。
これはちょっとハマるかも。
そして〆その一は、明太クリームパスタ。
ドラマを観ていたときは「どんなに美味しくたって所詮は居酒屋のパスタだろう」と高を括っていましたが、正直申し訳ありませんでした(ぉ
これはうまい。
クリームたっぷりで濃厚な明太クリームソース。明太子が主張しすぎず、ソースそのものの味で勝負している感じ。
相対するパスタも、ゆで加減が絶妙で、ソースに負けてない。これはそのへんのパスタ屋が裸足で逃げ出す本格派だ。
うん、明太クリーム、正解。
麺だけ食べ終えたところで、女将さんから
「ソースがまだいっぱい残っていてもったいないから、パンの耳でもお出ししましょうか?」
というありがたい申し出が。く、く、ください(ぉ
柔らかいパンの耳に明太クリームソースをたっぷり染みこませて食べると、これもまたうまい。
結局ソースまで残らず完食してしまいました。
〆その二、まめぞチャーハン。
ベーコンと卵のこの上なくシンプルなチャーハンだけど、オーソドックスな味付けで、そしてこれまた軽い食感。
飲んだ後の〆なら、こういう軽いチャーハンがちょうどいい。
それから〆その三は、いよいよ本命、かつサンド。
この、パン二枚分の厚みを超える分厚いカツは、見るだけで圧倒されます。
さらに、カツの断面から容赦なく溢れ出る肉汁の輝きがたまらない。
うわっ、うま!何これ。
口の中にじゅわっと充満する肉汁と、特注ソースの甘みが何とも言えないハーモニーを奏でている。
これだけボリュームがあるのに、他の揚げ物と同じく、全然重くない。
今まで積み上げてきた俺のかつサンド経験に今、全く新しい 1 ページが開かれた。
パスタがあって、サラダがあって、生ハムも深海魚も同居する。
餃子もあれば、海老フライだって食える。
この店、まさに一人おかず横丁。下町の商店街の食卓そのものじゃないか。
ここは本当に美味しかった。Season4 の店では、ここと神宮前の中華、木場のカレーがトップ 3 じゃないでしょうか(箱根のステーキ丼も絶品だけど、そう行ける立地じゃないので)。ここは、ちょっと遠いけど何度かリピートしてしまうこと確定です。
世の中にはまだまだ、驚くべき店が潜んでいる。
ごちそうさまでした。
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