日本中を震撼させたあの事件から一ヶ月が経ちました。
私は京アニ作品をこれまでに 3 シリーズ程度しか観ていないので、あの事件について何か語れるわけではありません。しかしああいう事件があったからといって今から旧作を観るのもなんだか逆に不誠実に思えて、その行為にブレーキをかけている自分がいました。
でも先日 BAR THE GINTONICX に行った際にクマデジさんと常連のお客さんが「ヴァイオレット・エヴァーガーデンは神」と意気投合していたのを見て、改めてこれは観ておきたいと思いました。そして文字通り「イッキ見」してしまう結果に。
ネット配信は現時点では Netflix 独占ということで、久しぶりに Netflix と再契約しました。Amazon Prime Video よりもコンテンツの充実度が高いし、しばらく使ってみて良さそうならこのまま Netflix に乗り換えるかもしれません。
幼いうちから「戦う道具」として戦場に送り込まれてきた孤児、ヴァイオレット・エヴァーガーデン。終戦後、恩人でもある「少佐」の遺言に従い郵便社で自動手記人形(代筆屋)として働き始めた彼女。以前は戦うことしか知らず、当初は言葉とは裏腹な人の気持ちを理解することができずに戸惑いながらも、仕事を通じ様々な出会いを経て「少佐」の自分への想いと自分の「少佐」への気持ちを知っていく、というお話。ヴァイオレットは主人公でありながら、物語の大半は彼女を狂言回しとした群像劇の構造をとっています。
本作は言葉を題材にした作品ですが、その感想を言葉で表すのはとても難しい。頭で理解するよりも心臓を掴みに来るような物語です。各エピソードに登場する依頼人が、ヴァイオレットに代筆を託す過程で自分自身の本当の願いに気づいていく経緯、そしてそれらを通じてヴァイオレットが人間の複雑な感情と「愛」が意味するものを理解していく経緯、それぞれが実に深い。派手なアクションシーンみたいなのはほとんどなく、演技のトーンも全体的に抑え気味なのに、映像からやけに熱量を感じます。声の芝居や映像のインパクトだけに頼らずに、細かな所作やカット割りの積み上げで感情が表現されているからかもしれません。
また緻密なキャラクターの描き込みや動き、画面の隅にいたるまで手抜きのない背景、そして光の使い方…ひとつひとつのシーンを見ているだけで溜息が出てくるほど美しい。映像の美しさで言えばジブリや新海誠作品なども定評が高いですが、それだけで打ちのめされたアニメはこれが初めてです。劇場アニメクオリティの作画をテレビシリーズでやるというのは、衝撃的ですらあります。
近年はすぐに「神○○」と呼んでしまう風潮がありますが、この作品は本当に「ヴァイオレット・エヴァーガーデンは神」と呼びたくなる名作中の名作でした。9 月には外伝、さらに年明けには完全新作が劇場公開されるとのことで、いずれも映画館に足を運ぼうと思います。
この作品、昨年の 1~3 月期ということは『宇宙よりも遠い場所』と同じクールに放送されていたんですね。これだけの名作が同時期に放送されていたというのはかなりすごいシーズンだったのではないでしょうか…。
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