美味しいとんかつ屋さんがあるという情報を仕入れたので、外出のついでにちょっと足を伸ばしてきました。
東急目黒線・奥沢駅から徒歩 5 分ほどのところにある「ミカド」。両隣の田園調布や大岡山ならまだしも、住民でもなければなかなか降りる機会がないのが奥沢駅ではないでしょうか。そういう渋い立地にありながら、この界隈ではちょっと有名らしい。
創業昭和十四年、つまり戦前から営業しているとても歴史あるお店です。
店内はカウンターにテーブル、奥にはちょっとした座敷もあったりしてけっこう広々としています。都内のとんかつ屋、有名店であってもほぼカウンターのみみたいな極狭なお店も少なくない中、これだけ余裕のある店構えは却って珍しいような。食べたら早く出なくちゃいけないというプレッシャーを感じることもなく、ゆったり過ごせるのは嬉しい。
メニューにはこのお店の歴史が記されていました。もともとは田園調布でパンや惣菜の店としてスタートしたんですね。それでも奥沢に移ってから既に四十年以上とは、途方もない歴史を感じます。
お品書きはこんな感じで、カツ/フライ系の定食からカレー、カツ重までひととおり揃えています。とんかつの美味しい店でもカツ丼やカツカレーまで出してくれる店は(良い店になるほど)少なくて、このとんかつでカツ丼やカレーを食べたらどんなに美味しいだろうに…と思うことも多いですが、ここは食べたいもの全部揃っています。またエビフライ、カキフライ、ホタテフライまであって目移りしてしまう。いいとんかつ屋のエビフライやカキフライもまた美味しいんですよね。
気になるのは右側のページが「ミカドスペシャル」で左側が「ミカド特選」なこと。どっちがより上位なんだろう?まあ、こういうアバウトな感じがまた老舗の地元密着店という風情で良い。
頼んだのはロースカツ重。初めて来たからにはシンプルに普通のロースカツ定食が王道だろうけど、今日はなんか丼物の気分でした。
丼じゃなくてお重に入ってちょっと上品なのがなんかいい。お新香と、お椀にはしじみ汁。豚汁じゃなくてしじみ汁なあたりが昔ながらのとんかつ屋ですね。久しぶりに飲んだけど、このしみじみ来る滋味が美味しい。それにとんかつの合間にしじみの風味で目先が変わることで、また新たな気分でとんかつに向き合えるのがまた良い。
そして、ロースカツ重。もうこの見た目だけで美味しいこと確定じゃないですか…なんて幸せな色合いなんだ。そして、とんかつの上にグリンピースが三粒並んでるのがまた何とも言えない。
ロースカツはそれほど肉厚というわけではないけどしっかりした食べ応え。また出汁がよく浸みた衣が美味しい!玉子の味付けもちょうど良い。そうそう、食べたかったのはこういう王道ど真ん中のカツ丼なんですよ。
SPF とか銘柄豚とかいった流行りとは無縁な、別の世界観がこのロースカツ重には広がっています。しんみりと心に染みてくる懐かしい味。毎日食べても飽きなさそうな優しさ。そういうものを感じます。
歴史あるお店だけあって、店内にはさまざまな有名人のサイン色紙が貼ってありました。中でも特に印象に残ったのは作家・よしもとばなな先生の色紙。名前以上に「カツカレー最強です」のメッセージが力強い(笑。どうやらよしもとばなな先生は自身のエッセイにこの店のことを書くくらいお気に入りのようです。今回はロースカツ重にしたけど、これは改めてカツカレーを食べに来ざるを得ませんね。
期待に違わず美味しかったです。
ゆったりできるお店なので、そのうち家族を連れてきてみても良いかもしれません。
ごちそうさまでした。
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